インド、ニューデリー
ダライ・ラマ法王は2週間にわたる日本ご滞在中、日本の科学界、政界、医療界、仏教界など多方面の専門家をはじめ、学生や一般の人々と謁見、交流に臨まれ、日程の締めくくりとなる最終日には集まった台湾人、チベット人らと謁見された。法王はチベット人らに対し、自分のためだけでなく全人類のためを考えて行動するよう、次のように呼びかけられた。
「私たちが受け継ぐ仏教は、人のために尽くすことを説いています。世界中の人が今、チベット文化に注目しています。私たちがチベット文化を守れなければ、それは恥ずべきことです。私は諸外国の人々に、チベット人は心の暖かさで名高い民族であると伝えています。もしチベット人同士が争い、命を奪いあうようなことがあれば、その名を傷つけることになります。皆が集って現状を話し合い、建設的な意見を出し合って改善に向かう努力をしてください。
チベットが直面する問題に対して、私たちは解決すべく最善を尽くしていますが、国際的な支援が必要です。ものごとはすべて変化し、いずれ明らかになることは避けられません。中国政府は暴力でチベット人を抑圧し、民族意識を失わせようとしています。しかし、私たちはそれを跳ね返し、生き残っています。チベットが求めるものを中国が真に応じることができてはじめて問題は解決できるのです」
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台湾からの団体にお話されるダライ・ラマ法王。2015年4月14日、東京(撮影:テンジン・ジグメ)
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台湾人およそ1000人に向けて法王は、仏教に関心を持つだけでなく、しっかり学んでほしいと次のようにお話しされた。
「私は80歳になりますが、今もナーランダー僧院の学匠たちが遺されたものを学んでいます。皆さんにもぜひそうしていただきたい。21世紀の現代で大切なのは物質的な成長のみではありません。世界中で倫理観が危うくなっているようです。悪い感情に支配されている人が多いのです。大切なのは、良き人間であること、暖かい心と自信を持つことです。
皆さんの多くは、日々般若心経を唱えているでしょう。しかし唱えるだけではなく、その意味を理解する努力をしてください。21世紀の仏教徒に大切なことは、信仰心を持ち受け継がれた伝統を守るだけでなく、それを理解することであると私はよく話しています」
法王が東京から成田空港へ移動される間ずっと雨がやまなかったが、インドへ向かう飛行機は定刻通り離陸した。気流が悪く機体が何度か揺れたものの、飛行機は予定より早くデリーに到着した。法王は明日ダラムサラへ戻られる。