インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ
本日、ツクラカン前の広場にはたくさんの人が集まっていた。その多くはチベット人であり、ナンシー・ペロシ氏とジム・センセンブレナー氏が率いる米国超党派議員代表団を歓迎しようと、さまざまな職業や地位の人々がつめかけていた。
頭上には、「ありがとう、USA」のメッセージとともに、ダライ・ラマ法王がアメリカの歴代大統領4名と会談したときの写真が掲げられていた。また演台の両脇には、スノーライオンが描かれたチベットの国旗と米国の星条旗が飾られていた。代表団が到着して席が埋まりはじめた頃、会場に拍手がわき起こった。全員が起立して見守る中、法王はナンシー・ペロシ氏とともに中庭を抜けて会場に入られた。
その後、壇上に立ったチベット亡命政権のロブサン・センゲ主席大臣は、ナンシー・ペロシ氏について、有言実行の「口先だけでなく実際に行動する」政治家として尊敬していると述べた。
「チベットに行ったとき、ペロシ氏は中国当局に向かって啖呵を切ったのです。『ダライ・ラマ法王は世界中の人を尊敬しなさいと説かれていますが、その中には私たちも入っているのですよ』と」
米国下院議員ジム・センセンブレナー氏は共和党員であり、ウィスコンシン州第5地区の代表を38年間務めている。壇上に立った同氏は法王の御前でスピーチができる栄誉について述べてから、会場の人々に向かって次のように語りかけた。
「民主党も共和党もチベットを支援することを約束します。私たちはダライ・ラマ法王を心から尊敬していますし、自由を求めるチベットの人々の願いは私たちの願いでもあります。私たちは宗教の自由を応援し、正義のないところに自由はないという考えを支持しています」
続いて、マサチューセッツ州選出の米国下院議員ジム・マクガバン氏、チベット亡命政権議会議長のケンポ・ソナム・テンペル氏、ニューヨーク州選出の米国下院議員エリオット・エンゲル氏、シアトル選出の米国下院議員プラミラ・ジャヤパル氏が順にスピーチを行った。
米国会員議員ナンシー・ペロシ氏は“こんにちは”を意味するチベット語の挨拶でスピーチを始めた。「皆さんひとりひとりに向けて“タシデレ!”とご挨拶させてください。私たちは米国からアメリカ人の真心を運んできました。チベットの皆さんの希望を叶えるため、私たちは党の違いを超えてともに皆さんを支援することを宣言します」
「法王は明確なビジョンを持った慈悲深い方です。私たちに希望を与えてくださり、慈悲の力を信じ、人間は善良であることを信じさせてくださいます。チベット人としてのアイデンティティを守ることを固く決意され法王が、再びチベットの地を踏める日を待っています。私はベティ・マカラム氏とジム・マクガバン氏とともにチベットのポタラ宮殿に行き、法王が再びかの地に戻れるようお祈りしてきました。また私たちは、すべての人に対する尊厳と希望に満ちた法王のメッセージに感銘を受けています。チベットを支援しないことは、道徳的に問題があるとさえ思えるのです」
「これは中国の一部の人に言いたいのですが、どうか真実の光を見てください。チベットには自由がありません。中国人の中には自由を享受することなど考えることさえできない方々がいるかもしれませんが、私たちにとって自由は当たり前にそこにあるべきものなのです。私たちは負けません」
最後に、法王が壇上に招かれて、会場の人々に向けてチベット語でスピーチをされた。
「今日は、すべてのチベット人に向けて、つまり、この会場に集まってくれた皆さん、年配の方、若い方、修行僧や在家の人々に加え、今日ここにはいないけれど自由の国で暮らしているチベット人たち、チベット本土で恐怖と不安と共に生きている人たちに向けて話したいと思います。考古学上の発見によると、チベット人はほぼ3万年前からチベットで暮らしていたそうです。チベット文明は世界最古の文明のひとつです。しかし1959年、多くのチベット人が亡命の身となりました。たしかなのは頭上の空と足下の地面だけ。これからどうなるのかまったくわからず、私たちは恐怖と不安の中で暮らしていたのです」
「それから58年が経ち、私たちはそれまで知らなかった多くの人々と友達になりました。彼らが私たちを支援してくれたのは経済的な理由や政治的な影響力のためでもなく、チベット人を哀れんだからでもなく、私たちに正義があると信じてくれたからです。私の古い友人であるナンシー・ペロシ氏が率いるこの米国議員代表団は、私たちの側に真実があり、なおかつ、私たちが暴力的手段に訴えないからこそ、支援してくれているのです。私たちは互いにとって利益となる解決策を模索しているため、チベット人への支援は中国の人々の中でさえ拡がっています。率直であるが故に、親しくなった人々に対して思いやりがある故に、私たちは支持を受けることができるのです」
「私たちは中国人とも友達になれます。チベット人と中国人の間に調和をもたらすには、互いにとって利益となる解決策を見出さなくてはなりません。皆さんの信心と帰依により、すべてを順調に終えることができました。ありがとうございました。よろこびを持ち、何事もあまり心配しないようにしてください。もちろん、物事はうまくいくことばかりではありませんが、うまくいかないときでも広い視野に立って見つめるならば、それほど悪くないと思えるものです。また、お目にかかりましょう」
法王は代表団とともにツクラカンから公邸まで歩いて戻られ、一行がデリー行きの飛行機に乗るために空港へ向かうまで、ともにお茶を楽しまれた。