長野(ツェリン・ツモ記 / phayul.com)
ダライ・ラマ法王は、200名を超える僧侶ならびに尼僧との非公式会合を行なわれ、「日本は高度に発達した科学的知識を有する国なのですから、科学的知識と伝統仏教の知識を併せ持つ仏教科学者を養成するとよいでしょう」と述べられた。
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200名を超える日本人僧侶との非公式会合で、意見を述べられるダライ・ラマ法王。2010年6月20日、長野(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁) |
法王はまた、「日本の僧侶の皆さんはもっと科学者との対話を行なって、科学と仏教が場を共有できるような分野を探求する必要があると思います。思いやりややさしさといった普遍的なよき本質を探求していただきたいのです」と述べられた。近年、チベット人の僧侶たちと西洋の科学者たちとの間で世俗的倫理について対話が行なわれているが、中でも瞑想は心身のバランスを整える効果があるとして注目されてきた。心が穏やかであるときはストレスが減り、血圧が下がることも研究から明らかにされている。また法王は、別の科学的研究を例に挙げて、人が腹を立てているときには、物事がきわめて否定的に思えるものであるが、その否定的な側面の90パーセントは自身の心の投影であって、錯覚や妄想にすぎない、と語られた。
法王は、現代科学は物質的発展においては前例のない貢献をしてきたが、瞑想によってざわめく心を訓練し、心のあたたかさを培う仏教科学はそれよりもはるかに進んでいる、と述べられた。
「瞑想は、穏やかな心を育むための健康的な方法です。穏やかな心を得るのに注射や薬を使う必要はありません」と法王は述べられた。仏教に関心を持つということは、死後の世界といった抽象的な事柄に興味を持つことではない。からだと心がよりよい状態であるために、人間に本来備わっているものを明らかにするのが仏教科学であり、近年においては科学的な研究分野としてますます発展してきた。法王は、仏教は科学、哲学、修行という三つの側面に分けることができる、と述べられた。
米国では、スタンフォード大学、ウィスコンシン大学、エモリー大学が平和な人生を築くための研究の一環として、仏教科学の研究をすでに確立している。またインドに再建されたチベットの三大僧院では、通常の仏教のカリキュラムに加えて現代科学が学ばれている。法王は、「チベット仏教に関心を持っている西洋の科学者は、ユダヤ教徒、キリスト教徒、無神論者のいずれかですが、日本の皆さんの背景には、論理と検討に重きを置くナーランダー僧院の教えがあります。論理的検証によって究極の真理を探求するナーランダー僧院の教えは、世俗的な対話を行なう上で大いに役立つのではないでしょうか」と語られた。
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ダライ・ラマ法王が日本人僧侶と会合を行なわれた会場の様子。2010年6月20日、長野(撮影:テンジン・チュンジョル、法王庁) |
会合に参加した善光寺のある僧侶は、「ダライ・ラマ法王と日本の僧侶が仏教について意見を交わすという一生に一度あるかないかのすばらしい機会をいただいた。日本の僧侶がダライ・ラマ法王から直接教えを受ける貴重な機会となった」と語った。
この会合は、全日本仏教会、長野県仏教会、長野市仏教会、全国善光寺会が主催した。長野の善光寺を本山とする善光寺会には、日本国内に約200寺の末寺がある。