インド、ジャンムー・カシミール州ラダック地方レー
ダライ・ラマ法王は、ラム・ナート・コビンド氏が世界最大の人口を擁する民主国家インドの大統領に選出されたことを祝い、コビンド氏に書簡を送られた。
法王は書簡の中で、次のように述べられた。
「私たちチベット人の亡命生活は58年目になりました。インド政府とインド国民のやさしく寛大な厚情により、13万人以上のチベット人が長きにわたってこの国で生活をしています。私たちはこのことに常に感謝しています」
「私はよく、自分はインドの息子であるとお話ししています。私は長年仏教の修練を続けてきましたので、私の考え方はすべて仏教によって形成されてきました。なぜならば、その根幹は、インドのナーランダー僧院の偉大な学僧であったナーガールジュナ(龍樹)やアサンガ(無著)などの著作にあるからです。私のからだもまた、インドの米、ダル(豆)のカレーとローティ(インドの平たいパン)によって培われてきました。そのため、私はこの偉大な国との真の絆を感じており、インドの繁栄を常に願っています」
続いて法王は、ご自身の人生における三つの主な使命について説明された。三つの主な使命とは、より思いやりのある世界を築くこと、異なる宗教間の調和を図ること、そして、ナーランダー僧院の伝統に基づくチベットの仏教文化の存続である。最近ではそれに加えて、古代インドの智慧、とりわけ心や感情の働きに関する知識の復興を第四の使命とされており、古代インドの智慧は破壊的な感情(煩悩)を克服し、やさしさや思いやりなど、人間の基本的価値を高めるために非常に役立つと説明されている。法王は、「内面的な心の平和を育むために古代の智慧と現代教育を結び合わせることができる国は、唯一インドだけである」と自らの確信を述べられて、次のように続けられた。
「インドが発展し、成長していることをたいへん誇りに思います。インドは世界最大の民主国家であるだけでなく、異なる宗教間の調和、カルーナ(慈悲)、アヒンサー(非暴力)という模範的伝統を有する国です。そのため、国際社会はこれまで以上にインドの重要性を認識するようになっており、私はそれを大変喜ばしく思っています。これからも私たちの世界は、さらに相互依存の関係を深めていくでしょう。ですから、より良い世界を築くために、インドがこれらの宝を分かち合って、あらゆる大陸において積極的にその役割を果たしていくことを私は期待しています」
「公にされているコビンド氏の経歴によると、あなたは貧困層と虐げられた人々のために大いに尽力してこられました。インドは驚異的な発展を続けていますが、一方では、栄養、教育、児童保護、ますます広がる貧富の差の解消、汚職の撲滅などの課題が残されています。そこで私は、国民の長期的な利益を念頭に置き、これらの重大な問題に対して、公然かつ勇敢に取り組むべきだと感じていたため、これまでにも指導者の方々にこの問題を提起してきました。インドはこれらの問題を克服していかなければなりません」
「コビンド氏がインドの強さを確固たるものとするためにあらゆる方策を駆使して、インドが世界で身丈に合ったリーダーシップを発揮することを私は確信しています」