東京 / 大阪
ダライ・ラマ法王は今朝、無事に成田空港に到着され、ダライ・ラマ法王日本代表部事務所のラクパ・ツォコ代表、高野山大学の藤田光寛学長、新居浜の萩生寺住職の齋藤友厳師と、熱心なチベットの支援者数人の歓迎を受けられた。
東京に到着され、報道陣と会見されるダライ・ラマ法王。2011年10月29日、東京(撮影:チベットハウス・ジャパン) |
大阪に出発する前に、法王は日本の報道陣との会見で、日本を再び訪れることができた喜びを伝えられた。訪日の目的を尋ねられた法王は、日本が今年、大災害に見舞われ、4月に被災者の方々のための慰霊法要を行なうことはできたが,再び被災地を訪問して、被災者の方々と時間を共にしたいという気持ちを強く持たれたことを述べられた。「ですから今回は、高野山の講演後に被災地を慰問して、困難な時を分かち合いたいのです」と法王は語られた。
2012年に予定されている中国の政権交代に寄せる期待について尋ねられた法王は、それは政治的な質問であり、私はすでに政治上の指導者としての立場から引退しています、と述べられたあと、次のように語られた。「これは私的な見解ですが、胡錦濤主席の就任にあたっては多くの人々が前向きな変化を期待していました。彼が調和のある社会づくりを強調した時には、私も全面的にそれを支持しました。しかし、それから10年経ちましたが、いまの中国に調和があるか否かは皆様の方がよくご存知でしょう。2008年にチベットで、2009年にウィグル自治区で、2011年に内モンゴルで起きた事件が現実を物語っています。調和のある社会という目標はすばらしいのですが、そのための方策は間違っています。調和のある社会は人の心から生まれるものであり、その鍵となるのは信頼です。しかし、信頼と恐怖は共存できません。ですから、次期政権が大きな変化をもたらすかどうかは、まだ分かりません。」
チベットで起きている僧侶たちの焼身自殺による抗議について尋ねられた法王は、「チベットでそのような自己犠牲の抗議が増えていることについては、哲学的、宗教的、政治的な見地から考察する必要があります。それは深い絶望のしるしです。中国政府の上層部はこうした事件についてもっと真摯な目を向けるべきでしょう。無慈悲のみでは誰の役にも立ちません」、と述べられた。
チベット問題への支援に関して日本政府にどう提言なさりたいかを問われた法王は、「日本は民主国家であり、政府は人々によってつくられているのですから、メディアを含む日本の皆さんの方が、政府に提言しやすい立場にあるでしょう。個人的には、チベット問題は正義に関わる道徳問題であり、人々を通して国会に反映されるべきであると考えます」と述べられた。
法王の生まれ変わりに関する中国の干渉については、「共産主義政府は宗教を信じないので、彼らには死後の世界はなく、転生もないのです。しかし、彼らはダライ・ラマの生まれ変わりを捜索したがっています。ダライ・ラマは、今は政治的な立場にはありません。彼らが本当にダライ・ラマの生まれ変わりに関心があるのなら、まず宗教を信じるべきです。しかし、毛沢東や周恩来の生まれ変わりを探すことを考えた方が彼らのためかもしれません」、とダライ・ラマ法王はかわされた。
大阪のホテルに到着され、歓迎を受けられるダライ・ラマ法王。2011年10月29日、大阪(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁) |