インド、ビハール州 ブッダガヤ
今日もまた、ダライ・ラマ法王は早朝から一日を始められ、午前6時半にはカーラチャクラ堂の中の法座に着き、灌頂授与の準備の儀式を開始された。
法王は次のように述べられた。
「今日は、“子どものようにマンダラに入る七つの灌頂”を授与します」
「私はここ数日風邪気味で、今日はのどが痛いです。しかし、ひどい症状ではありませんから、最善をつくしたいと思います」
「この七つの灌頂と付加行は、風(ルン)と左右の脈管(ツァ)に関連しており、風や脈管はカーラチャクラ父母尊の生起に関連しています。この灌頂を受けることによって、風と脈管を活性化し、使いやすくことができます」
続いて、アムド地方出身者のグループがマンダラ供養を行なった。
法王は宇宙の生成と消滅について、次のように説明された。宇宙の生成に関しては、六大要素のひとつである虚空が最初に生じ、次にその他の五大要素が、風、火、水、地の順に現れる。そして、宇宙が消滅する時には、これらの六大要素が逆の順に溶け込んで機能を停止していき、最後には虚空も溶け込んで、すべてが消滅する。法王は、虚空の構成要素である微粒子について言及され、現代の科学者たちが、宇宙の始まりと言われているビッグバンも、何ものかによって始められなければならなかったことを指摘しており、これはカーラチャクラ・タントラの中で述べられている虚空の構成要素である微粒子がその土台となっているのではないか、と述べられた。外面的な世界の構成要素は、虚空に続いて、風、火、水、地の順に現れる。一方で、虚空に現れる内面的要素は意識である。
その後法王は、“子どものようにマンダラに入る七つの灌頂”の授与を始められた。第一の灌頂である“水の灌頂”は、母親が生まれたてのわが子に産湯を使わせることになぞらえられる。弟子のからだの五大(地・水・火・風・空)の汚れを取り除き、五仏母の本質に変容させる役割を持つ。
第二の灌頂である“宝冠の灌頂”は、子どもの髪を結い上げることになぞらえられ、五蘊の汚れを取り除き、五仏の本質に変容させる役割を持つ。
第三の灌頂である“絹のリボンの灌頂”(あるいは“耳飾りの灌頂”)は、子どもの両耳に穴を開け、耳飾りをつけることになぞらえられ、十種類の風(ルン)の汚れを取り除き、十女尊の本質に変容させる役割を持つ。
第四の灌頂である“金剛杵と金剛鈴の灌頂”は、子どもが笑い、話すことになぞらえられ、左右の脈管の汚れを取り除き、カーラチャクラ父母尊の本質に変容させる役割を持つ。
第五の灌頂である“行動の灌頂”は、子どもが五感と意識の対象となるものを楽しむことになぞらえられ、十二処の汚れを取り除き、六菩薩と六金剛女の本質に変容させる役割を持つ。
第六の灌頂である“名前の灌頂”は、子どもの命名になぞらえられ、六つの行動をつかさどる器官とその働きの汚れを取り除き、十二忿怒尊の本質に変容させる役割を持つ。
続いて、法王は“四種の授与”として、真言、眼薬、鏡、弓矢の授与を行われた。そして、最後に“金剛阿闍梨の灌頂”を授与された。この灌頂は、父親が子どもに読み方を教えることになぞらえられている。あたかも、子どもが誕生直後に産声を上げ、初めて呼吸するときに、智慧の風(ルン)が流れ始めるように、付加行も含めた灌頂という許可を授けることによって、智蘊の汚れが取り除かれる。金剛薩埵の種子を心の連続体に植え付けることで、意識界の汚れを取り除き、菩薩の第七地を得る力を与える。
法王が本日の灌頂を終えるための結びの儀式の経文を唱えられている間、壇上の僧侶たちだけでなく、会場の多くの僧侶たちも、カーラチャクラ祈願文を唱えていた。
法王は明日、“世間の高度な灌頂”と“出世間のより高度な灌頂”を授けられる予定である。