インド、ビハール州ブッダガヤ
今朝も、受者たちが全員入場し終わらないうちに、ダライ・ラマ法王は法話会場のカーラチャクラ・グラウンドに到着された。法王は、すでに席に着いていた人々に挨拶をされると、マンダラの厨子に対面して着席された。法王がヤマーンタカ独尊の灌頂授与のために前行修法を行われたときには、朝日が会場の高窓から差し込み、法座の背後に掲げられたカーラチャクラ・マントラのモノグラム(組文字)であるナムチュ・ワンデン(力ある十字)を輝かせていた。
いつもと同様、三帰依文の読誦に続いて『功徳の基盤(ユンテン・シキュルマ)』を唱え終わったところで、法王は今日がブッダガヤで授与する一連の灌頂授与の最終日であると言われた。そして、中央チベット政権のカロン(大臣)を始め様々な能力を発揮して働いてきたケルサン・タクラ氏が本日の灌頂の主な施主であると紹介された。
そして、法王は次のように述べられた。
「明日から二日間にわたって、三百偈からなる『金剛般若経』を主に中華圏の方々を主な弟子として解説しますが、この経典の解説の伝授の系譜は伝わっていないので、私自身の解釈による解説になります。過去には、ダライ・ラマ8世の教師であったヨンジン・イェシェ・ギャルツェン師が同様に『八千頌般若経』を解説しながら読まれた例もあります」
「今日は、ヤマーンタカ独尊の灌頂を授与します。この灌頂を授かった人は、毎日ヤマーンタカ独尊の成就法の長いバージョンか短いバージョンを誦唱し、十憤怒尊の長いマントラをよく覚えて唱えることを約束しなければなりません。先日申し上げたように、ヤマーンタカの行法の特徴は文殊菩薩の寂静と憤怒の修行を一体として実践することです。主たる目標は智慧を得ることで、文殊菩薩はその智慧を体現されています。苦しみを克服するには無明を克服しなくてはならず、そのためには智慧を育くむしか道はありません。釈尊はそのようにお説きになられました」
「私はこの灌頂を最初にタクダ・リンポチェから授かり、その後何度もリン・リンポチェから授かりました。最後に授かった時には、セルコン・ツェンシャプ・リンポチェと共に、ここブッダガヤでマハーボーディ寺院の大塔の一階において授かりました。この修行は生涯にわたって行ってきましたが、寂静と憤怒を一体とした修行は私にとってとても良い影響がありました。リン・リンポチェに誓ったように、ヤマーンタカ(ヴァジュラバイラヴァ、金剛怖畏)のリトリートを毎年行っています」
法王は、ツォンカパ大師が「止」と「観」(高められた一点集中の力と鋭い洞察力)の体験を深められた時に、文殊菩薩とヤマーンタカが一体となったビジョンが現れたこと、さらに眠りのヨーガを修行するなら、誰にでも光明の心が顕現しうると述べられ、それから灌頂の授与を始められた。
灌頂の儀式がすべて完了すると、法王は、ヤマーンタカ13尊と独尊の二つの灌頂を今回ここブッダガヤで授与できたことについて、いかに幸運であるかを深く感じていると言われた。会場を去られるときには、受者たちに微笑みながら手を振り、ガンデン・ペルゲリン僧院(ナムギャル僧院)へと戻られた。