法王は次のように述べられた。「今日は、昨日のテキストの続きですが、どのように修行を行なうかについてお話しします。まず、私たちは皆、心によい動機を定め、三宝に帰依し、菩提心を生起する必要があります。このニューヨークには人間もいますが、私たちの目には見えない他の生きものたちもいます。そのすべての生きものが幸せになりたいと願っており、仏性が備わっているという点においてまったく同じ立場にあります。そこで、教えを説く師は、すべての生きとし生けるものたちを教えの実践の対象に含めるのが慣例とされています」
「私たちはここで仏陀の教えを学んでいます。 仏教の伝統を背景に 持つ人も、 比較的最近仏教に親しむようになった人も、 幸せになるためには他者に対する愛と思いやりを持つことが必要であるということを仏陀は強調されており、それを縁起の見解に基づいて説かれました。ナーガールジュナは、その著作『根本中論偈』の27章で、慈悲の心と正しい見解を説かれたことを理由に、仏陀に礼拝されています」
また、法王は、現実のありようについて多くの間違った見解が存在しているが、正しい見解を育むことによってのみ間違った見解を正すことができる、と述べられた。すべての現象にはそれ自体の固有の実体がある、という間違った見解をなくすためには、空についての正しい見解を育まなければならない。ナーガールジュナは、現実のありようを正しく見極めるためには、縁起の見解を理解することが必要である、と説かれた。これは幸せになるために必要な因と条件のひとつである。心を乱すすべての感情、つまり煩悩は、根本的な無知に根ざしており、例外はない、と法王は述べられた。そして、すべての煩悩の源となる無知は、固有の実体にとらわれる心である、とナーガールジュナは『七十空性論』の中で述べられている。
法王は、カマラシーラの『修習次第』の説明に戻られた。それを終わられると、仏教の4つの哲学学派が主張する見解について学び、それに心を馴染ませることによって 21世紀の仏教徒にならなければならない、と述べられた。
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法話をされるダライ・ラマ法王。2015年7月10日、アメリカ、ニューヨーク(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁)
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「両親が仏教徒だからというだけで、自分も仏教徒だということにはなりません。馬の調教と同じように、かき乱された自分の心を訓練し、鎮める必要があるのです。私は亡命チベット人たちに、心を訓練する実践をするようにと励まし続けており、チベットに戻ったら、そこでも同じように実践できることを願っています」と述べられた。
法王は、学びの重要性についてジェ・ツォンカパとドムトンパが述べられているお言葉を引用され、これが仏教の教えに対するご自身の取り組みかたである、と述べられた。そして、「私はたくさんの仏典を読み、勉強する努力を続けています。インドの偉大な導師たちの著作をもっと読みたいと思っています。仏典を読む時は、「この方は何を言おうとしておられるのだろう、そのようなことを言われる理由は何だろう、と自分に問いかけながら読んでいます。まだチベットにいた頃、デプン・ゴマン僧院にカカ・テンパというモンゴル人の学者がいて、この人は、本当の理解を得るために、時には1ページを読むのに何時間もかけることで知られていました」と説明された。
その後法王は、白ターラー菩薩の長寿の灌頂を授与される前に、1万5千人以上の聴衆を菩提心生起の簡潔な儀式に導いていかれた。法王は、かつてチベットで、ラツン・リンポチェが法王のために白ターラー菩薩に基づくご長寿祈願の儀式を執り行われた時、白ターラー菩薩の眉間から光が流れ出てきたという強いビジョンを得られた話に触れられた。その時リンポチェは、これは法王が長生きなさるしるしだと感じたことを嬉しそうに法王に告げられたのである。法王は、ある中国伝統医学の医師も最近法王を診察して、100歳まで生きられるだろうと宣言したことも、皆に報告された。
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白ターラー菩薩の灌頂を伝授されるダライ・ラマ法王。2015年7月10日、アメリカ、ニューヨーク(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁) |
