インド、カルナータカ州 ムンゴット
今日はチベット暦の10月25日にあたり、この日はチベット仏教ゲルク派の宗祖ツォンカパ大師が入滅されたご命日(祖師忌)で、「ガンデン・ガチュー(兜率五供養)」と呼ばれる。
今朝、ダライ・ラマ法王は、ガンデン僧院ラチ堂において、ゲルク派の高僧らとともに着座されると、「最初にツォンカパ大師が著された『縁起讃』を唱えます。続いて、ツォンカパ大師の『了義未了義善説心髄』を唱えましょう」と告げられた。
法王は、「私は『了義未了義善説心髄』のテキストをどこに行くときでも携え、時間ができたらいつでも読んでいます」と述べられた。経頭(きょうとう。読経の導師)の読経に従って、本堂に集まった約千人の僧侶が一同にテキストを読み上げた。法王は「ペチャ」と呼ばれるチベットの伝統的な経本を用いて読み上げられたが、ほとんどの僧侶たちは普通の本のかたちの経本を用いていた。ひとりふたりの僧侶は暗誦しているようであった。快調なペースで読誦され、11時半の昼食休憩の開始までにテキストの三分の一が読み終えられた。
昼食後、法王はチベットからの巡礼者のグループの謁見に応じられた。
「雪の国チベットは、あなたがた、チベットで暮らしているチベット人たちのものです。チベットの本当の『主』はあなたがたなのです。あなたがたは困難に直面していますが、強い心と断固たる勇気を持っており、私たち亡命チベット人の手本です。私たちの側に真実があり、私たちが正しいことを思い出させてくれます。嘘や偽りは道理にかないません。長い目で見れば、真実は私たちの側にあります。全体主義のシステムは抑圧的であり、柔軟性がありませんから、うまくいくことはないでしょう。ものごとは移り変わっていきます。強硬路線が取られているので、今すぐではないかもしれませんが、私たち皆が再会できるときが必ず来ると思います」
「心安らかに、健康でいてください。私はとても元気で、百歳を超えるまで生きられると思います。あなたがたにできることは、子どもたちのために現代教育を行う学校を作ることです。その学校では仏教も学べるようにしてください。最近では、西洋の科学者たちも仏教科学と仏教哲学に強い関心を持っています。私たちの、チベット仏教の伝統は、先人から伝えられてきた世界的な遺産だと言えますが、私たち皆が学び、実践して、生きた仏教を未来に伝えることが大切です」
「ブッダガヤで行われるカーラチャクラ灌頂の伝授会に参加できる人たちには、その時に、釈尊が説かれた教えについてもっと時間をかけてお話ししましょう。参加できない人は、カーラチャクラ灌頂が行われるチベット暦11月13日、14日、15日を忘れずに、その期間はたとえどこにいても、カーラチャクラ灌頂が行われていることを覚えていてください。私もあなたがた皆さんのことを心に留めておきます。そうすれば、もし遠くにいても、自分は今カーラチャクラ灌頂を受法しているのだ、と必ず感じることができるでしょう」
午後の法要では、『了義未了義善説心髄』の読経が再開され、読経のペースが上げられた。法王は午後4時まで読誦に加わられ、その後宿泊先に戻られたが、その時点で全体の三分の二以上が読み終えられていた。
明日、法王は空路でデリーに移動され、ロシア人グループに向けて三日間の法話会を行われる。