インド、ビハール州 ブッダガヤ
今朝、ダライ・ラマ法王がカーラチャクラ尊の自生起と前行法要の儀式を終えられると同時に、カーラチャクラの砂マンダラ制作も完成した。金剛阿闍梨の代理を務めるタムトク・リンポチェは、砂マンダラの周りに10本のプルパ(金剛橛)と灌頂に用いる水が入った10個の水瓶を配置した。
昼食後、カーラチャクラ灌頂伝授会の会場に戻られたダライ・ラマ法王は、『入菩薩行論』のテキストの解説を再開された。法王は今勉強している禅定についての第8章は、利己的な態度がもたらすさまざまな過失について述べたものであることを参加者に説明された。簡潔に言うと、利己主義は問題しか生み出さず、利己主義に対処するための唯一の方法が、一心に利他主義を育むことなのである。
快活に第8章の最後まで読まれた法王は、続いて第9章に入られた。智慧の章である第9章では、中観の見地から非仏教徒と仏教の様々な学派の見解が概観され、それらの見解に対して反駁が為されている。最初に、苦しみは無知に起因することが述べられ、私たちの目に現れている通りに現象が存在しているわけではないと観ずるヨーガ行者(修行者)の見解と、世俗の現象が実体をもって存在していると見る凡夫(子供じみた愚か者)の見解が対比されている。
第9章の終わりまで読まれた法王は、『修習次第』中篇の残りの部分に移られた。法王はこのテキストを、智慧と方便を用いて、順を追って修行の段階を進む為の大変貴重な手引書であると賞讃された。そして、今勉強している中篇は、三編の『修習次第』のうちの二番目の長さのものであるが、初篇の奥付には、チベットの仏教王ティソン・デツェンの請願によってこれらのテキストがチベットにおいて記されたことが述べられている、と説明された。
法王は二冊のテキスト全ての口頭伝授を完結させる為、最後に『入菩薩行論』の第10章「廻向」の章を読み始められた。口頭伝授は著者から始まり、その相承系譜を保持する導師から弟子へと代々テキストを読み聞かせることで法王まで伝わったもので、今法王ご自身も参加者にそれを伝授されているのである。
法王は、廻向の章で文殊菩薩への請願が為されているのは、仏教を理解するためには知性を用いなければならないからであると述べられた。そして、「カンロマ」と呼ばれる文殊菩薩の礼讃偈と、数珠1周分(108回)の文殊菩薩の真言を毎日唱えるように奨められた。「カンロマ」の礼讃偈は以下の文で始まる。
そして法王は次のように述べられた。「これでこの二つの解説書の口頭伝授が終わりました。皆さんはテキストを持ち帰って何度も何度も読み返してください。以上で前行法話を終了します」