白ターラー菩薩の灌頂の儀式に入りながら、法王はこの灌頂をラツン・リンポチェから授かられたこと、そしてタクダ・リンポチェとリン・リンポチェからは何度も授かられ、法王はこの実践のために隠遁修行をされて、成就法を毎日唱えられたことを語られた。灌頂の儀式が全て終わると、ナムギャル僧院の僧侶たちが、モンゴル人会、ロシア人会、ヒマラヤ地方の仏教徒たち、そして北米チベット人協会を代表して、法王のご長寿を祈願する儀式を執り行った。
北米チベット人協会副代表のタシ・ナムギャル氏は、最後に感謝の言葉を述べて、法王が世界中からの尊敬を集められていることを次のように説明した。「法王猊下はこの世の人々を助けるために、この世界に姿を現わされたのです。60年近くもの亡命生活において、私たちチベット人の水準を向上させるように励まして下さったので、チベットの言語と文化は今も強く維持されています」
それを受けて、法王は次のように答えられた。「今日、皆さんは心をこめて私に長寿祈願の儀式を捧げてくれました。皆さんは、今後も勤勉に努力し続けることを誓い、私自身も努力を貫く強い意志を固めました。私はチベットの人々との強いカルマの繋がりを感じており、チベットの人々が健やかであることは、仏法の存続に結びついています。インドは、仏教が起こり、繁栄した国かもしれませんが、たとえば、仏教繁栄の中心となったナーランダー僧院は、今では廃墟となっています。今日では、完全な仏教の教えは、チベット人の間にしか存在しておらず、私はこの伝統を維持し、掲げていく所存です」
「私は皆さんに、是非伝えておきたいことがあります。私の前では誠実な顔をしながら、背後で偽善的な行動をするようなことをしてはなりません。もちろん、自分の意見を持つのは自由です。けれども、それは事実に基づいたものであるべきで、単なる思いつきであってはなりません。不幸なことに、過去においてチベットは政治的に分裂していましたが、共通の言葉や、文化、伝統により、同じチベット人であるという意識や、民族としての結束感を持っていました。」
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ダライ・ラマ法王のお話に聞き入る聴衆。2015年7月10日、アメリカ、ニューヨーク(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁)
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「以前皆さんは、私にどうにかして下さいと頼んだことがありますね。今日はその逆に、私から皆さんにお願いしたいことがあります。シュクデン問題が取りざたされていますが、これは新しい話ではありません。ダライ・ラマ5世の時代にまで遡ることです。その頃、この悪霊によって不吉な事件が起こり、ダライ・ラマ13世の治世にもそういうことが起こりました。この悪霊自身が、自らをゲルク派に対する不実な霊であると述べているのです。
私は、外で抗議をしている人たちが私自身について何を言おうと気にしていません。他の場所でも言いましたが、彼らは言論の自由という権利を行使しているのです。しかし、私もまた同様に、言論の自由を行使することができます。
私がまだシュクデンの修行をしていた頃、シュクデンをゲルク派の特別な守護尊だと考えていましたが、リン・リンポチェは、シュクデンと全く関わりを持ってはおられませんでした。しかし、ティジャン・リンポチェも、ゼメー・リンポチェも、シュクデンを世俗の霊と見なしていました。シュクデン信仰には「命の委託」(life entrustment ceremony)という儀式がありますが、その儀式ではシュクデンの霊が信者たちに従うべきであり、その逆ではないのです。国際ゲルク協会がシュクデンについての調査書を出版しましたので、皆さんはこれを読んで現状をよく理解するべきです。もうすぐ英語版も刊行されることになっています。
私は普通、宗派にこだわらない立場をとっていますので、キリスト教の教会、ユダヤ教の教会、イスラム教のモスク、シーク教の寺院、仏教の寺院などどこでも巡礼として訪問しています。私は異なる宗教間の調和をはかることを使命としており、そのために努力していますが、それは私たちがみな隣りあって生きていかなくてはならないからです。仏陀も、他の信仰を持つ人たちを仏教に改宗させようとしたりすることはなさいませんでした。私たちは、強い宗派主義的な感情を持つべきではありません。ダライ・ラマ13世が遷化された後、何があったのかを読めば、グル・リンポチェ像への冒涜も含めて、シュクデン信者たちによる多くの宗派主義的な活動が起きたことがわかります。
