ダライ・ラマ法王14世日本公式サイト https://www.dalailamajapanese.com/ en-us 日本被団協のノーベル平和賞受賞を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20241012 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20241012 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、今年のノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の代表委員である田中熙巳氏、田中重光氏、箕牧智之氏宛てに書簡を送り、全会員に向けて次のような祝福の言葉を伝えられた。

広島平和公園で仲間のノーベル平和賞受賞者とともに追悼の祈りを捧げられるダライ・ラマ法王。2010年11月14日。日本、広島(撮影:薄井大還)

「皆さんの中には、私が来日中にお目にかかる機会があった方々もいらっしゃいます。皆さんの取り組みに、私は深く感謝しています」

「核兵器のない世界を実現するために努力し、核兵器が二度と使われてはならないことを証言によって示してきたとして、日本被団協に2024年のノーベル平和賞を授与することを決定したノルウェーの選考委員会に、私は拍手を送りたいと思います」

「広島と長崎は私自身も訪れており、犠牲者の方々、とりわけ被爆者の方々が経験された計り知れない苦しみは多少なりとも理解できます。核爆弾の恐怖を体験された被爆者であるからこそ、日本被団協を立ち上げた方々は、この危険な兵器を廃絶する必要性を力強く訴えることができたのだと思います」

「私は、核兵器の全廃と世界全体の非武装化を求める活動家の一人として、この受賞が国連とその加盟国をはじめとする私たち皆を鼓舞し、核兵器の脅威を取り除き、完全な核軍縮のために真に一致団結した取り組みに向かわせるものであると固く信じています」

法王は最後に、次のように述べられた。
「私たち人間は、多くの問題をこの世に生み出してきました。私たち皆が幸せになりたい、苦しみを遠ざけたい、と望んでいるように、怒りや憎しみといった強い否定的な感情を克服して、人類はひとつの人間家族であることを認識する必要があります。ただ祈るだけでは平和は実現しません。大切なのは行動です」

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『修行道の三要素』の法話 https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240930 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240930 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今朝、ダライ・ラマ法王はツクラカンの回廊を巡って、1,300人の台湾からの参加者と、南インドの僧院から休暇で来ている多くの僧侶たちを含む、およそ7,000人の聴衆に向けた法話会の会場へと向かわれた。途中で法王は、人々に微笑みかけ、時折、目に留まった年配の男性や女性に手を差し出された。

ツクラカンで行われた法話会で、法座に着く前にガンデン僧院の座主を歓迎されるダライ・ラマ法王。2024年9月30日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

法話会場に到着すると、法王は、ガンデン僧院の座主に温かい歓迎の挨拶をされてから法座に着いた。中国語で『般若心経』が唱えられ、続いて法王にマンダラが捧げられた。

法王は、次のように話を始められた。
「今日、私たちは精神的な話をする予定です。ここに来る途中、皆さんがツォンカパ大師に捧げる祈願文である『ミク・ツェマ』を唱えているのを聞きながら、私はツォンカパ大師の生誕地の近くに生まれただけでなく、大師の哲学的な見解にも近い共感を抱いていることを思い起こしました。しかし、仏陀の法の存続は特定の場所に関係しているわけではなく、私たちは仏法を護持するために、亡命先の地において最善を尽くしてきました。ツォンカパ大師の教えは世界中に広まっており、私はその教えを明確に説くために努力してきました」

「チベットにいたとき、そして雪の国チベットを離れてからも、ツォンカパ大師の全18巻の著作集を読むことは、私の最も重要な修行のひとつになっています。私はこの全集に特別な敬意を抱いており、親密なつながりを感じています。今日は、ツォンカパ大師の『修行道の三要素』の口頭伝授を行います」

「仏法はチベット人の精神性の核であり、私たちはそれを生きたものとして保ち続け、勉学と修行を通してしっかりと護ってきました。その結果、仏法に関心を持つ多くの人々が、私たちの伝統に注目しています」

お茶とパンが配られ、法王の名前を賛える以下の偈頌の朗読によって、お茶とパンが加持された。


  • 至高で崇高な、蓮華の保持者(パドマパーニ)であるあなたに祈願します
  • あなたは、言葉を自在に操る、金剛石のような穏やかな光です
  • あなたの卓越した洞察の水瓶は、高貴な智慧の甘露で満たされています
  • そしてあなたは、仏法の護持者たちの、広大で遊戯なる大海を美しく荘厳する飾りです


法話の休憩時間に、聴衆にお茶とパンが配られた。2024年9月30日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

そして法王は、次のように話を続けられた。
「釈尊の時代には、仏法は北から北へ広まるという予言がありました。釈尊は悟りを開かれた後、四聖諦(四つの聖なる真理)の説明から説法を始められましたが、やがて釈尊の説かれたことは、インドの北に位置するチベット全土に広がり、チベットの北にあるモンゴルにも広がっていきました。チベットにいるチベット人と亡命したチベット人は、戒学、定学、慧学という三学を学んで実践することで、その伝統を守り続けてきました。これらの三学は根拠と論理に根ざしているため、世界中で仏教に対する関心が高まっています」

「修行道の三要素とは、出離の心、すなわち輪廻から自由になろうとする決意と、菩提心、そして正しい見解の三つですが、出離の心は直接悟りにつながるものではなく、他の二つの要素によって補強される必要があります」

「シャーンタラクシタ(寂護)は、チベットの王たちによってチベットに招聘されたインドの導師のひとりですが、彼はチベットにおいて仏教を確立されました。私たちは説かれた教えを勉強し、それについて瞑想し、“三学” と “修行道の三要素” を実践してきました」

「出離の心が強くなれば、今世や来世の輪廻の快楽や魅力に惹きつけられることはなくなり、そこから目を背けるようになるでしょう。しかし、菩提心と空性の正しい見解がなければ、一切智の境地を得ることはできません」

「私は、一日が始まると同時に菩提心と空性の理解を高めています。悲しい知らせを耳にしたとき、この二つは私が出離の心を高めるための助力となっています。心と感情の働きを理解し、いかにして事物が縁起によって生じるかを見ることで、苦しみは無知に根ざしていることが理解できます」

