広島
ダライ・ラマ法王の秋の日本ご訪問も残すところあと二日となった。曇り空の寒い朝、法王は他の5名のノーベル平和賞受賞者(フレデリック・ウィレム・デクラーク氏、マイレッド・コリガン−マグワイア氏、モハメド・エルバラダイ氏、ジョディ・ウイリアムズ氏、シーリーン・エバーディー氏)と共に広島平和記念公園へ向かわれた。ノーベル平和賞受賞者世界サミット閉幕式に詰めかけた大勢の人々が見守る中、デクラーク氏が「聖なる場所」と表現した原爆慰霊碑に歴代の受賞者が献花し、原爆犠牲者の冥福を祈った。ノーベル平和賞受賞者世界サミット共同会長を務めるベルトローニ氏は、「世界中の全ての人々が、今日広島の一市民となったような気がする」と語った。
|
ノーベル平和賞受賞者世界サミット閉幕式に広島平和記念公園を訪れたノーベル平和賞受賞者たち。2010年11月14日、広島(撮影:チベットハウス・ジャパン)
|
ダライ・ラマ法王の秋の日本ご訪問も残すところあと二日となった。曇り空の寒い朝、法王は他の5名のノーベル平和賞受賞者(フレデリック・ウィレム・デクラーク氏、マイレッド・コリガン−マグワイア氏、モハメド・エルバラダイ氏、ジョディ・ウイリアムズ氏、シーリーン・エバーディー氏)と共に広島平和記念公園へ向かわれた。ノーベル平和賞受賞者世界サミット閉幕式に詰めかけた大勢の人々が見守る中、デクラーク氏が「聖なる場所」と表現した原爆慰霊碑に歴代の受賞者が献花し、原爆犠牲者の冥福を祈った。ノーベル平和賞受賞者世界サミット共同会長を務めるベルトローニ氏は、「世界中の全ての人々が、今日広島の一市民となったような気がする」と語った。
前日、ビルマのアウン・サン・スー・チ−氏の7年以上にも及んだ自宅軟禁が解かれたというニュースが流れ、会場はそれだけでも明るい雰囲気に包まれていたが、雲の切れ間からは日も射し始め、復興した広島を祝福しているようでもあった。歴代受賞者たちは順に登壇し、原爆の火を背後にスピーチを行なった。最後に壇上に立たれたダライ・ラマ法王は、「40年以上前初めてこの地を訪れて以来、広島と長崎の方々の勇気とそのメッセージに心を動かされ続けてきました。その勇気とメッセージが世界中に広まることを期待しています」と語られ、広島と長崎の人々の寛容さを讃えられた。法王が出会われた日本人やドイツ人で、自分たちを攻撃した国を憎む人はいなかった、と法王は述べられた。
「過去はすでに過ぎ去ってしまいました。未来を見つめなければいけません。武力で問題を解決するのはすでに時代遅れの考え方です。世界の70億人の誰もがそのことに気づいているはずだと思います。」
|
広島平和記念公園で原爆慰霊碑に献花し、原爆犠牲者の冥福を祈るノーベル平和賞受賞者たち。2010年11月14日、広島(撮影:チベットハウス・ジャパン) |
最後に法王は力強く呼びかけられた。「私はこの広島の地から全ての宗教の指導者たちにメッセージを送りたいと思います。ほとんどの宗教は慈悲、寛容、愛の大切さを説いているのですから、指導者の方々ももっと行動を起こしてください。祈るだけでなく、教会や寺院を出てそのすばらしい教えを広めるために行動してください。」核兵器の恐ろしさを理解しているはずの科学者たちに対しても、法王はもっと発言するべきだと呼びかけられた。
「結局世界を変えられるのは人類なのです。私たち一人一人がそれに貢献する可能性をもっているのです。実際20世紀後半より、個人の力によって世界に多くの変化がもたらされました。行動こそが最終的な意思を決定するものだと信じています。」そうおっしゃって法王は演説を締めくくられた。
広島平和記念公園へ向かわれた。ノーベル平和賞受賞者世界サミット閉幕式に詰めかけた大勢の人々が見守る中、デクラーク氏が「聖なる場所」と表現した原爆慰霊碑に歴代の受賞者が献花し、原爆犠牲者の冥福を祈った。
歴代受賞者のスピーチの後、秋葉広島市長が登壇し、人類と核兵器は共存してはいけない、と語った。広島県知事のスピーチがあり、平和サミット賞の授与式がそれに続いた。今年の平和サミット賞は、サッカー元イタリア代表ロベルト・バッジョ氏に贈られた。バッジョ氏はアウン・サン・スー・チ−氏の解放運動支援の他、大地震に見舞われたハイチへの支援活動などを行っている。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)には特別賞が贈られた。85歳になる坪井直日本被団協代表委員は「私たちは不死鳥です。核兵器をなくすという人類の望みを忘れずに最後まで諦めません」と決意を新たにした。歴代ノーベル平和賞受賞者によって採択された「核兵器廃絶に向けた広島宣言」がジョディ・ウイリアムズ氏によって読み上げられた。
|
ノーベル平和賞受賞者世界サミット閉幕式での記者会見での受賞者たち。。2010年11月14日、広島(撮影:チベットハウス・ジャパン)
|
ノーベル平和賞受賞者世界サミットに参加した6人の受賞者がサミット閉幕後に原爆死没者追悼平和祈念館で会見し、今年のノーベル平和賞受賞者で服役中の劉暁波氏の釈放を求める声明を発表した。法王は、「私は実はマルクス主義者です。もちろん仏教徒ではありますが、社会経済論に関してはマルクス主義を支持するつもりです。ところが1956年以降、中国は苦難と懐疑に象徴される社会になってしまいました。だからこそノルウェー・ノーベル委員会が劉氏、そして、中国の解放と自由のために活動する何千人という中国人を評価してくれたことは大変よいことだったと思っています」とコメントされた。
会場を後にする法王に報道陣が群がり、アウン・サン・スー・チ−氏解放についてコメントを求めた。法王は一言、「とても嬉しいです!」と答えられた。