ジェ・ツォンカパの伝統は、本当に純粋なものです。幽霊に守ってもらう必要はないのです。ツォンカパの著作は、ナーガールジュナとその弟子たちに比肩するものであり、その完成された見解には本当に感銘を受けます。ジェ・ツォンカパの伝統は、幽霊の守護に頼る必要などありません。ジェ・ツォンカパが残された18巻の著作がそれを明らかに語っているのです。
それはそれとして、シュクデンを信仰する抗議者たちも、私たちの慈愛の対象です。彼らは、自分たちが何を言っているのかわかっておらず、あんなに怒った顔をしています。彼らは本当の状況を理解していないのですから、彼らに煩わされないようにしてください」
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ダライ・ラマ法王の80歳のお誕生日祝賀会で、アメリカとカナダ、そしてチベット国歌を斉唱するチベット人の子どもたち。2015年7月10日、アメリカ、ニューヨーク(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁)
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そして、法王と1万5千人の聴衆、チベットとインド以外の国では最大規模の集まりとなったチベット人会の人たちが昼食の休憩に入った。その後、会場の横にある第2舞台において、アメリカ、カナダ、チベットの国歌を歌うチベット人の子どもたちの合唱により、法王のお誕生日を祝う大祝賀会が始まった。法王は念入りに作られたバースデーケーキを贈られ、参加者全員が「ハッピーバースデー」の歌を歌った。
ダライ・ラマ法王北米事務所代表のケィドル・ウカーツァン氏は皆に挨拶をし、法王事務所が行った作文コンクールの受賞者を発表した。受賞者のタシは、チベットからインドに亡命した時のことを述べてから、ダライ・ラマ法王は、チベットにいる彼の家族が言っていたような神様でもなく、中国当局が描きだしたような悪魔でもなかったことを発見した驚きについて述べ、法王とチベット人の間にある絆は、何者も壊すことはできないものであると語って締めくくった。
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ダライ・ラマ法王のお誕生日祝賀会で、演奏をするチベット人の少年少女たち。2015年7月10日、アメリカ、ニューヨーク(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁)
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ロブサン・センゲ主席大臣は、法王の助言に従うというチベット人の誓いを繰り返し、聴衆に向かって、このようなお祝いは私たちの感謝を表わすものであり、法王がチベット人にたいしてどれほど親切でよくしてくださったかを若者たちに知らせることが大切であると強調した。
次に、チベット議会を代表して議長のペンパ・ツェリン氏が、アメリカ議会前議長のナンシー・ペロシ氏、オバマ大統領の上級顧問のヴァレリー・ジャレット氏、リチャード・ギア氏、ミン・シア教授、チベットのための国際キャンペーン代表のマッテオ・メカッチ氏を歓迎した。
ミン・シア教授は、中国人にとって法王はどのような意味を持っているのかを語り、法王が手を差し伸べてくださっていることに対する感謝に触れながら、法王のお誕生日を祝った。
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ダライ・ラマ法王のお誕生日祝賀会で、スピーチをするリチャード・ギア氏。2015年7月10日、アメリカ、ニューヨーク(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁)
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チベットの長い間の友であるリチャード・ギア氏は、次のように聴衆に挨拶した。
