和歌山県 高野山 (シェーラブ・ウーセル記 / phayul.com)
この日の午後、千人を越える日本の信徒たちで満席の高野山大学松下講堂黎明館は、水を打ったように静まり返っていた。
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ダライ・ラマ法王による「チベット密教 金剛界マンダラの灌頂」で儀式用の衣装をまとう僧侶たち。2011年11月2日、高野山(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁)
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「チベット密教 金剛界マンダラの灌頂」の一環として、途中でダライ・ラマ法王は受者たちに菩提心を生起するための瞑想をするように言われた。
「この虚空が存在する限り、有情が存在する限り、私も存在し続けて、有情の苦しみを滅することができますように」というインドの偉大な導師シャーンティデーヴァ(寂天)の偈を唱えられ、法王は菩提心とは悟りを求める心であり、最も利他的な心のことであると説明された。
そして、「瞑想している時は、利己主義が心に入り込む隙を与えないよう、数限りないすべての有情たちを利益し、幸せを与え、彼らの苦しみを取り除いていると考えてください」と言われた。
多くの日本人僧侶を含む受者たちを導きながら、複雑な数多くの印を結びつつ、法王は完全な「チベット密教 金剛界マンダラの灌頂」を授与されたのである。
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ダライ・ラマ法王による「チベット密教 金剛界マンダラの灌頂」で儀式用の赤い目隠しをつける受者たち。2011年11月2日、高野山(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁) |
灌頂を受けたあと、十六年日本に住んでいるアメリカ人僧侶で、金剛峰寺の顧問を務めているトーマス・瑩浄(えいじょう)・ドライトライン師(2013年4月以降高野山大学准教授)は、パユルの記者に次のように語った。「今日は真のお加持をいただいたと感じています。ダライ・ラマ法王から灌頂を授かったことは、本物の帰依の感覚を私に与えてくれました。この体験はとても貴重な宝です。私は生涯これを大切にするでしょう。」
チベット亡命政権のあるダラムサラに住み、僧侶、修行者、医者であるアメリカ人のバリー・カーズィン師は定期的に講演旅行で日本を訪問しているが、「金剛界の灌頂は日本人にとって長く親しんできた歴史があります」と語り、次のように述べた。
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ダライ・ラマ法王による「チベット密教 金剛界マンダラの灌頂」のために制作された砂マンダラを拝見する受者たち。2011年11月2日、高野山(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁)
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「高野山大学でダライ・ラマ法王が『チベット密教 金剛界マンダラの灌頂』を授与されたことは、日本の仏教徒がこの神聖な伝統を再び繁栄させていくための長い道のりに役立つものだと私は考えています。」
灌頂を授かり、法王のお言葉を聞くために七時間も車を運転してきた学校教師の春木氏は、「私のこれからの人生にとてもワクワクしています。心に良き変容をもたらし、他者に対する真の愛と慈悲を育む実践をするためのアドバイスを聞いて、私もひとりのより良き人間になれると信じることができたからです」と述べていた。