インド、ビハール州ラジギール
今朝、ダライ・ラマ法王は、1951年創立のナヴァ・ナーランダー・マハヴィハーラ大学付近に車で到着され、シュリー・M.L.スリヴァスタヴァ副学長の出迎えを受けられた。法王は菩提樹の苗木を植樹され、新しい管理棟校舎の記念額の除幕を行われた後、同大の会議ホールで100人を超える学生・教職員に向けて講演をされた。
法王は、1956年、マハーボーディー・ソサエティ(大菩提会)主催のブッダジャヤンティ(生誕祭)2500年祝祭に参加された際に、この大学を訪問したことを思い起こされた。
「当時、中国の周恩来元首相によるナヴァ・ナーランダー・マハヴィハーラ大学訪問が予定されていましたが、いくつかの理由から実現せず、代わりに私が来校するよう依頼されました。その時、私は中華人民共和国全国人民代表者大会常任委員会副委員長でしたが、今私は難民としてこの大学を訪問しています」
法王は、学問においては、学んだことを日常の中で応用することがいかに重要であるかを強調され、学生たちに次のように助言された。
「僧侶や尼僧は、僧衣をまとっているだけでは十分ではありません。みなさんもまた真摯に学ばねばなりません。昨年、20人のチベット人の尼僧たちが、18~20年をかけて厳密な学問を修めた結果、ゲシェマ(尼僧の仏教博士)という最高位の学位取得を始めて成し遂げました。ゲシェマたちは、ゲシェの学位を持つ僧侶たちと、仏教の学識において同等の立場になりました。一方で、仏教は、瞑想の実践を通して私たちの心という内面的な世界に焦点をあてていますが、そのために論理と根拠も幅広く用います。その結果として、インドの仏教徒たちは、特にこのナーランダー僧院において、非仏教徒たちとの論争に応じることができました。そして、自らの思想を発展させ、深める機会を得たのです」
「あなたがたは、先生の話を聞いたり、広い分野にわたって典籍を読むことによって知識を深めるべきです。ひとつのもの見方を別のもの見方と比較することで、その主題をより広く理解できるようになります」
法王はラジギールに戻る前に、大学に釈迦牟尼像とチベットのタンカ(掛け軸式の仏画)を贈呈された。このタンカは法王ご自身が図像の配置などについて指示されたものであり、中心に釈尊が、その周囲にナーランダー僧院の17人の成就者たちが描かれている。
ラジギールに戻られた法王は、21世紀にふさわしい仏教についての国際会議2日目の午前のセッションに参加された。法王と、スリランカ、タイ、マレーシアの9人の高僧、そして、ひとりのタイの高位の尼僧が聴衆に向けて順に講演を行った。
法王は会議の参加者に向かって次のように語られた。「私はこの座談会を本当に楽しんでいます。私は、さまざまな仏教国の多くの方々にお会いできることをとりわけうれしく思っています。遠路はるばるここまで足を運ばれた皆さんにとっては、決して楽な旅ではなかったと思います。それでも多くの方々がここにいらしてくださったということは、皆さんが強い仏法への関心を持っておられることを示していると思います」
「この21世紀において、私たち人間は自ら作り出した多くの問題に直面しています。それらの問題の解決策を見出す責務は、私たち全人類にあるのです。その一例として、各地で続いている暴力、およびアフリカの一部に広がる無用の飢餓などがあげられます。同様に、私たちはもっと環境に気を配るべきです。この地球という惑星が居住不可能になった時、仏陀が特別なお力で私たちを別の惑星に移住させてくださるのであれば私たちは安心していられますが、そんなことはありえません。この惑星は私たちのただひとつの家なのですから、私たちにはこの家を安全に保つためにもっと注意を払うべきなのです。そして、私には仏教徒として、宗教間の調和を図るための責任もあると考えています。私たちは定期的な意見交換の機会をもっと作るべきです。そうすれば、私たちはお互いのことをよく知ることができるでしょう」
法王は、ヴィナヤ(律)すなわち僧院の規律を守ること、そして「四聖諦」(四つの聖なる真理)などの教えを学ぶことは仏教のすべての伝統における土台であることを指摘された。また、パーリ語の伝統に従う仏教徒たちも、『般若心経』などのサンスクリット語の伝統の経典に注目し、それを学ぶことが有益であることに気づくと良いと思う、と述べられた。
法王は結びに、インド政府とこの重要な会議を主催した文化省に感謝の言葉を述べられた。そしてセッションの最後に、座談会のメンバー全員に仏像とカタ(チベットの儀礼用のスカーフ)を贈られた。
短い昼食休憩の後、法王はガヤに向けて会場を後にし、空路でボパールに移動された。ボパールでは、マディヤ・プラデーシュ州名誉首相シバラジ・シン・チョウハン氏の出迎えを受けられた。シン氏は同州の州民を代表して、法王を歓迎した。
明日午前、法王はターナル村を訪問され、ナマミ・デビ・ナルマダ・セワ・ヤトラの会議に参加される予定である。これは、水資源節約とナルマダ川保護のためにマディヤ・プラデーシュ州政府が主導し、開催される。午後には、同州のビダン・サブハ公会堂で「幸福論」(Art of Happiness)と題する講演をされる予定である。