インド、ビハール州 ブッダガヤ
ダライ・ラマ法王は今朝、昨日に引き続きカーラチャクラ灌頂のための前行法要を行われた。灌頂が終わるまでこの法要は毎日続けられる。砂マンダラも完成間近となった。
前行法話が始まると、法王は次のように述べられた。「釈尊は縁起の見解を説かれました。それから約2500年が経った今も、その教えは生き続けているだけでなく、毎日の生活に役立つものとなっています。仏陀の教えとは煩悩に打ち勝つことであり、その目的を達成するためには、空の理解、つまり、すべての現象は私たちの目に映るように存在しているのではないということを理解することが鍵となります」
次に法王は、『入菩薩行論』第5章の解説で、寝る前によい心の動機を起こしてから眠ることにより、眠っている間も心をよき状態に保ち、善行を積むことができると述べられた。続く第6章の忍耐の解説では、怒りが生じた時はそれをただ受け入れるのではなく、怒りがもたらす数々の過失について熟考することにより、怒りを回避するべきであると説かれた。
忍耐の修行や、自分と他者の立場を入れ替えるという菩提心を起こすための修行は、私たちが帰依し、礼拝する仏陀に対して実践することはできない、と法王は述べられた。私たちに害を与える敵に対して忍耐を修行することができるのであり、苦しみにあえぐ一切有情に対して菩提心を起こすことができるのである。そして、今日の世界では多くの貧困に苦しむ人たちがおり、私たち人間がその解決に努めなければならないと、法王は述べられた。
続いて法王は、もう1つのテキストである『修習次第』を手に取り、昨日に続いて「止」(一点集中の瞑想)の成就についての解説に入られた。法王は、「止」の修行をするにあたり、朝起きて顔を洗ったら、まず最初に自分の心について考え、集中する瞑想をするとよいと述べられた。起きたばかりの時は心がさわやかで新鮮な状態にあるので、過去の記憶や未来の計画などに気を散らすことなく、現在の心に一点に集中してその状態に自然にとどまるのがよいとアドバイスされた。そうすることで心が明らかになり、心には“明らかでものを知ることができる”という本質があることが見えてくる、と説かれた。また瞑想をする際には、まず呼吸を瞑想の対象として、呼吸だけに集中するのがよいと述べられた。
『修習次第』には、輪廻におけるすべてのよき資質は「止」と「観」の実践から得られる結果である、と説かれている。一点に集中する「止」の成就のみでは煩悩を断滅することはできず、「止」と「観」を結び合わせて修行することが必要とされる。
法王は最後に第8章(140偈〜154偈)を読まれ、今日の法話を締めくくられた。前行法話は明日も引き続き行われる。