モンゴル、ウランバートル
昨日の朝遅く、ダライ・ラマ法王は日本を発たれモンゴルに向かわれた。法王をお乗せした飛行機がウランバートル上の雲をくぐって降下すると、大地は見渡す限り雪に覆われていた。
法王は飛行機のドアのところで、ガンダン・テクチェンリン僧院のチューキ・ギャムツォ僧院長とモンゴルの高僧たち、インド大使館代表、モスクワ法王事務所代表のテロ・トゥルク師の出迎えを受けられた。
到着ロビーでは大勢の僧侶たちが法王のご到着を待ち受けていた。法王は、法王をお迎えした高官たちと少しお話をされた後、モンゴル国営テレビのインタビューに対して短いコメントをされた。その中で法王は、再びモンゴルを訪れることが出来た喜びを伝えられ、これから四日間にわたるご訪問中に法話などを行ない、ガンダン・テクチェンリン僧院で若い世代の人々と交流することを楽しみにしていると語られた。
今朝法王は、ウランバートルから少し車で走ったところにあるガンダン・テクチェンリン僧院に向かわれた。最初に執金剛堂で礼拝された法王は、法話会場の本堂に入られ、法座に着かれた。そこで僧院長のチューキ・ギャムツォ師が全参加者を代表して、マンダラ供養と仏陀の身・口・意の象徴を法王に捧げた。祈願文の読経と供養法要の後で、法王はご自身が書かれた『ナーランダー僧院の17人の成就者たちへの祈願文』の口頭伝授を行なわれた。
法王への敬意を表してガンダン・テクチェンリン僧院で昼食が用意され、法王は僧院に設けられたモンゴル語でゲルと呼ばれる伝統的な円形の簡易テントの中で昼食を取られた。
午後になり、観音菩薩堂の前には、数千の一般の人々が極寒の外気をものともせずに、ダライ・ラマ法王のお姿を一目でも拝見しようと待ち受けていた。法王もそれにお答えになり、今回のモンゴル再訪をどれだけ嬉しく思っているかを告げられ、法要やお祈りをするばかりでなく、仏法の意味について学ぶことが何よりも大切であることを聴衆に訴えられた。そしてどのように仏教を学ぶかについては、明日予定されている法話会において説明することを約束された。
午後の法話会場であるイガ・チュリンには千人以上の僧侶たちが法王のお話を聴く為に詰めかけていた。法王は彼らに向かって、30年以上に渡って続いている現代科学者たちとの対話の内容について語られた。この対話では、主として宇宙論、神経生物学、物理学(特に量子物理学)、心理学という4つの分野に焦点を当てている。お互いに学ぶところが大きいので、対話は豊かなものであり、双方にとって有益なものになっている。
そして法王は、次のように続けられた。「最初は好奇心から科学者たちとの対話を始めましたが、会話が進展するにつれ、私たちが僧院でも学ぶことのできる有益な情報を彼らが持っていることに気づきました。そこで科学者たちがしている研究の一部を、インドのいくつかの主要な僧院大学の教育カリキュラムに導入することにしたのです」
法王はここでも、ナーランダー僧院の導師たちが書かれた古典的なテキストを勉強することの重要性を強調された。
「過去において多くの人々が持っていたような素朴な信仰心を抱くだけでは十分ではありません。私たちの信仰は知識と論理に基づいたものであることが肝要です。ですから昨今、私はチベット人たちに21世紀の仏教徒になるようにと忠告しています。21世紀の仏教徒とは、堅固な理解に基づいて仏陀に従う者のことです。そしてまた、現代の情勢に精通して信仰と宗教の伝統を保持していくことも大切です。あなた方モンゴル人も21世紀の仏教徒になってください」
法王は聴衆からのいくつかの質問に答えられてから、滞在先のゲストハウスに戻られた。明日法王はジェ・ツォンカパの『縁起讃』と『修行道の三要素』について解説され、ジェ・ツォンカパを観音菩薩・文殊菩薩・金剛手菩薩とともに称える礼讃偈の伝授を行なわれる予定である。