インド、カルナータカ州ベンガルール(バンガロール)
昨日、デリーからベンガルールに空路で到着されたダライ・ラマ法王は、今朝、「社会的公平さとB.R.アンベードカル博士」と題したセミナーへのご出席のため、1,200席が満席となった会場のアンベードカル・バワンに入って行かれた。
最初に国会議員のシュリ・マリカルジュナ・カルゲ氏が長いスピーチをした。初めにカンナダ語で、次に英語で、「バーバー・サーヒブ」という敬称で崇められているビームラーオ・ラームジー・アンベードカル博士に対して愛情を込めた敬意を表し、博士がインド憲法の父であり、最下層カーストの不可触民の解放に尽力したこと、また法律家であり著名な経済学者でもあり、インド財政委員会の設立にも関わっていたことを述べた。
続いてカルゲ氏は、バーバー・サーヒブについて次のように紹介した。彼は誠実な愛国者であり、マハトマ・ガンジーとは時に意見を異にすることもあって、ガンジーに対して、公平な社会の構築には不可触民の権利向上が必要であると主張し、不可触賎民が政治に参加する権利を得るために社会的民主主義を提唱していた。その目的のために教育が重要であることも認識していた。自由、連帯、平等の考え方に鼓吹され、伝統的に平等と非暴力を堅持する仏教に帰依することを最終的に選んだのである。
カルナータカ州首相シッダラマイア氏がカンナダ語で、ダライ・ラマ法王は平和の人であると敬意を表し、カルナータカ州政府としてアンベードカル・ベンガルール経済学校の設立を約束すると何度も繰り返した。
法王は、首相や旧友、若い兄弟姉妹の皆さん、と呼びかけて聴衆に挨拶されてから、このように自他を平等に見て人々に挨拶する理由を説明され、次のように述べられた。
「ここで、アンベードカル博士という20世紀の偉大な人物を祝福する意義深い集まりに参加できて、非常に名誉に思っています」
「アンベードカル博士は法律家、経済学者、社会改革者として何百万もの人々の目を開き、仏教をその発祥の地であるインドに再度復活させました。仏教はアジア全体に広がって影響を与えましたが、それはまさにこのインドで始まったのです。仏教が主として伝えたいメッセージは、他のあらゆる宗教と同様に慈悲の心(カルーナ)であり、行動規範としては非暴力(アヒンサー)です。この二つが共に結び合わさって内なる平和を生み出すのであり、何世紀にもわたってこの教えが何億人もの人々の大きな力となってきました」
続いて法王は、三転法輪について説明された。釈尊は悟りを開かれたあと、最初にサールナートの初転法輪で、「四つの聖なる真理」(四聖諦)と、それぞれの四つの真理を観ずるための十六の特徴(十六行相)について、そして「三十七菩提道品」の教えを説かれた。次に、ラージギルにおける第二転法輪では般若波羅蜜の教えを説かれ、「四つの聖なる真理」の第三の真理である「苦しみの止滅の境地が存在するという真理」(滅諦)と、第四の真理である「苦しみの止滅の境地に至る修行道が存在するという真理」(道諦)についてさらに詳しく説かれている。またここでは、無我の智慧、つまり空の教えも説かれているが、空とは虚無論ではなく、あらゆるものは他のものに依存して存在しているため、自性による成立がないことを意味しているということが説かれたのである。
また法王は、宗教の伝統を三つの観点から分類された。まず、すべての宗教に共通する教えは、愛と慈悲である。そして、様々な哲学的見解は、愛と慈悲の重要性を裏付けるために存在するものであり、例えば有神論では、神というこの世の創造主を信心し、無神論では責任感と自立心を説いている。最後に、すべての宗教には社会的慣習から生じる文化的伝統があるけれども、これらの中には時代遅れとなっているものもあり、変えていかなければならないものもある。これ について、法王は次のように述べられた。
「今日、世界の大多数を占めている民主的国家では、性別の差やカーストに基づく差別は不適当であり、時代遅れです。しかし人々の考え方を変えるということは教育の問題でもあります。不可触民や、それ以外のカーストで差別されている人々は、さらに努力して自信を培う必要がありますが、平等は教育によってもたらされるのです」
明日の朝早く、法王はデリーに戻られる予定である。