インド、ヒマーチャルプラデーシュ州 ダラムサラ(プルブ・ティンレー、Phayul通信)
チベットの精神的最高指導者であるダライ・ラマ法王は、今日から一週間にわたる日本訪問を開始された。11月7日までのご滞在中、精神性についての講演をされる予定である。
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成田国際空港に到着されたダライ・ラマ法王。法王は8日間の日程で一連の一般講演をされる予定である。左側はダライ・ラマ法王日本代表部事務所のラクパ・ツォコ代表。2008年10月31日、千葉県(撮影:AP通信) |
今回の来日は、法王がニューデリーで胆石除去手術を受けられたあと、医師団から活動再開の許可が出てから初めての外国訪問である。法王はご健康上の配慮から、過去数ヶ月間に予定されていたヨーロッパ、メキシコ、ドミニカ共和国への訪問をキャンセルされている。
AFP通信によれば、法王は成田空港で数十名の亡命チベット人、日本人有志、仏教の僧侶たちから歓迎の出迎えを受けて、笑顔で手を振られた。
ご到着後、ノーベル平和賞受賞者である法王は、「私は再びこの国を訪れ、友人の皆様にお目にかかれることを大変嬉しく幸せに思っています」と述べられている。チベット人たちが「チベットに自由を!」と声をあげる中、50人程の私服警官が法王に付き添って待機していた車まで護衛した。
日本ご滞在中、法王は日本の仏教団体とチベット支援者たちによって企画された講演をされ、子どもたちの学校や仏教関係者たちを訪問される予定である。
11月3日には、東京の日本外国人記者クラブで講演をされることになっている。その後法王は福岡市へ移動され、11月4日、北九州メディアドームにおいて「慈悲のこころ―幸福な人生への鍵」という主題で講演をされる。11月6日には東京で、「よみがえれ、日本の美しさ―心の本質は光」と題する講演の予定である。
前回法王は、昨年11月に来日されている。今年3月に祖国チベットで発生した騒乱に対する中国の対応について、世界中で抗議が湧き起こっていた最中、4月初めに法王はアメリカ合衆国に向かわれる途中トランジットで日本に立ち寄られ、保守的立場にある安部晋三元首相の明恵夫人と会談されている。
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成田空港に到着し、警護隊に囲まれて支援者から歓迎を受けるチベットの精神的指導者ダライ・ラマ法王。今月外科手術をされた法王は一週間の滞在予定で来日された。2008年10月31日、千葉県、(撮影:AFP通信、Tsuno Yoshikazu) |
法王は頻繁に来日されており、日本には活発な支持者たちもいる。しかし、多くの西欧諸国と異なり、日本は中国と緊張関係にあるため、公の場で日本の政府高官が法王と親密な接触を持つことを常に控えており、今回の訪日でも政府高官が法王と面会する予定はない。
法王は、日本から戻られたあと、11月の第二週にインド国内のプネー、メールート、ニューデリーの各都市を訪問され、法話をされる予定である。
亡命先の居住地である北インドのダラムサラから、法王は広く世界中を訪問されて、人間価値を促進し、仏教の教えを説き、チベット人の人権を主張して、チベットがより広範囲の自由を得るための闘争に尽力されている。世界の指導者たちとも頻繁に会見され、チベット問題を提示されている。
北京の中国共産党本部は、法王が中国からチベットを分離させようとしていると非難しており、1949年中国政府は、大多数が仏教徒であるヒマラヤ地方の国を占領するために軍隊を派遣し、法王の訪問を認める国々に対しては常に抗議し続けてきた。
法王は、中華人民共和国という枠内におけるチベット人の“本当の意味”での自治を要求しているだけであると述べられており、暴力を用いることには反対されている。
しかしながら、先週末、法王の特使たちと中国政府当局の役人たちとの間で進行中の話し合いを目前に、法王は、チベット問題をめぐる中国共産党本部との交渉において「信頼と信用」を失いつつある、と述べられた。法王の掲げられた「中道のアプローチ」という政策に対して、中国共産党本部から肯定的な返答が一切ない中で、法王はチベット亡命政権に、一般のチベット人たちとの協議の上で、対話のプロセスについて将来の方針を決定するよう求める以外に選択の余地はない、ということを述べられた。
「もし中国指導者たちが誠実に対話に臨むなら、私は再びこの責務を負う立場となるでしょう。その時には、私は真心を込めて対話に臨みます。」 10月25日、ダラムサラの大きな行事で法王はこのように述べられた。 |