アメリカ、ミネソタ州 ロチェスター
チベット暦新年を迎えるにあたり、ダライ・ラマ法王はチベット本土ならびに亡命中のチベット人や世界中の支援者に向けて、アメリカ、ミネソタ州の医療研究機関メイヨークリニックからビデオメッセージを送られた。
以下、ビデオメッセージの日本語翻訳文となる。また、ページ下部から、動画をご覧いただける(チベット語に英語の翻訳字幕)。
「私は今、米国ミネソタ州のメイヨークリニックで前立腺の予防治療を受けています。チベット暦新年を迎えるにあたり、チベット本土ならびに亡命中の出家、在家、老若男女、すべてのチベット人の皆さんに、そして世界中の友人や支援者の皆様にご挨拶を申し上げます。
今日、こうして皆さんにお話をしようと思ったのは、私がここで治療を受けていることから、チベット本土や亡命下に暮らすチベット人の多くの皆さんが、私への揺るがぬ信頼と帰依の心から私の回復を祈り、心を込めて祈願をしたり祈願法要を行なってくださっていることにお礼を申し上げたかったからです。今日はこうして皆さんにお目にかかり、ご挨拶を申し上げるとともに、皆さんにも、私がとても元気にしていることをご覧いただけたらと思いました。
この治療を完了するには少し時間がかかりますが、毎日の治療は数分だけで、複雑な治療ではありませんし、深刻な状況でもありませんから、何も心配することはありません。くつろいだ気持ちでリラックスして過ごしていますので、休養を取っているようなものです。 いつものように朝と晩に祈願文を読誦し、日中は経典や論書を読んだりしながら過ごしています。ですから皆さんも、全く心配する必要はありません。
チベット暦新年には、「ロサ・タシデレ」と言って挨拶を交わし、互いの幸せを祈るのがチベット人の習慣です。これは、新年の慣わしとしてツァンパを撒いて食べたり、お酒を飲んだり、ゲームをするだけの機会ではありません。
『文殊師利真実名経』には、だれもが幸せを望み、苦しみを望んでいないのだから、幸せの因とは他者を利益して幸せを与えることであり、これを「タシ」と言う、と書かれています。このように、幸せの因となる善行を積んでいれば、あなたの人生は利他の心に基づいたものとなり、他者を害することなく生きていくならば、意義ある人生にすることができます。私たちは、これを踏まえて「タシデレ」と言っていますが、そのような「タシ」という因と条件に依存して、「デレ」という結果が生じます。デレの「デ(ワ)」は一時的な幸せであり、「レ(ク)」とは、仏教的に言えば「究極の仏陀の境地に至る」ことなのです。
そこで、私はすべての皆さんに、「ロサ・タシデレ(吉祥ある新年を)」とお祈りしたいと思います。それと同時に、どうか皆さんも、「タシデレ」という意味通りの意義ある人生を過ごしてください、と申し上げたいと思います。
この病院の職員の皆さんは、最大限の注意を払い、親しみを込めてじつによく面倒を看てくださっていますので、私も非常に穏やかなくつろいだ気持ちで過ごしています。私自身がゆったりと過ごしていますので、誰と会っても皆さんが笑顔で応対してくださっています。それをすべての方々にお伝えしておきたいと思いました。
そして私には、チベット人以外にも、世界中にたくさんの知人がいます。宗教を信心している方々も信心していない方々も、科学者の方々も、さらには子どもたちも、世界中の方々が私の回復を願って手紙を送ってくださいました。この場をお借りして、すべての方々にお礼を申し上げたいと思います。私のために、皆さんが一生懸命祈りを捧げてくださっていることを大変嬉しく思い、皆さんに感謝しています。どうもありがとうございます」