ツクラカンで行われた法話会で、聴衆に説法をされるダライ・ラマ法王。2024年9月30日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「修行道の三要素は、自分の心の中で統合されるべきものです。それは私たちの内なる体験の一部にならなければなりません」

法王は、以下の点に留意しながらテキストを快活に読み進められた。
純粋な出離の心がなければ、輪廻の海で快楽の果を求める心を鎮める手段はない。私たちは今世と来世への執着を減らす必要があり、輪廻の栄華を願う心などを一瞬たりとも起こすことなく、昼夜たゆまず解脱を求める心を持てたなら、その時こそ出離の心が生じるのだ。

しかし、出離の心があっても、純粋な発菩提心に伴われていなければ、無上の悟りという卓越した幸せの因とはならないので、菩薩たちは最もすぐれた菩提心を生起する。菩薩たちは、私たちの母なる有情が、〔欲望、執着、邪見、無知など煩悩の〕四つの激流に押し流されて、絶ちがたい業にきつく束縛され、我執という鉄の檻に閉じ込められて、無明の厚い暗闇に覆い尽くされていること、そして限りない輪廻の生を繰り返し、三つの苦しみに絶え間なく苛まれていることを省察し、このように考えることで菩提心を起こす。

このテキストは、出離の心と菩提心を育んでも、空性を理解する智慧がなければ輪廻の源を絶ち切ることはできないことに触れている。それゆえ、私たちは縁起を正しく理解するための努力をしなければならない。

ツォンカパ大師は、あらわれとは誤りなく縁起するものであり、空とは〔自性を〕受け入れないことであるが、この二つの理解が別々にあらわれている限りは、まだ仏陀の真意を正しく理解しておらず、この二つの理解がいつの日か交互ではなく、同時にあらわれた時こそ、空の見解の分析は完全なものとなると述べられている。ツォンカパ大師はさらに、あらわれによって実在論を取り除き、空によって虚無論を取り除き、空が因や果としてあらわれるさまを知ったなら、もはや極端論にとらわれることはなくなるだろう、と明かされている。

法話中にメモを取る台湾からの参加者。2024年9月30日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

ツォンカパ大師は、このテキストを授けた弟子のガワン・タクパに対して、修行道の三要素の真髄を正しく理解し、静謐の地にとどまり、精進の力を起こして、めざす境地を速やかに成就すべきであると助言されている。

ここで法王は、菩薩戒を授与すると宣言された。法王は、シャーンティデーヴァ(寂天)の『入菩薩行論』のような、菩提心とそのよき徳性について書かれた著作を読むと、心が動かされ、示唆を与えられる、と述べ、このようなテキストは、私たちが、虚空にくまなく存在する一切有情のために働くことを勇気づけてくれる、と話された。

法王は「最初に悟りへの道を歩み始めたとき、釈尊はこのような菩提心を起こされたのですから、私たちもそれを模倣すべきです」と述べられ、菩薩戒の授与に移った。

法王は、三宝への帰依と発菩提心の偈頌を読み上げ、聴衆に向かって「菩提心を起こし、自ら菩薩戒を授かるように」と促された。次に法王は『入菩薩行論』から、菩薩戒の受戒を祝う以下の偈頌を繰り返し唱えられた。


  • 今、〔菩薩戒を授かり〕私の人生は実りあるものとなりました。人間の恵まれた生を得て、今日、仏陀の系譜を持つ者として生まれ、今こそ仏陀の息子となることができますように。(第3章26偈)

  • 今、私は何としてでも、この系譜にふさわしい〔四摂事、六波羅蜜など菩薩の〕善き行ないを始めて、過失のない清らかなこの系譜を汚すことのないようにいたします。(同27偈)


そして法王は次のように考察された。
「世界中の人々が武器や武力の行使に取りつかれているようです。仏法の実践者として、私たちはこれを回避しなければなりません。武力を行使して何も良いことは生まれません。多くの人々を殺すことは、さらなる苦しみをもたらすだけです。執着、怒り、憎しみを捨て、一切有情を利益するために働くべきです。自分自身の中に菩提心を育てることこそ、私たちの主要な目的であるべきなのです」

ツクラカンの中庭に座って法話会に参加する聴衆。2024年9月30日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

続いて、聴衆からいくつかの質問が寄せられ、法王は、精神の師から離れないための主な要因は何かと尋ねられた。これに対して法王は、授かった教えを心に留め、それを実践することで、師との強い結びつきが生まれると回答された。

別の質問者は、自他を入れ替えるといった修行を地道に積み重ねることが、本物の体験につながるのかどうかを尋ね、法王は「そのような修行に心を慣らしていけば、やがて体験が生まれるでしょう。そして菩提心が、より身近なものになってくるでしょう」と答え、四無量心についての以下の偈頌を繰り返し唱えられた。


  • 一切有情が幸福と幸福の因とともにありますように
  • 一切有情が苦しみと苦しみの因から解放されますように
  • 一切有情が他者の幸福を喜べますように
  • 一切有情が貪欲と瞋恚から離れ、平和に暮らせますように


「菩提心に慣れ親しんでいれば、やがて菩提心に満たされるときがきます。私は日々菩提心と空性の見解を培い、それが自分の中に確かな体験を生み出していると感じています」

法話会が終了し、会場を出る前に、聴衆に手を振られるダライ・ラマ法王。2024年9月30日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

次に、初心者が菩提心を衰えさせないためにどのように行動すべきかと問われ、法王は「修行を根気よく続ければ、菩提心が衰えることはありません」と簡潔に助言された。最後に法王は、将来において善趣に生まれる主な因は、菩提心を高めることと、空性の理解を培うことであると宣言された。

台湾の弟子たちは、法王のアドバイスに拍手喝采して喜びを表した。会場を出た法王はエレベーターまでしっかりと歩き、人々に微笑みかけながら中庭まで進むと、ゴルフカートで公邸に戻って行かれた。

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日本の新内閣総理大臣を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20241002 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20241002 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、新たに日本の内閣総理大臣に選出された石破茂氏へ書簡を送り、次のような祝福の言葉を伝えられた。

「私は長年にわたり、日本を度々訪問する機会に恵まれました。思いやりの心といった人間としての基本的な価値観の育成を促す私の努力や、宗教観の調和を促進し、核兵器を含むあらゆる武器のない平和な世界を実現するための私の取り組みに対して、日本のさまざまな立場の人々が示してくださった関心と熱意に深く感謝しています」

