インド、ビハール州 ブッダガヤ
カーラチャクラ灌頂の前行法要は今朝も続けて行われた。その中で、砂マンダラの制作は四人の僧侶たちにより着実に続けられ、今ではマンダラの宮殿の形がほぼ見える段階に達している。
昼食後、ダライ・ラマ法王はカーラチャクラ灌頂伝授会会場に戻られ、本日俄かに開催することになった「異なる宗教間の集い」に参加する主要な宗教の指導者たちを迎えられた。
アムリトサルにあるアカル・タカトのシーク教の指導者ジアニ・クルバチャン・シンハ師、イスラム教の指導者マウラナ・ハスラナ・ラフマン師、ジャイナ教の指導者アチャリヤ・ロケシ・ムニ師、ヒンドゥー教の指導者スワミ・チダナンド・サラスワティ師が順に各宗教の祈祷文を唱え、短いスピーチをした。
最後にダライ・ラマ法王がチベット語でスピーチをされ、それをサムドン・リンポチェが流暢なヒンディー語に通訳した。法王は次のように述べられた。
「本日、釈尊が悟りを開かれたまさにこの聖地に私たちは集まることができました。この“異なる宗教間の集い”に出席された皆さんが、それぞれ慈悲の重要性について素晴らしいお話をされました。ここに集まられた様々な伝統宗教はそれぞれ異なった哲学的見解を持っていますが、愛と慈悲の心について共通のメッセージを説いています」
各宗教の指導者たちが降壇すると、法王は法座に座られて前行法話の続きを再開された。昨日同様、始めにパーリ語で『吉祥経』が唱えられ、続いて中国人出家者たちが中国語で『般若心経』を唱えた。そこで 法王は、次のように述べられた。
「昨日はかなり詳しい解説をしましたので、今日はそれを繰り返しませんが、私たちは今『入菩薩行論』を読み進めています」
法王は所々解説を挟みながら、各章の偈を順にしっかりと軽快に読み進められた。まず心の動機の重要性を強調され、もし、一切有情のためにこそ悟りを得ようという意図で菩提心を起こすなら、それによって積むことのできる善根は尽きることがないと説明された上で、熱望の菩提心(発願)と誓願の菩提心(発趣)という二種類の菩提心の区別について解説された。
その後に続く偈では、苦しみは煩悩を因として生じた結果であり、その煩悩は生じるや否やすぐに心を掻き乱すものであることを明確に説かれた。そして次のように述べられた。
「煩悩と、煩悩に支配されてなした行いによって引き起こされる苦しみは、克服可能なものであるということを明確に理解したならば、自ずと煩悩を克服したいと願うようになり、その目的を達成するために利他行の実践を始めるのです。煩悩と苦しみを克服するための鍵は、空(真如)の意味を理解することです」
また法王は、「四つの聖なる真理」(四聖諦)について解説され、次のように述べられた。
「釈尊は初転法輪において無我を簡略的に説かれ、ラジギール郊外の霊鷲山の山頂で説かれた第二転法輪では、あらゆるものは因と条件に依存して生じているため、それ自体の側からの固有の存在がないこと、一切の現象には実体がなく、空の本質を持つものであることを明確に説かれたのです」
そして法王は、『入菩薩行論』の第5章「正知」(監視作用)を三分の二まで読み進めたところでこの日の説法を終了し、残りは明日続けましょう、と言われた。