インド、マディア・プラデーシュ州ボパール
(『プレス・トラスト・オブ・インディア(PTI)』より転載)
本日、チベットの精神的指導者であるダライ・ラマ法王は、インドの繁栄には地域発展に向けた取り組みが欠かせないと語られた。「インドが繁栄するために必要なのは、大都市の発展ではなく地域の活性化です。発展に向けた取り組みはインドの農村地域から始めるべきなのです」
現在、マディア・プラデーシュ州デワス地方ターナル村において、ナルマダ川の保全を目的とした「ナマミ・デヴィ・ナルマダ・セヴァ・ヤトラ」というキャンペーンが開催されており、法王は同会に出席するためにこの地を訪問されている。
法王は「環境と幸福について」と題する講演会で次のように語られた。
「インド経済は主に農業を基盤としているため、国を発展させるには農村地域の変革が不可欠です。たとえ技術が進んでも、世界の70億人の人間が基本的に必要としているのは、水や食料など同じものなのです。暴力や飢餓など、現存する多くの問題の原因は、富める者と貧しい者の著しい格差と怠慢であると言えるでしょう」
「インドでは異なる宗教が調和を保って存在していますが、これは世界では珍しいことです。インドでは、すべての宗教が平和の下に共存しています。ときには、主に政治家のせいで問題が起きることもありますが、それもまた当然のことです。中には意地悪な人もいますからね」と法王が冗談を言われると、会場は笑いに包まれた。
次に、法王は現在起きている紛争について語られた。
「今日の世界には、人智を超えた大災害をはじめとする多くの問題が存在しています。しかし、暴力や殺戮、飢餓などの問題の多くは、怠慢と富貧の格差から生じています。暴力や殺戮、飢餓は人間が作り出した問題です。こうしたすべての問題を引き起こしたのは、私たち人間です。さて、あなたはこれを無視しますか?それとも、手を差し伸べますか?分別のある人なら、無視することはできません。そうです。無視するという選択は完全な過ちです。私たちはこの問題に無関心でいてはいけないのです」
「物質的な向上のみを重んじる現在の教育システムは十分なものではありません。私に愛を教えてくれた最初の先生は母でした。母はとても優しい人で、私は母が怒っているところを見たことがありません。逆に父は短気な人でした」と法王は幼少期を回想された。
さらに法王は次のように語られた。
「愛と思いやりは母親の 懐 で育ちます。母親は生まれたばかりのわが子を胸に抱き、子どもはその腕の中で母親を愛し始めます。科学者たちの研究によると、母親の愛情に恵まれなかった人は怒りやすくなり、他の人を信頼できないまま大人になることが多いそうです。どんなスーパーマーケットに行っても、お金で愛や幸福を買うことはできません」
法王は、マディア・プラデーシュ州のシブラジ・シン・チョウハン首相が昨年幸福省を設立したことを称賛され、次のように話された。
「ヴァルナの教え(ヒンドゥー教が説く身分制度)は時代遅れです。カースト制度は封建主義に基づくもので、農民から搾取することを目的としていました」
さらに法王は、下層カーストに属するとされた人々が受けた虐待について、いくつか例を挙げて語られた。
「すべての人間は平等であると主張する、これまでとは異なる精神的リーダーの時代がやって来ました。反カースト運動の指導者だったビームラーオ・アンベードカル博士は、素晴らしい功績を残されました。彼の功績は実に偉大です」