「私は、日本の人々が、日本を世界で最も近代的な国のひとつに変革しようと努力してきたことを称賛しています。日本はまた、世界平和の樹立に向けて、たびたび先導的な役割を果たしてきました。貴国の精神的な伝統は平和を大変重要視しており、私は貴方が在任中に、その伝統をさらに発展させることができるよう願っています。特に、世界各地で不確実性が高まり、大きな混乱が生じているこの時代には、真摯で協調的な努力によって、対話と外交を通じて問題を解決することが極めて重要です」

法王は書簡の終わりに、石破氏が日本人の希望と願いをかなえ、より平和で思いやりのある世界の実現に向けた石破氏の努力が成功するよう祈りを捧げられた。

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カーター元米大統領の100歳の誕生日を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20241002-1 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20241002-1 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、米国のジミー・カーター元大統領に書簡を送り、歴代の大統領で初めて100歳の誕生日を迎えたことを「感動的な功績」として祝された。書簡の中で、法王は次のように述べられた。

ジミー・カーター元米大統領とダライ・ラマ法王。2002年。

「ご家族と共にお祝いしておられることでしょう」

「貴殿は実に有意義な人生を歩んでこられ、ご存知のように、私は長年にわたり貴殿のご活動を讃えてきました。これほど長きにわたるご活躍は、実に素晴らしいことです。他者を利することを常に考えておられる貴殿の姿は、私たち皆に勇気を与えてくださいます。私は心から感謝しています」

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ダライ・ラマ法王の長寿祈願法要 https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240918 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240918 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今朝、ダライ・ラマ法王が、法王公邸からツクラカンへと続く門に姿を見せられると、今日の法要を主催する団体の代表者たちが前に進み出て、法王を出迎え、敬意を表した。チベット女性協会(TWA:Tibetan Women's Association)、中央チベット人学校(CST:Central Shool for Tibetans)の元生徒、ダルハウジー中央チベット人学校の元生徒、ラサとその周辺地区の出身者たちが今日の法要の主催者である。チベットホルンを演奏する僧侶に先導され、代表者たちは法王を会場までエスコートした。

長寿祈願法要に参加される法王がツクラカンの中庭に到着され、舞踊を披露するチベット人ダンサーたち。2024年9月18日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

ツクラカンの敷地内の柱や梁には色とりどりの布が巻かれ、マリーゴールドの花輪が吊るされていた。法王公邸の門からツクラカンの扉に至る道には赤い絨毯が敷かれ、その上にマリーゴールドの花びらが散りばめられていた。

ゴルフカートに乗られた法王が通り抜ける間、中庭の通路の両側では、華やかな衣装をまとった女性たちが歌唱を披露した。ツクラカンの前では、タシ・ショルパ(吉祥を表す伝統舞踊)とト・ガーの踊り手たちが、法王を歓迎する、活気溢れる踊りを披露した。伝統的な歓迎であるチェマル・チャンプー(ツァンパ、バター、大麦酒の供物)が捧げられると、法王は数個の穀粒を空中に投げ、ツァンパをひとつまみ取り、チャン(酒)とミルクの入ったコップに指を浸された。

法王はエレベーターまでしっかりと歩かれ、それからツクラカンの回廊を巡って会場の入口に向かわれた。法王は、途中で何度も立ち止まっては、人々に笑顔を向けられ、差し出された数珠を加持された。そして、いつもそうされるように、下の道路に集まった人々が見下ろせる場所まで来ると、彼らに向かって微笑みながら手を振られた。

長寿祈願法要の会場に向かう途中で、人々に笑顔を向けられるダライ・ラマ法王。2024年9月18日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

ツクラカン内に到着された法王は、マリーゴールドの花輪で飾られた法座に着かれた。法王は(ゲルク派の)黄色い儀式用の帽子を被られ、今日の法要を先導するサムドン・リンポチェの歓迎を受けられた。サムドン・リンポチェは、右隣に座ったナムギャル僧院の導師であるロブサン・ダルゲイ師と、左隣に座したバリ・リンポチェの補佐を受け、儀軌の進行を担う。

ここで、お茶とパン、そして、デシと呼ばれる甘く味付けしたお祝いのご飯が配られた。

今日の法要は、ダライ・ラマ5世が、無量寿仏の姿をしたグル・パドマサンバヴァ(グル・リンポチェ)のビジョンをご覧になった後に著された『無量寿仏の清らかな心髄を引き出すもの』に関するものであった。この儀軌は、グル・リンポチェの八変化相とカンドー・イェシェ・ツォギャルを勧請するものであり、法王は儀軌の要所要所で(ニンマ派の)赤い儀式用の帽子を被られた。

長寿祈願法要で、ダライ・ラマ法王に供物を捧げるサムドン・リンポチェ。2024年9月18日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王が1970年代に著された、十二尊のテンマを含む、チベットの護法尊を勧請する祈願文が唱えられた。サムドン・リンポチェとチベット女性協会の代表が法王にマンダラを捧げ、法王に末永くこの世に留まってくださるように請願した。続いて、長寿の甘露が入った水瓶、長寿の酒、長寿の丸薬、絹の幡で飾られた長寿の矢、息災・増益・敬愛・降伏の4つのすぐれた行いを象徴する、四つのトルマ(ツァンパで作った儀式用のケーキ)、そして、八つの吉祥文様、政治的な七つの王者の宝、吉祥なる八つのものが乗ったそれぞれのお盆が法王に捧げられた。

その間に、捧げ物を持った人々の長い行列が、途切れなくツクラカンを巡った。

長寿祈願法要で、法王の前を、供物を捧げ持って通り過ぎるチベット女性協会のメンバー。2024年9月18日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

法王の家庭教師であったリン・リンポチェとティジャン・リンポチェのお二人が作られた、法王の長寿祈願文が詠唱された。

ここで、チベットの在家信者たちが、自分たちが祖先の王たちの時代から続く血統に属しているという歌詞の歌を、楽器の伴奏に合わせて歌い始めた。歌詞の内容は以下のように続く。“善いカルマと過去に行った祈願により、私たちは雪の国チベットに生まれた。チベットの人々は観音菩薩と特別なつながりがあり、チベット人は観音菩薩に教化されるべき存在である。同じく雪の国にお生まれになった法王さまは、世界の平和の柱となられた”

長寿祈願法要で、ダライ・ラマ法王のために作られた歌を歌うチベット人の在家信者たち。2024年9月18日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

“私たちは、ダライ・ラマ法王ギャルワ・テンジン・ギャツォに感謝いたします。法王さまのお身体が堅固で、長寿であられますように。あなたはチベット人の保護者です”

歌が終わると、法王は参列者に向けて次のように話された。
「今日、皆さんはこのような祈願を繰り返し述べて、私が長寿であるようにと請願しました。皆さんは私を、チベットの(ウ・ツァン、アムド、カムという)三つの地域の人々を助けることができる人間であると言います。私たちは、過去に積んだ功徳と祈願の結果として、ここに集まることができましたが、困難な時代に生まれてきています」

「私はアムド地方に生まれ、幼名をラモ・ドゥンドゥプと名付けられましたが、後に、仏法を説き、科学者たちと実りある議論ができるような人間になりました。私はチベットの大義と仏法の保存に貢献できたのではないかと思っています。私はまた、仏陀の教えへの関心が高まっている中国の人々ともカルマのつながりがあり、彼らの利益になるように祈願しています」

長寿祈願法要に参列されるダライ・ラマ法王。2024年9月18日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「私は仏陀の祈願を成就するために努力をし続けます。チベットの人々の精神が衰えることは今までありませんでしたが、どうか、これからもその精神を保ち続けてください。私たちチベットの三つの地域の人々は、ナーランダー僧院から受け継いだ、この素晴らしい伝統を守り続けています。皆さんのしてきた様々な貢献に感謝します」

その後、パドマサンバヴァ(グル・リンポチェ)への祈願文が唱えられた。今日の法要の施主の代表が法座に近づき、法王に敬意を表した。法王は一人一人に儀式用の白い絹のスカーフ(カタ)と守護の赤い紐を授与された。

グル・リンポチェへの祈願がなされ、法王が長寿の請願を受け入れてくださったことへの感謝のマンダラが捧げられた。

そして法要は、『法王の長寿を祈願する一偈の祈願文』『無量寿仏への礼讚』『仏法の繁栄を祈願する超宗派の祈り』『吉祥祈願文』『真実の言葉』の詠唱で締めくくられた。法王はツクラカンを出られ、両側に並んだ参列者たちに笑顔を向けながら、エレベーターまで歩かれた。中庭でゴルフカートに乗り込まれた法王は、目が合った人々に笑顔で手を振りながら、公邸へと戻って行かれた。

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東南アジアグループへの仏教概論の法話 https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240912 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240912 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、法王公邸からツクラカンのエレベーター近くまでゴルフカートで移動し、エレベーターから法話会場の堂内まで歩かれた。法王は法王の教えを聞くために集まった人々を、満面の笑みを湛えてご覧になった。およそ5,000人の聴衆のうち、700人は、シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム、バングラデシュ、ラオスという、東南アジア諸国からの参加者である。

ツクラカンで行われた、東南アジアの仏教徒のリクエストによる法話会のため、公邸からゴルフカートで移動されるダライ・ラマ法王。2024年9月12日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王が法座に着かれるとすぐに、上座部(テーラワーダ)の僧侶たちのグループが、パーリ語で三帰依文を詠唱した。続いてチベット語による『般若心経』が、そして『現観荘厳論』と『根本中論頌』から、それぞれの仏陀への帰敬偈が唱えられた。そこでお茶とパンが配られた。

法王は、次のように話を始められた。
「亡命して以来、私はここダラムサラに住んでいます。今日、ここに集まっている人々の中には、仏陀の教えを長年信仰している人もいれば、仏教とは歴史的なつながりを持たない人もいます。仏法に関心を持つことを強要することはできません。それは、自分で考えて、自発的に興味を抱くようになるものなのです。例えば、今日の中国では、仏陀の教えが心の平安をもたらすという理由で、仏法の真価を理解する人が増えています。これは信心や、繰り返し祈願文を唱えることで生じたものではなく、分析的思考によって得られた結果なのです」

「私の友人には科学者が沢山いますが、彼らは仏教の教えが論理と根拠に基づいていることを称賛しています。彼らは、心と感情の働きや、心の平安を得るための方法についての、仏教の広範な説明に魅了されているのです。歴史的に仏教があまり知られていなかった地域では、儀式や祈りよりも、心の平安を得るために心を用いることに関心が高まっています」

「ナーランダー僧院の伝統は、心と感情について考察し、何が私たちの心の平和をかき乱すのかを明らかにしました。そして、破壊的な感情に対抗する方法を見つけ出しました。世界のすべての宗教的伝統は、人類にとって助けとなる助言を伝えていますが、仏教では、そこに、私たちの心を変容させる心理学的洞察も含まれています。要点は、私たちの心と感情がどのように働くかを理解し、まさにこの人生において、怒りや嫉妬といった破壊的な感情を減らすことにあります」

「仏陀の教えの目的は、否定的な心の状態を減らすことにあり、信心することではなく、良き変化をもたらすことについてのものです。仏陀はブッダガヤで悟りを開き、その後、四聖諦(四つの聖なる真理)を説かれましたが、四聖諦は仏陀の教えの全体構造を示しています。第二法輪において仏陀は、完成された智慧を意味する般若波羅蜜を説かれ、論理に照らして物事を見るように示唆されました。仏陀の教えは根拠と論理に基づいているので、全世界に利益をもたらす可能性があると言えます」

東南アジアの仏教徒のリクエストによる法話会での、堂内の情景。2024年9月12日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「朝目覚めた瞬間に、私は菩提心と空性について考えます。インドの導師たちはそれらについての著作を著されました。そしてまた、多くのインドの導師たちがチベットを訪れて教えを説かれ、多くのチベット人がインドに教えを学びに行きました。その結果、私たちは仏陀の教えのすべてを受け継ぎ、それを保存し、今、世界と分かち合うことができるのです。そして、すでに申し上げたように、仏陀の教えが論理と根拠に根ざしているからこそ、私たちは科学者たちと議論を交わすことができるのです」

「仏陀は初転法輪において、四つの聖なる真理(四聖諦)、すなわち “苦しみが存在するという真理”(苦諦)・“苦しみには因が存在するという真理”(集諦)・“苦しみの止滅の境地が存在するという真理”(滅諦)・“苦しみの止滅に至る実践道が存在するという真理” を明らかにされました。四聖諦には、心の平安を得るための包括的な教えが含まれています。私は、仏陀の教えが私にとって有益であることを知った、ごく普通の仏陀の弟子です。ですから、私の仏法の兄弟姉妹の皆さんには、仏法には単なる儀式以上のものがあることを心に留めておいていただきたいと思います。それは、他者への真の思いやりを育むことによって、心の平和をもたらす方法を含んでいるのです」

続いて法王は、聴衆からの質問を受けられた。最初の質問は仏教の本質に関するものであり、法王は質問者に、仏教とは善良な心を持ち、他者に危害を加えるのではなく、他者を助けることであると語られた。次に法王は、ストレスの多い世の中で、どのようにして慈悲と共感を育むかを尋ねられた。法王は、仏陀の教えを理解すれば、苦難に直面したとき、自分の否定的な感情に対抗する方策を用いることができるようになると答えられた。そして、慈しみと哀れみの心を育むことで、心を落ち着かせることができることは明らかであると述べられた。

チベット仏教における空性の重要性についての質問がなされ、法王は、空性が重要視される理由は、仏教の修行には自分の心を訓練し、制御することが含まれるからであると明言された。法王は、そのためには2つの方法があり、ひとつは信仰に頼る方法、もうひとつは智慧に頼る方法であると述べられた。

東南アジアの仏教徒のリクエストによる法話会で、ダライ・ラマ法王に質問をする聴衆。2024年9月12日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「通常、私たちは、敵対する相手を、敵自身の側から客観的に存在する人物であるとみなしています。私たちに害をなす人や事物は、見えている通りに存在しているのではなく、単に名前を付けられたことによってのみ存在しているということが分かったとき、私たちの怒りや敵意は軽減されます。事物は客観的に、独立して存在しているように見えますが、実際には人も事物もそのようには存在していないことを理解するならば、怒りや敵意を減らすことに本当に役立つのです」

「私は毎日、空性について瞑想していますので、このことについての個人的で明確な体験があり、それは私にとってとても役に立っています。事物を見て、それが自らの側から客観的に存在していると考えるとき、私たちは否定的な感情をかき立てられます。しかし、人や事物が見えている通りには存在しないことを理解すると、それらに対する否定的な反応を弱めることができるのです」

最後に法王は「法王さまは、人々に21世紀の仏教徒になることを勧めていらっしゃいますが、その意味するところを説明していただけませんか」と尋ねられた。法王は、私たちが学ぶことができることはたくさんあるが、最も重要なことは、くつろいだ心の状態を培うために使える方法であると述べられた。そして、菩提心と空性の理解は、心の混乱を取り除くために本当に役立つものであり、事物が実際にどのように存在しているかを理解し、真正な慈悲の心を養うことが、心の平安をもたらすことを説明された。

不利な状況であるとしても、私たちはそれを有利に変えることができるのだ。法王は、仏教とは単に三宝を信仰することではなく、根拠と論理に照らして事物を考察し、心の平和を生み出すことであり、それが世界の平和を生み出すことに貢献するのだと述べられ、次のように締めくくられた。
「これは科学的なアプローチを取るようなものであり、そのようにすることができれば、あなたは21世紀の仏教徒といえるでしょう」

法王は、観音菩薩の六字真言である “オーム・マニ・ぺーメ・フーム” の口頭伝授を行うと告げられた。法王は、チベットの(ウ・ツァン、アムド、カムという)3つの地域では、人々が子どもの頃からこの真言を唱えていること、そして、精神的に不安定になったときには、この真言を唱えれば心が落ち着くことに言及された。

法話会で、観音菩薩の六字真言である “オーム・マニ・ぺーメ・フーム” の口頭伝授をされるダライ・ラマ法王。2024年9月12日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王は、以下の観音菩薩への礼讚文を唱えた後で、繰り返し六字真言を唱えるように聴衆を導かれた。


  • 観音菩薩よ、あなたの千手は千の転輪王を象徴する
  • 千眼は賢劫の千仏を象徴する
  • 有情の気質に応じて様々な姿で顕現される
  • 観音菩薩に礼拝します


真言念誦は以下の廻向文で締めくくられた。


  • この真言を唱えた福徳によって
  • 私が観音菩薩の境地に達し
  • 他の人々を同じ境地に導けますように


堂内からエレベーターまで歩かれた法王は、その後ゴルフカートで公邸に向かった。途中で法王は、聴衆に視線を向け、笑顔で手を振られた。

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スイスとリヒテンシュタインのチベット人コミュニティによる長寿祈願法要 https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240825 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240825 スイス、チューリッヒ

ダライ・ラマ法王は今日、チューリッヒにある屋内競技場ハレンシュタディオンで1万5千人の聴衆が待つステージに歩いて登壇された。そして歓迎の踊りで法王を出迎えたチベット舞踊の踊り手たちにあいさつの仕草をされると、釈迦牟尼仏、四臂観音、白ターラー菩薩の大きな仏画(タンカ)が掲げられた法座に着かれた。

ハレンシュタディオンで行われた「ダライ・ラマ法王のための長寿祈願法要」で開会の辞を述べるチューリッヒのチベット事務所代表ティンレー・チョキ氏。2024年8月25日、スイス、チューリッヒ(写真:マニュエル・バウアー)

チベット人の司会者が、ジュネーブのチベット事務所のティンレー・チョキ代表を紹介した。同代表は、「ダライ・ラマ法王は世界平和のチャンピオンであり、神々や王を宝石にたとえるなら王冠です」と述べてスイスをはじめとするヨーロッパ諸国のチベット人を代表して法王を迎え、敬意を捧げた。

ティンレー代表は、世界中のチベット人が中国とチベットの対立が解決するよう法王の導きに従って全力で取り組んでいることを明言した。そして、法王が膝の人工関節手術に成功されて、アメリカからインドに戻られる途中でチューリッヒに立ち寄られたことで、皆で法王のご長寿を祈り、感謝を捧げることができる喜びを述べ、次のように祈りを捧げた。

「法王猊下がチベットに帰還され、ポタラ宮の獅子座からもう一度教えを説いてくださることができますように」

同代表は最後に、チベット人が本日のイベントを開催できるよう尽力したチューリッヒのさまざまな関係機関に感謝の意を表した。

続いて、慈悲の守護者であり化身である法王を称える歌と踊りがチベット人の踊り手たちから捧げられた。法座の足元に座していた上師方により、三宝帰依の偈頌と完成された智慧である般若波羅蜜を要約した偈頌が詠唱された。上師方はマンダラ供養を行い、法王の長寿を求める象徴的な儀式を始めた。

ハレンシュタディオンで行われた長寿祈願法要の始まりに、ダライ・ラマ法王を称える歌と踊りを捧げるチベット人の歌い手や踊り手たち。2024年8月25日、スイス・チューリッヒ(写真:マニュエル・バウアー)

法王のお二人の家庭教師リン・リンポチェとティジャン・リンポチェが書かれたダライ・ラマ法王への長寿祈願文が詠唱され、七つの王者の宝、八つの吉祥なるもの、八つの吉祥文様の象徴などが法王に献じられた。次に、ジャムヤン・ケンツェ・チューキ・ロドゥ師が書かれたダライ・ラマ法王の長寿祈願文が詠唱され、最後に「法王猊下がご長寿をまっとうされますように、そして悟りの御心を普く広められますように」と結ばれた。

そこで法王は、次のように聴衆に向けて語り始められた。
「本日は、スイスをはじめとするヨーロッパ諸国で暮らす方々が、強い信仰心と献身の気持ちからここに集まってくださいました。私たちチベット人には仏陀の教えが染み込んでいます。私たちは仏教に対する揺るぎない信仰心を持ち、子どもの頃から帰依の偈を唱え、菩提心を培い、観音菩薩の真言 “オーム・マニ・ペーメ・フーム” を唱えてきました」

「私は小さな子どもの頃から仏教の教えを学び、実践する機会があったことから、仏教の教えの土台は極めて科学的であることに気づきました。実際、最近では科学者たちが仏教の慈悲と非暴力の教えに関心を寄せています」

「優しさ、温かい心、思いやりを他の人々に示すことができるのは、私たちチベット人がこうした資質を価値あるものとして大切にしてきたからです。中国共産党による厳しい締め付けにより、私たちは大変な苦難を知りましたが、仏陀の教えに対する信仰心と帰依の心に妥協はありません」

ハレンシュタディオンに集まった人々に語られるダライ・ラマ法王。2024年8月25日、スイス、チューリッヒ(写真:マニュエル・バウアー)

「私は幼い時にクンブム僧院に連れて行かれ、若い僧侶たちが文殊菩薩の真言 “オーム・アラパツァナ・ディ” を唱えているのを目の当たりにしました。私は触発されて、即座に彼らを真似しました。私たちの文化はそのような習気(習慣性の力)を私たちに残しているのです」

「過去においては、チベットの外にいる人たちはチベット仏教のことをあまり知りませんでしたが、時が経つにつれ、多くの人たちがチベット仏教に関心を持つようになりました。とりわけ、心と感情の働きについての見解や、私たちの心に善き資質を培う方法についての教えに関心が高まっています。中国においてさえ、仏法に対する理解と信頼が深まっているのです」

「ソンツェン・ガンポ王とティソン・デツェン王の時代から、私たちは生活の一部として仏教に慣れ親しんできました。今日、私たちが手にしているこのような一点集中型の信仰は、思いやりある彼らの遺産の一部なのです。チベット人はどこにいても、強い倫理観と仏陀の教えに対する信仰心を持っています。自分のことを信心深いと考えていない人たちでさえ、チベット仏教には人類が直面している問題に対する多くの解決策があることを認めています」

「仏教は私たちの文化の主要部分なのですから、私たちはこれを存続させるために努力しなくてはいけません。倫理観のない宗教の実践は仮面を被っているようなものであると肝に銘じて倫理を守り、温かい心を培わなくてはなりません」

「一方で、温かい心を培うのは宗教の本質です。菩提心を培うには、すべての有情に幸福をもたらそうという意思が必要です。それゆえに他者の目標も自分の目標も達成することができるのです」

スイスとリヒテンシュタインのチベット人コミュニティから法王に捧げられた長寿祈願法要において、1万5千人の聴衆に向けてダライ・ラマ法王が語られるステージからの情景。2024年8月25日、スイス、チューリッヒ、ハレンシュタディオン(写真:マニュエル・バウアー)

「かつて私が北京にいたとき、毛沢東は私の科学的思考を褒めてくれましたが、同時に宗教は毒であるとも言いました。しかし、彼が今生きていたなら、仏陀の教えに従う価値をもっとよくわかってくださったのではないでしょうか」

法王は簡略的な発菩提心の儀式を執り行われる中で、すべての有情がかつては私たちの優しい母であったと考えてみるよう導かれた。その恩に報いるために、私たちは生きとし生けるすべてのものに利益と幸福をもたらすことを強く決意する。そして菩提心を生起したならば、生きとし生けるすべてのものを幸福の宴の客人としてお招きするのである。

「私たちはこの貴重な人間の生を得たのですから、人生を有意義に生きるために、優しさと善き心を培わなくてはなりません。敢えて述べるなら、皆さんが私を信頼してくださる究極の理由は、私が菩提心と空の見解について教えているからです。先ほども述べましたが、朝、私は目覚めるとすぐに菩提心について瞑想します。そして一切有情を客人としてお招きするのです」

「菩提心は、自他の目標を達成するための鍵です。同時に、怒りや慢心といった否定的な考えも鎮まります」

ハレンシュタディオンで行われた長寿祈願法要で、ダライ・ラマ法王の言葉に耳を傾けるチベット人コミュニティの人々。2024年8月25日、スイス、チューリッヒ(写真:マニュエル・バウアー)

「目の前の空間に仏陀と菩薩たちが集まっておられると観想してください。.....少し前のことですが、ブッダガヤの大きな寺院で行われた行事に出席して、目の前に釈尊がおられるのを観想していたときのことです。釈尊が私を呼び寄せて優しく語りかけくださり、私の頭を撫でてくださったのです。私が釈尊にお捧げできたのはチョコレートひとつだけでしたが、よろこんでおられるようでした......。では、私に続いて次の偈を3回唱えてください」


  • 私は三宝に帰依いたします
  • すべての罪をそれぞれ懺悔いたします
  • 有情のなした善行を随喜いたします
  • 仏陀の悟りを心に維持いたします

  • 仏陀・仏法・僧伽〔の三宝)に
  • 悟りに至るまで私は帰依いたします
  • 自他の利益をよく成就するために
  • 菩提心を生起いたします

  • 最勝なる菩提心を生起したならば
  • 一切有情を私の客人として
  • 最勝なる菩薩行を喜んで実践いたします
  • 一切有情を利益するために仏陀となることができますように


「今、ここで皆さんと共に喜びを讃えましょう」


  • 今、私の人生は実りあるものとなりました。人間の恵まれた生を得て今日、仏陀の系譜を持つ者として生まれ、今こそ仏陀の息子となることができました(『入菩薩行論』第3章26偈)

  • 今、私は何としてでもこの系譜にふさわしい〔四摂事、六波羅蜜など菩薩の〕行ないを始め、過失のない清らかなこの系譜を汚すことのないようにいたします(第27偈)


「六座グルヨーガの修法に記されている菩薩戒を自分自身でよく理解しておかなくてはなりません」

スイスとリヒテンシュタインのチベット人コミュニティよりダライ・ラマ法王に捧げられた長寿祈願法要が進行中のステージと客席の情景。2024年8月25日、スイス、チューリッヒ、ハレンシュタディオン(写真:マニュエル・バウアー)

「『入菩薩行論』には次のように述べられています。


  • 有情たちの頭痛を取り除こうと考えるだけでも利他の思いを持つことになるので、はかり知れない福徳を得ることになる。

  • それならば、有情それぞれのはかり知れない不幸を取り除きたいという願いを持つならば、そのそれぞれにはかり知れない功徳が成就されることは言うまでもない。


「菩提心を起こすことで心の平和がもたらされ、破壊的感情が鎮まります。そして心に安らぎが生まれるのです」

法王は、釈尊の真言とチベットの守護尊である観音菩薩の真言を法王に続いて唱えるよう求めることにより、真言の口頭伝授を行われた。

ティンレー・チョキ代表が感謝のマンダラを献納した。廻向の祈願文が唱えられた。会計報告として、収入と残高金額が発表された。結びとして、チベット人の若者たちにより吉祥な偈が歌い上げられた。

ダライ・ラマ法王に捧げられた長寿祈願法要の結びに吉祥な偈を歌い上げるチベット人の若者たち。2024年8月25日、スイス、チューリッヒ、ハレンシュタディオン(写真:マニュエル・バウアー)

法要の終わりに、法王が1960年に書かれた『真実の言葉』の祈願文の偈が唱えられた。


  • 要約すれば、守護者観世音菩薩が
  • 勝利者(仏陀)とその息子たち(菩薩たち)の御前で
  • 雪国(チベット)を完全に守ると誓われた広大な祈願の善き結果が
  • 今ここで速やかに現われるよう祈願いたします


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ケララ州の集中豪雨による土砂崩れの被災者に哀悼の意 https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240731 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240731 米国ニューヨーク

ダライ・ラマ法王は、インドのケララ州首相ピナライ・ヴィジャヤン氏に書簡を送り、30日に同州ワヤナド地方を襲った集中豪雨による大規模な地滑りによって多数の死傷者や家屋の損壊が発生し、多くの人々が苦難に直面していることへの悲しみを表明された。書簡の中で、法王は次のように述べられた。

「心よりお悔やみを申し上げます。またご遺族をはじめ、被災されたすべての皆様のために祈りを捧げたいと思います」

「州政府ならびにすべての関係機関が被災者の救助と救援に取り組まれていることを知り、私はうれしく思っています。ケララ州の皆様との連帯の証として、ダライ・ラマ基金より救援・救助活動のための寄付をするようお願いしておきました」

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欧州議会議長と欧州委員会委員長を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240722 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240722 米国ニューヨーク

ダライ・ラマ法王は、欧州連合(EU)のロベルタ・メッツォラ欧州議会議長とウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長が再選を果たしたことを祝して、両氏それぞれに書簡を送られた。

法王は、欧州連合の精神を心から称えて、両氏に次のように書かれた。

「欧州連合は、60年以上にわたり加盟国間や地域の平和を維持してこられました。第二次世界大戦後の和解と協力の精神において、個々の国の利益よりも共通の利益を重視してこられたのです。これは相互依存と挑戦がますます高まった世界における智慧と成熟があらわれたものです」

法王は、欧州連合が他国の目指すべき強力な手本であり続けるよう、両氏の成功を祈念された。

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英国の新首相を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240706 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240706 米国、ニューヨーク

ダライ・ラマ法王は、英国の総選挙において勝利した労働党の党首キア・スターマー氏に書簡を送り、党の勝利と首相就任を祝福された。書簡の中で、法王は次のように述べられた。

「今日、世界は極めて困難な時代に直面しています。相互依存がよりいっそう深まったこの世界の平和と安定のために、英国は多大な貢献を果たしていかれることでしょう」

「私は英国を何度も訪問させていただくなかで、温かな心を培うことや異なる宗教間の調和を促進するなど、人間の基本的価値を高めるために私が取り組んでいることに対し、英国の皆様が関心を寄せてくださっていることを感謝しています。また、さまざまな職業や立場の方々が私に愛情や友情を示してくださったことにも深く感動しました」

「歴史的にもチベット人は長く英国との独特な関係を享受してきましたが、さらに年月を重ねて、多くの英国人の皆様がチベット人の自由と尊厳の希求を長年にわたり強く支えてくださっています。このことに私はいつも感謝しています」