「チベット人の兄弟姉妹の皆さん、こんにちは。そして、外国人の兄弟姉妹の皆さん、こんにちは。私たち1万5千人の聴衆、ヴァレリーとナンシー、多くのリンポチェをはじめとする僧侶の方々、そして他の指導者の方々、ここにダライ・ラマ法王と共にいられることがどんなに素晴らしいかを決して忘れないようにしましょう。ダライ・ラマ法王のお話を伺い、お顔を拝見できるとは、何というすばらしい機会なのでしょう。これは私たち全てにとって、大変恵まれたことです。法王は、毎日私たちにご自身を与えて下さっています。ありがとうございます」と述べた。
1997年、法王の人生を描いたマーティン・スコッセッシ監督の「クンドゥン」という映画のプライベートな上映会で、法王がインド国境に到着された時、身辺警護を勤めたカム地方の闘士たちがチベットへ戻っていく姿を法王がものおもわしげに見送られる情景をギア氏は思い出しながら語った。側にはほとんど友人もおらず、インドの方を見ていた時は次に何が起こるのかまったく想像もつかなかった、とのちに法王が語られたことをギア氏は聴衆に話した。
「そして今、法王は世界中に友人がいます。90歳、100歳、110歳、120歳のお誕生日には、また皆さんと一緒にお祝いする約束をしましょう!」とギア氏が言うと、聴衆は喝采の声をあげた。
ロブサン・センゲ主席大臣は、兄、リチャード・ギア氏に感謝し、姉、オバマ大統領の上級顧問ヴァレリー・ジャレット氏と議会の民主党のリーダー、ナンシー・ペロシ氏を紹介した。まずジャレット氏がスピーチを行ない、「ダライ・ラマ法王、僧侶の皆様、チベット人のみなさん、高官や来賓の方々、こんにちは。こんなに多くの友人と共にいられるのは、なんと名誉なことでしょう。私は、バラク・オバマ大統領の代わりに、アメリカ人の暖かい気持ちを法王にお伝えするためにここにおります。法王のように、決して変わることのない思いやりのメッセージを送り続け、人類に対してこれほど前向きな貢献をされた方は他にいません。今日、私たちは、素晴らしいリーダーであり、ひとりのよき人間であり、驚くべき気品を持つ方の誕生日をお祝いしています。120歳まで、ご健康で、元気よくお過ごしになれらることをお祈りいたします」と述べると、聴衆の歓声は盛り上がった。
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ダライ・ラマ法王のお誕生日祝賀会で、ナンシー・ペロシ氏にお礼を述べられる法王。2015年7月10日、アメリカ、ニューヨーク(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁)
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ナンシー・ペロシ氏は、カリフォルニア州の代表を28年間務め、アメリカ合衆国議会の野党のリーダーとして、また、議会の最初の女性議長として、民主党を10年間導いてきた人物である。
「こんにちは、皆様」と、ペロシ氏は話を始めた。「今日は、数々のスピーチの合間にたくさんの伝統文化の上演があると聞いていましたが、本当に素晴らしい祝賀会でした」と、魅力的で、強健で、品のある華々しい歌や踊りを順番に披露した、カナダに住むチベット人、カルムイク共和国、トゥヴァ共和国、ブリヤート共和国からのモンゴル系の人々やモンゴル人、アメリカのミネソタ州に住むチベット人、ニューヨークのブータン人会、ネパールのヒマラヤ地方に住む様々なチベット民族、ニューヨークとニュージャージー州に住むチベット人、そして、首都地域のチベット人たちに感謝を表して、法王に向かって次のように述べた。
「ダライ・ラマ法王、80歳のお誕生日を心からの感謝とともに謹んでお祝い申し上げます。人間の尊厳と思いやりについて語られ、大きな反応を呼び起こされた法王がどんなに力強いお手本となっておられるかについて、オバマ大統領は、今年初頭に開催されたホワイトハウスでの祈祷朝食会(National Prayer Breakfast)で話しました。ブッシュ大統領も、法王に米国議会名誉黄金勲章を贈った時に、同じような称讃をしました」
ペロシ氏はさらに、法王がまだ少年の頃、アメリカとチベットの友好の印としてフランクリン・ルーズベルト大統領が法王に腕時計を贈ったことについて語り、法王はアメリカの歴代大統領と長い友人関係を持っておられたことに触れた。民主党と共和党は、法王の80歳のお誕生日をお祝いすることに、全会一致で賛成したのである。
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ダライ・ラマ法王のお誕生日祝賀会に集まった人々。2015年7月10日、アメリカ、ニューヨーク(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁)
