インド、ビハール州 ブッダガヤ
ダライ・ラマ法王は今朝、落慶法要を行なうためにガンダン・テクチェンリン寺に向かわれた。ガンダン・テクチェンリン寺は、ブッダガヤに新しく建立されたモンゴル寺院である。法王は、僧院長の出迎えを受けて階段を上られると、正面扉の前でリボンをカットされた。ガンダン・テクチェンリン寺には、600人のモンゴル人僧侶と1,200人の一般のモンゴル人が集まった。
ガンダン・テクチェンリン寺の僧院長は、モンゴル人の僧侶と在家信者を代表して、法王が落慶法要のための時間をつくられたことに謝意を表明した。そして、モンゴルで仏教が花開いてから20世紀に厳しく規制されるまでの経緯を語った。現在、モンゴルでは民主主義の復活によって仏教が息を吹き返しつつある。僧院長は、ガンダン・テクチェンリン寺がブッダガヤを訪れるモンゴル人巡礼者のよりどころとなり、モンゴルにおける仏教復興のために寄与できるよう願っている、と語った。
法王は、チベットとモンゴルが長年にわたって築いてきた特別な関係について次のように語られた。
「兄弟姉妹の皆さん、こうして寺院を建てられ、落慶法要に招いてくださったことを大変うれしく思っています。何度かモンゴルを訪問したことがありますが、モンゴルとチベットはそれぞれの国に仏教が根づく以前から親しい間柄にあったと私も考えています。僧院長が先ほど述べられたように、仏陀は仏教が北から南へと広がることを予言されたと考えられていますが、これは仏教がまずチベットに、それからモンゴルへと広がることを意味しているものとして解釈されてきました」
「金剛座のあるこのブッダガヤは仏教の聖地です。この地で仏陀は一切智の境地に至られ、ナーガールジュナ(龍樹)をはじめとするインド人の導師たちやその弟子たちも修行を積まれました。ブッダガヤにはタイ寺院やビルマ寺院、日本寺院がありますから、モンゴル寺院の建立が必要となったことも理に適っています」
「皆さんは仏法を復興させて守っていこうとしているのですから、仏陀の教えを学び、実践していかねばなりません。仏陀の教えは、経典の教え(三蔵の修学)と、実践に基づく体験の教え(三学の実践)から成り立っています。これらを学ぶことが、21世紀の仏教徒になるということなのです。僧院長やお寺の皆さんは、修学と実践の場としての環境を確実に提供していかなければなりません」
法王は昼食後、カーラチャクラ灌頂伝授会の会場にあるカーラチャクラ堂に入られた。法王と高僧たちの法座は片づけられており、法王は壇上の片側に仮設された法座に座られた。カーラチャクラ尊や諸尊の宮殿を表わす砂マンダラの制作は昨日完成しており、本日は明日から始まる灌頂のための奉納舞踊が行なわれるのである。角笛や太鼓、シンバルの響きに合わせて、ナムギャル僧院の16人の僧侶たちがカーラチャクラ・マンダラの諸尊を供養する女神となって舞踊を捧げた。
奉納舞踊が終わると、法王はいつも通りに設えられた法座に着かれた。そして、この日の儀式を最後まで終えられると、ナムギャル僧院の法王公邸に戻られた。法王は明日、カーラチャクラの本灌頂を始められる。