「貴殿があらゆる成功をおさめられ、英国の皆様の願いを実現されますよう祈念したいと思います」

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ナーランダー僧院新キャンパスの落成式を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240622 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240622 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、インドのビハール州ラージギールに新設されたナーランダー僧院新キャンパスの落成を祝してナレンドラ・モディ首相に書簡を送り、次のように述べられた。

「もともとナーランダー僧院は学問の中心地として東方の太陽のように輝いていました。厳密な研究や議論、問答に根ざした教育が花開き、アジアの津々浦々から学僧たちが集まっていたのです。哲学、科学、数学、医学に加えて、長年にわたるインドの伝統哲学である非暴力(アヒンサー)と慈悲の心(カルーナ)についても彼らは学んでいました。非暴力と慈悲の心は今日の社会とも関連があるだけでなく、極めて重要です」

「こうした優れた資質に加えて、ナーランダー僧院の学僧たちは、心と感情の働きを徹底的に理解していきました。そしてインドの伝統的な瞑想修行から一点集中の瞑想(止:シャマタ)と分析的瞑想(観:ヴィパッサナー)が生まれたのです。ナーランダー僧院の伝統が論理と根拠という観点からこれらの資質を示したということは、人類のより広い利益のために、これらを現代の教育と容易に組み合わせることができるということなのです」

法王は、次のように書簡を締め括られた。
「古代インドの知識と智慧に対する関心がインド全土とさらに遠くの若者たちの間で高まっていることに、私は大変勇気づけられています。このことがより思いやりのある社会の構築に寄与する可能性は大いにあるでしょう。古代インドの哲学知識に対する関心と認識を高めることに専心している者として、私は、この歴史的な場所にナーランダー僧院が新設されたことを心から称えるとともに、成功と繁栄を祈念したいと思います」

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インド大統領の誕生日を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240620 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240620 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、インドで二人目の女性大統領として活躍中のドラウパディ・ムルム氏の66歳の誕生日を祝して書簡を送り、同氏の健康と幸福、そして大国インドのリーダーとしての更なる成功を祈念された。書簡の中で、法王は次のように述べられた。

「インドは、非暴力(アヒンサー)と慈悲の心(カルーナ)という長年の伝統に根差した豊かな文明を持つ国であると同時に、世界最大の民主主義国家です。世界の平和と幸福のために貢献できる大きな可能性を持つ国であるがゆえに、私は、より広い世界におけるインドの力とリーダーシップを心から称えています」

「私たちチベット人にとってインドはこれからも常に聖なる者の国(アーリヤ・ブーミ)であり、私たちの精神文化の源泉です。それゆえ、私たちはインドの兄弟姉妹の皆さんを心から尊敬し、親近感を抱いているのです。これはまた、私がインド古代哲学の智慧である心と感情の働きをより多くの方々に知ってもらうことに専心している理由でもあります。なぜなら心と感情の働きを知ることで、これを土台として心の平和を達成したり、温かな心を培ったり、怒りなど破壊的感情を克服することができるからです」

法王は、祈りを捧げて書簡を締め括られた。

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南アフリカの大統領を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240618 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240618 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、南アフリカの大統領に再選されたシリル・ラマポーザ氏を祝して書簡を送られた。書簡の中で、法王は次のように述べられた。

「アパルトヘイトが終わって以来、南アフリカは安定した民主主義国家です。多種多様な文化、言語、宗教が平和に共存する包含的な多国籍社会は、他国が見習うべき手本となっています。私は、貴殿のリーダーシップの下でこの国が繁栄と発展を続けるとともに、恵まれない人々の生活の向上においても貴殿が懸命に取り組まれることを願っています」

「貴殿があらゆる挑戦において成功し、南アフリカの人々の願いを実現できるよう祈念したいと思います」

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メキシコ大統領選挙の勝者を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240614 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240614 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、メキシコの大統領選挙においてメキシコ初の女性大統領として選出されたクラウディア・シェインバウム氏に書簡を送り、次のように祝福の言葉を述べられた。

「私は、女性はより他者の気持ちになって敏感に対応することができると考えています。こうした資質を初めて私が学んだのは、愛する母からでした。思いやりについては科学的根拠もあり、女性のほうが他者の痛みに対して敏感であるとされています。これは、私が長年にわたり女性のリーダーシップを支持し、大いなる励ましの源としてきた理由でもあります。より多くのリーダーが女性であるならば、世界はより理解ある平和な場となるでしょう。実際、人類の歴史においても、ほとんどの戦士が男性であった一方で、女性は一貫して他者の幸福のために心を配り、温かな思いやりの心を示してきました」

「私はメキシコを訪問した際、人類はひとつの人間家族であるという信念を持って私が取り組んでいる思いやりの心や異なる宗教間の調和など、人間の根本的な価値の促進に対するメキシコの皆様の関心の高さに大変勇気づけられました」

法王は、シェインバウム氏があらゆる挑戦において成功し、メキシコならびにより広い世界の幸福を強化できるよう、祈りを捧げて書簡を締め括られた。

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インドの首相を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240605 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/2024/20240605 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、ナレンドラ・モディ首相に書簡を送り、インド下院総選挙において勝者となった同氏とインド与党連合「国民民主同盟(NDA)」を次のように祝福された。

「私は、インドが世界最大の民主主義国家としての責任を果たしていることを心から称え、誇りに思っています。今回の選挙は、インド国民がいかに民主主義を重視しているかを示しています。インドは偉大な古代文明の発祥地のひとつであり、その古代から引き継がれてきた非暴力(アヒンサー)と慈悲の心(カルーナ)という根本的な特徴により、国際社会におけるリーダー国としての評価が高まっています」

「この場をお借りして、インド政府と国民の皆様の温かなおもてなしに対し、私たちチベット人のかぎりない感謝の意を表明したいと思います。私たちが亡命下において、平和と自由のうちに古代からの文化遺産を守り続けることができたのは、インド人の兄弟姉妹の皆様の一貫した寛大さと優しさのおかげです。また私たちが、インド人の新世代間に古代インドの智慧についての認識や関心を高めていただくのに成功したのも、そのおかげなのです」

「新政権の発足に向けて、貴殿が引き続きいかなる困難も乗り越え、この偉大な国家の人々の願いや望みを実現されますよう祈念したいと思います」

このように述べると、法王は祝福の祈りを捧げて書簡を締め括られた。

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