チェコ、プラハ
ダライ・ラマ法王は今朝、スロヴァキア共和国のブラチスラバから霧の立ち込めるプラハに降り立たれた。ホテルにご到着後すぐチェコ国営テレビ局のニュース専門チャンネル「CT24」の取材を受けられ、チェコ共和国の故バツラフ・ハベル大統領の良き点について聞かれた法王は、次のように答えられた。
「真実を語り、正直で、隠し事をされなかったところです。そして困難な局面にしっかりと向き合われたところです」法王は故ハベル大統領を、大切な尊敬する友人として偲んでいると話された。
続いて中東情勢を解決する手段を問われた法王は、はっきりと「対話です」と答えられた。同じ質問がラジオ局のチェコ放送とチェコ通信のインタビューを受けられた際にもあり、法王は繰り返し21世紀を対話の世紀にする必要性について説かれた。そして21世紀に入ってすでに15年が経つが、この目標を達成するまでにまだ時間はあると述べられた。
プラハ城に隣接するフラッチャニ広場には、寒空の下2,500人の聴衆が集まった。特設ステージには、故ハベル大統領を偲ぶ大きな写真が掲げられ、スピーカーは法王の他に、チェコの政治、宗教、文化、芸術など各方面からの著名人が集まった。
法王は次のように挨拶され、お話を始められた。「兄弟姉妹の皆さん、今日こうしてお会いすることができ、大変嬉しく思います。皆さんの正義と真実への暖かい共感と支援に、心から感謝いたします」
「私は一般的に各々が生まれ持った宗教に信心するのがいいと思っています。ここヨーロッパはユダヤ教とキリスト教の伝統がありますから、皆さんに厳格な仏教の教えを説くのには多少の抵抗があります。しかし、仏教科学の面からは、心と感情の働きについて学ぶことができますし、仏教哲学の面では、量子力学の分野から学術的なアプローチをすることができます。つまり、私たちは誰もが、煩悩にどう対処するかを学ぶことで、仏教の教えから恩恵を受けることができるのです。そういった観点から、ズザナ・オンドミショーヴァ博士からいただいた法話会の依頼を来年の訪問の際には、ぜひ実現したいと思っていますが、皆さん、いかがでしょうか」
聴衆は歓声を上げ、それに応えた。
「ところで今日はたくさんの方がチベット国旗を掲げてくださっていますが、もちろん中国当局はこの国旗を分裂主義の象徴と見なしています。私は1954年から55年の間に中国で毛沢東主席に何度かお会いしていますが、一度チベットの国旗はあるかと聞かれたことがありました。私は少し考えて、ありますと答えました。すると、それを手放すことなく、紅旗と一緒に掲げるのが大事だと言われました。ですから、もしも文句をつけてくる中国人がいたなら、毛沢東からこの旗を掲げる許可を得ていると言ってください」
「そして最後に、故ハベル大統領の意志を継いで、すべての人が平等、自由、慈悲を享受する世界を目指しましょう。皆さん、どうもありがとうございました」
聴衆の割れんばかりの拍手で、イベントは終了した。