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「28年前の9月、法王は5つの平和プランを議会で発表されました。法王がノーベル平和賞を受賞された時は、環境保護の必要性について、その認識を高めるための貢献が認められた最初のノーベル賞受賞者となられました。米国議会名誉黄金勲章の受賞式典では、出席希望者全員に席が足りないほどでした。
チベット人の皆さんを支援する者にとって、ダライ・ラマ法王の80歳の誕生日を猊下と共にお祝いできることはこの上ない幸せです」とペロシ氏は話を締めくくった。
チベット議会の北米代表タシ・ナムギャル氏は、祝賀会に参加し、貢献したすべての人々に感謝すると、法王にスピーチをしてくださるよう演台にお招きした。
法王は次のように語られた。「かつて、ラモ・ドゥンドゥプと呼ばれた小さな子どもが、今80歳になりました。私の人生を振り返ってみると、仏法のためにできることはしてきたと思います。13歳か14歳の時に他の人々に教えを説き始めてから今まで、自分の知っていることを土台に、自分をよりよく変容させようと努力してきましたし、それを他の人々と共有しようとしてきました。私は仏教の伝統の中で育ちましたが、この地球に住む70億の人々は、私と同じように幸せを願い、苦しみをなくしたいと望んでいます。そのためには、私たちは自分自身の心によりよい変容をもたらす必要があります。宗教的な信心があっても、なくても、愛と思いやりが私たちの人生の真髄なのです」
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ダライ・ラマ法王のお誕生日祝賀会で、お話をされる法王。2015年7月10日、アメリカ、ニューヨーク(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁)
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「たくさんの方がたがここに集まって私の誕生日を祝って下さいました。恐れや心配から集まったのではなく、喜びをもって、お互いに愛と思いやりを示すために集まってくださっています。私の人生で、愛と思いやりは最も有効な力を発揮し続けており、その力はあなたがたを助けることもできます。多くの人たちがあたたかい心でチベット問題を支援してくださいました。今この場を借りて、私は皆さんにお礼を申し上げたいと思います。雪の国チベットで私たちが掲げた仏法は、ナーランダー僧院の広く深遠な伝統であり、全世界の人々と分かち合うことができる宝です。その宝と、チベットの壊れやすい自然環境を守ることが、今私が最も気にかけていることです。そして、他の人々の役に立つために、自分自身が貢献できるよう、毎日祈っています」
さらに、ルーズベルト大統領から贈られた腕時計についてのナンシー・ペロシ氏のコメントに対し、法王は、腕時計の贈り物があるということを聞いて、それをどれほど楽しみにしていたかをお話になった。興味があったのは腕時計であり、ルーズベルト大統領からの手紙ではなかったこと、その手紙のコピーは、後にオバマ大統領から贈られたこと。その時計は、日付と太陽と月の動きを表わすようになっていたが、磁石に近い場所に放置されていたため動かなくなってしまい、1956年にインドに来られた時、法王はそれを持ってこられ、スイスに修理に出すように依頼されたこと。さらに、1959年にチベットからインドへ亡命する途中、シリグリで、まるで時計が法王が来られるのを待っていたかのように、時計の修理を依頼した同じ役人が時計を運んできてくれたたこと、そして、今、その腕時計は、お祈りをするテーブルの引き出しに収められていることを語られた。
最後に法王は、出席者全員の祈願とお祝いに対してお礼を述べられた。
その後、チケットの売り上げと寄付によって160万ドル以上が集まり、130万ドルの経費を引いても、25万ドル以上の収益があって、それは、各種の慈善事業に分配されることを明らかにする会計報告が読み上げられた。タシ・ナムギャル氏は、15万5千ドルが贈り物として法王に献上されたが、法王はそれを辞退され、奨学金として使うように依頼されたことを参加者に報告した。
そして、ナムギャル・ドルジェ氏は、次の祈願の言葉と共に、この日の行事を締めくくった。
「ダライ・ラマ法王の全ての念願がかないますように。私たちは法王の教えに感謝し、その御前に礼拝いたします」