インド、ビハール州 ブッダガヤ
ダライ・ラマ法王は早朝にナムギャル僧院の法王公邸を出られ、4時間半かけてカーラチャクラ灌頂を授与するための準備の儀式を行なわれた。会場には95カ国から推定20万人以上の人々が集まっていた。
今日は、最初に壇上で日本人グループが『般若心経』を日本語で唱え、続いて英米人のグループが英語で『般若心経』を唱えた。
法話を始めるにあたって法王は、「生きとし生けるすべてのものが幸せを望み、苦しみを望んではいません」と述べられ、「私たちには一切有情を苦しみから救うために悟りの境地に至るという責任があります。たとえ最初は真似事のようであったとしても、菩提心を培おうという熱望を持つことが大切なのです」と語られた。
続いて法王は、最も微細な意識である「原初から存在する本源的な光明の心」について語られ、意識にはさまざまなレベルがあることを説明された。起きているときの意識は最も粗く、夢を見ているときの意識は微細で、深い眠りにあるときの意識はさらに微細となり、最も微細な意識が現れるのは死ぬときである。
「ドリーム・ヨーガ、あるいは明晰夢(今夢の中だと知りつつその夢を見ること)は、より微細な意識に触れるためのひとつの方法です。修行者は、このような瞑想の実践を行なうことによって夢のからだを得て、現在のような粗なレベルのからだを離れ、最も微細な意識である光明の心を顕現させる可能性を持っています。私たちがカーラチャクラ灌頂を授かり、結果として目指しているのは、この『光り輝く光明の心』を顕現させることなのです」
「私は今朝、自生起を行ない、トルマ(ツァンパやバターを練って作る供物)を捧げて、『子供のようにマンダラに入る7つの灌頂』を授与する許可を得て、必要な準備の儀式をすべて済ませました」
法王は、カーラチャクラタントラには多くの人々が集まって灌頂を授かるという伝統があることを説明されて、チベット本土や中国では多くの人々がブッダガヤでのカーラチャクラ灌頂の儀式に参加したいと望んでいたが、彼らの力ではどうすることもできない事情によって参加できなかったことに言及された。法王は、たとえ遠く離れていても、真摯に帰依しているならば、灌頂を授かったという確信を得ることができることを強調された。
灌頂は、ロブサン・センゲ首席大臣を先頭に、内閣全員による正式なマンダラ供養から始まった。魔や障害を祓うトルマが捧げられ、花冠が授与され、法王は受者たちに、灌頂を授けてくださいという祈願文を三回復唱するよう促され、菩薩戒を授けられた。そして、「一切ヨーガの菩提心生起」と呼ばれる瞑想を全員で行うことにより、「世俗のレベルの菩提心」と「究極のレベルの菩提心」(空の理解)を育む方法を伝授され、これは非常に重要な実践であることを伝えられた。続いて、タントラは秘密の教えであるため、他者に秘密を漏らしてはならないという忠告を与えられて、受者たちが赤い目隠しをすると、マンダラの中へと導いていかれた。