|
世田谷学園で講演をされたダライ・ラマ法王と世田谷学園の職員たち。
2007年11月22日、東京、世田谷学園(撮影:テンジン・ダッセル、Phayul) |
東京(Phayul)
今日ダライ・ラマ法王は、東京都世田谷区にある世田谷学園において、在校の1400人の中学生、高校生に向けて「21世紀をになう若者たちへのメッセージ」という主題で講演を行なわれた。
その中で法王は、20世紀は甚大な破壊、人々の多大な苦しみ、かつてない程深刻な環境破壊の時代であったと述べられ、21世紀は「対話と和解の世紀」にしなくてはならない、と日本の若者たちに向けて語られた。
「21世紀はまだ始まったばかりで、過去の過ちの傷跡はいまだに生々しく残っています」と述べながらも、新しい世代の若者たちには、21世紀をより平和な世界にすることのできる可能性があるという希望を示された。さらに、ノーベル平和賞受賞者である法王は、テロリズムや急速な地球温暖化を今日の世界が直面している主な懸念事項として挙げ、こうした問題を正すために人間のすぐれた知性を活用するべきだと諭された。
|
2007年11月22日、東京、世田谷学園
(撮影:テンジン・ダッセル、Phayul)
|
「基本的に、私たちが直面している問題の多くは、私たち人間が作り出したものです。ですから、人間にはこうした問題を解決する能力も備わっているはずなのです。私たちには、自らの過去の過ちを分析し、理解することのできる十分な知性が具わっているからです」と法王は述べられた。
また、法王は会場に満席の生徒たちに、「若い学生の皆さんに会えて私はとても幸せです。なぜなら、あなた方こそ、この新しい世紀を作り上げていく人たちだからです。我々は前世紀の人間ですが、あなた方には今からやってくるより平和でよりよい世界を構築していく責任があります」と語られた。
さらに、人間が作り出した問題を解決するために暴力を用いることについて、「その目的は正当化されるでしょう。しかし、暴力を用いた解決策は思わぬ方向に進んでしまい、いっそうの苦しみをもたらすことになるでしょう。ですから、暴力によって問題を解決しようとすることは間違っているのです」と諭された。さらに、「そこで、私たちはもっと現実的な方法をとらなくてはなりません。様々な問題、対立、そして異なる見解や意見は常に存在しています。そこで、和解や対話といった気持ちを持って対処するという態度こそ、現実的な方法だと言えるのです」と法王は述べられた。
|
護国寺をあとにされるダライ・ラマ法王。2007年11月22日、東京、護国寺(撮影:テンジン・ダッセル、Phayul) |
この後法王は、東京都文京区にある真言宗大本山「護国寺」を訪問され、岡本永司貫首より心のこもった歓待を受けられて、しばらく護国寺の僧侶たちと歓談されたあと、隣接する日本大学豊山高等学校に向かわれた。そこでは約1,300人の学生たちに向けて、「有意義な人生と教育」と題する講演をされた。
法王は学生たちに向かって、次のように語られた。
「日本には最新の科学技術や、現代の知識と教養を得ることのできる近代教育があるだけでなく、日本古来の神道や仏教の伝統など豊かな精神文化が生きています。そして、その近代性と伝統のすばらしい融合があります。そこで、皆さんに是非していただきたいのは、近代教育を通して技術や知識を得るだけではなく、それと一緒に、他者に対するあたたかい思いやりの心を忘れないようにするということです。他の人たちに対するやさしさと思いやりの心があってはじめて、技術や知識を正しいよい目的のために活かすことができるからです。それだけでなく、やさしさと思いやりを持つことが、あなた自身の人生をより幸福に、平和に導いてくれるのです。」
|
ダライ・ラマ法王歓迎のためにご到着を待つ日本大学豊山高等学校の学生たち。
2007年11月22日、東京、護国寺
(撮影:テンジン・ダッセル、Phayul) |
「科学技術や、人間の限りない知性と能力は大変すばらしいものです。しかし、これらのすぐれた資質が、怒りや憎しみなどの破壊的な感情によって使われてしまうと、人間社会に多くの破壊をもたらすことになってしまいます。それが、20世紀に起きた多くの戦争と流血沙汰であり、その結果、私たちにはかり知れない苦しみをもたらすことになってしまいました。誰もが望んでいる世界平和は、一人ひとりが自分の心に平和を築くことによって達成されます。そしてそれは、心の鎧をはずすことからはじまります。他の人たちとの間にある距離感をなくし、他者への思いやりの心を育んでいけば、自分の心は自然に平穏なものになるのです。そして、あなたの行動は常に前向きで建設的なものになり、自分に自信を持つことができるようになります。思いやりを持ったひとりのよき人間として、正直に生きていくならば、あなたの人生を有意義に過ごすことができるのです。」
「科学技術や、人間の限りない知性と能力は大変すばらしいものです。しかし、これらのすぐれた資質が、怒りや憎しみなどの破壊的な感情によって使われてしまうと、人間社会に多くの破壊をもたらすことになってしまいます。それが、20世紀に起きた多くの戦争と流血沙汰であり、その結果、私たちにはかり知れない苦しみをもたらすことになってしまいました。誰もが望んでいる世界平和は、一人ひとりが自分の心に平和を築くことによって達成されます。そしてそれは、心の鎧をはずすことからはじまります。他の人たちとの間にある距離感をなくし、他者への思いやりの心を育んでいけば、自分の心は自然に平穏なものになるのです。そして、あなたの行動は常に前向きで建設的なものになり、自分に自信を持つことができるようになります。思いやりを持ったひとりのよき人間として、正直に生きていくならば、あなたの人生を有意義に過ごすことができるのです。」
法王は、慌ただしい日々の中で多くのストレスを抱える日本人のために、精神の安らぎを与えてくださった。
9日間に及ぶ日本ご訪問の旅を終えて、法王は明日亡命先のインドに帰国される。 |