2016年8月18日 - 19日
インド、ジャンムー・カシミール州ラダック地方レー
18日早朝、ダライ・ラマ法王の法話会が始まり、およそ3万人の信徒たちがシワツェルの野外会場に集まった。法話会はレーのラダック仏教協会(Ladakh Buddhist Association)と多くのボランティア団体が主催し、午前中のみ4日間に渡って行なわれる。
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シワツェルの法話会場に到着され、3万人を超える群衆に手を振られるダライ・ラマ法王。2016年8月18日、インド、ジャンムー・カシミール州ラダック地方(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁)
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法話に先立ち、各僧院から集まった僧侶と学徒たちが仏教哲学の問答を披露し、甚深な仏陀の教えを伝統に従った論理的な手段に基づいて探究した。8世紀に登場したナーランダー僧院の学匠、シャーンティデーヴァ(寂天)の著書『入菩薩行論』の解説を始めるにあたり、法王は聴衆に向けて仏典に記されていることを
学び、理解することの大切さについて語られた。そして、「仏陀の教えの心髄は何なのか、それを理解せずに信心するのは、ただ伝統を社会的な習慣として守っているに過ぎません」と述べられた。
「私たちが今日ここに集まったのは、何かパフォーマンスを見物するためでも、ただ顔を合わせるためでもありません。仏陀の教えを学び、探究するためにここに集まったのです。ですからまず最初に、教えを授ける側も、授かる側も、純粋なよい心の動機を起こすことが必要です。そうでなければ、ただ時間を無駄に過ごすだけになってしまいます」
ラダックの強い日差しの下、地元ラダックの人々、チベット人、西洋人の信徒と旅行者を含む聴衆が、すべての宗教の調和を説かれる法王のお話に耳を傾けた。そこで法王は、菩提心がもたらす恩恵について説明され、すべての有情を救済するために悟りを得たいという熱望こそ、菩薩の生きかたの動機となるべきものである、と述べられた。このテキストには、利他行をなしたいという熱望をどのように培い、維持していくべきかが説明されている。菩提心生起には二つの段階があり、まず最初に、菩提心を起こしたいと心から願う「熱望の菩提心」(発願心)を生起すること、そして次に、菩薩戒を授かることにより、実際に菩薩の修行に入る「誓願の菩提心」(発趣心)を生起する段階がある。このような菩薩の修行は一般的に六波羅蜜として知られており、その第一は布施波羅蜜となっている。
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法話会で『入菩薩行論』を読まれるダライ・ラマ法王。2016年8月19日、インド、ジャンムー・カシミール州ラダック地方(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁)
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そして法王は、次のように続けられた。「小さな動物を含むすべての生き物が幸せを望んでいます。ですから、他の生き物たちを尊重し、できる限り彼らを理解して 助けようとすることこそ、私たちの幸せの源となるのです」
「私たちには二種類の敵がいます。ひとつは利己主義であり、もうひとつは自我に対する誤った認識です。この二つの敵を克服するために、仏教全般としても重要なことですが、特にナーランダー僧院の伝統においては、心によき変容をもたらすために、人間の持つすぐれた知性を働かせることがいかに重要であるかが説かれています。これは、飲酒やドラックで一時的に得られる快楽よりも、ずっと効果的に幸せをもたらしてくれます」
法王は『入菩薩行論』の第1章第28偈を引用して、有情の苦しみについて次のように説明された。
- 苦しみから逃れたいと望んでいても
- 苦しみに向かって走って行く
- 幸せを望んでいても
- 無明によって自分の幸せを敵のごとく破壊する
法話は8月20日に終了し、21日には仏陀の慈悲の顕現である観音菩薩の許可灌頂が授与される。