東京
ダライ・ラマ法王は10日間にわたる日本ご訪問の最終日、午前中にホテルで日本の国会議員グループと面会された。議員団団長の安倍晋三元首相は法王に挨拶し、法王が東日本大震災および原発事故の被災地を訪問されて、悲嘆に暮れる被災者たちに励ましとお悔やみのメッセージを送られたことに対して謝意を表明した。また、議員団は、チベット問題において法王が掲げる中道のアプローチを支持することを表明し、現在、チベット本土の状況が悪化していることに対して懸念を表した。
安倍元総理と会談されるダライ・ラマ法王。2011年11月7日、東京(撮影:チベットハウス・ジャパン) |
次に法王は、人間の持つよき資質を高めること、異なる宗教間の調和をはかること、というご自身の人生における二つの重要な使命について語られた。 「人間は知性を備えた生きものであり、知性を活用して社会に貢献することができます。しかし、知性は道徳的倫理と人間価値に基づいた、正しい動機によって使われなければなりません。これは、宗教とは何も関係がありません。人間の持つよき資質と倫理に基づいた土台があれば、私たちは人間の知性を、この地球をより良い場所にするために使うことができます。この世界に住む人間家族の一人として、私は人間性の大切さを多くの人に理解していただきたいのです。
10日間の日本ご訪問の最後に、記者会見に臨まれるダライ・ラマ法王。2011年11月7日、東京(撮影:チベットハウス・ジャパン) |
報道陣からの質問は、チベット本土で相次ぐ焼身自殺に集中した。法王は、今年3月に行われた亡命チベット政権の選挙で主席大臣が選出されたことにより、自らは政治的指導者の立場から完全に引退され、今のダライ・ラマ政庁は宗教的権限しか持っていないことを改めて強調された。「しかし、だからといって、私はダライ・ラマの地位から引退したわけではありません。ダライ・ラマ制度は、単に宗教的な指導者であるというダライ・ラマ1世から4世までの初期の時代の状態に戻っただけなのです。私は民主主義を支持しています。
個人的には、こうした焼身自殺が続く現実は政治的、宗教的、および哲学的観点から深く掘り下げられるべきだと考えています。中国がチベットを支配するようになって60年が過ぎましたが、こうした事件はチベットの現実の姿を語っています。焼身自殺は、正義と自由を求める人々の絶望を象徴する行為です。中国共産党指導部は、これを深刻に受け止め、人々の不満の元となっている問題の解決に取り組むべきです。チベットでは深刻な人権問題が存在し、独自の宗教と文化が弾圧され、環境破壊が進んでいます。これはいったい、解放なのでしょうか? 占領なのでしょうか? 私の言葉をそのまま受け取るのではなく、どうか、報道に携わる皆さんはチベットを訪れて、現実はどうなっているのかを調査していただきたいと思います」と、法王はこのように語られた。
モンゴルへのご出発に際し、手を振って挨拶されるダライ・ラマ法王。2011年11月7日、東京(撮影:チベットハウス・ジャパン) |