本日、ダライ・ラマ法王はインド初の女性国会(National Women’s
Parliament)に出席された。会場はアマラーヴァティーに向かう途中のイブラヒムパトナムにある巨大なテントである。車で到着された法王は、アーンドラ・プラデーシュ州首相のチャンドラバブ・ナイドゥ氏による出迎えを受けられた。
アーンドラ・プラデーシュ州下院議長のコデラ・シヴァ・プラサド・ラオ氏は次のように述べた。「女性国会発足の目的は、女性の社会的地位を向上し、女性の皆さんにリーダーとしての意思決定をもっと積極的にしていただくためです」
チャンドラバブ・ナイドゥ氏と都市開発省大臣ベンカイア・ナイドゥ氏のスピーチに続き、法王は次のように講演を始められた。「私はたいてい『兄弟姉妹の皆さん』と呼びかけて話を始めていますが、今日は『ご年配の、そして年若き姉妹の皆さんと兄弟の皆さん』と呼びかけたいと思います」
「私は“人類はひとつ”という考えに基づいて、兄弟や姉妹に対するような感覚をこの世界に推進することを心に誓っています。よくお話することですが、人間社会ができたばかりの頃、人々は食べるために狩猟や採集を行い、手に入れたすべてのものを分け合っていました。その後、農業や所有という概念が生まれると、集団を統制するリーダーが必要になりました。その頃は、リーダーを選ぶ基準は身体的な強さであったため、社会の中で男性が優勢となりました。やがて教育が進歩して男女平等の考え方が浸透してきましたが、それでも現在の教育システムはまだ十分ではありません。子どもたちは生まれながらに素直で偏見がなく、思いやりを持っています。しかし、こうしたよき性質は、金儲けや権力の行使に関係がないと見なされるため、子どもたちは成長と共に物質的な目標のみを追うようになっていきます」
「そこで、私たちはより一層努力して、やさしさと思いやりの心を育んでいかなくてはなりません。ほとんどの女性はこうした性質を自然に身に着けているので、やさしさと思いやりの心を推進するには女性によるリーダーシップが必要なのです」
「外面的な世界の武装放棄は、個人の内面における武装放棄に依存しています。ここに、女性が果たすべき特別な役割があるのです。私自身の経験から言えば、やさしさと思いやりについて教えてくれた最初の先生は私の母でした。私は母の怒った顔を見たことがありません。70億の人類はみな母親から生まれ、その多くがお母さんの愛情に包まれて育ってきたのです」
「科学者たちが行った実験と調査によって、人間の基本的な性質はやさしさであるということが明らかになりました。これは希望の源です。また、女性のほうが他の人々の痛みや苦しみに敏感であることも証明されています。兵士や平和を乱す人はほとんどが男性です。世界のより多くの国の指導者が女性であれば、この世界はもっと安全な場所になると私は信じています」
「女性はもっと自信を持つべきです。自分自身をか弱いなどと思ってはいけません。女性は本来的に思いやりの心を育む力を持っています。それに加えて皆さんに必要なのは、確固たる決意です」
次に、インド警察庁初の女性警察官であり、退官後に社会活動家兼政治家となったキラン・ベディ氏がスピーチを行った。「家庭でも村でも、さらにはより広い社会においても、女性たちはチャンスを手にしたも同然です。そういった機会があれば、女性は容易にトップに上り詰めることができるでしょう。リーダーシップを培うには、チャンスを活かしてさらにチャンスをつくっていくことです。勇気ある女性は、より良い親に、教師に、リーダーになれるのです」
女性が首相と野党党首の両方に就任しているバングラデシュで国会議長を務めるシリン・シャーミン・チョードリー氏は次のように問いかけた。「私たちが未だに女性の社会的地位の向上について話し合っているのは何故でしょう?それは、多くの女性にとって社会的地位の向上が現実ではないからです。参加型民主主義とは、女性も含めたすべての人々が参加する民主主義であるべきなのです」
国会が終わって会場を発たれようとした法王は、法王に敬意を表し、いっしょに写真を撮らせていただきたいという支援者や一般の人々に囲まれた。さらに、ビデオカメラをかついでマイクを差し出す記者たちが押し寄せ、法王に質問を投げかけた。法王はようやく車にたどり着き、会場を後にされた。明日、法王はハイデラバードに向かわれる。