ダライ・ラマ法王14世日本公式サイト https://www.dalailamajapanese.com/ en-us 2025年のノーベル平和賞受賞者を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/20251011 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20251011 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は本日、今年のノーベル平和賞を受賞したマリア・コリナ・マチャド氏に宛てて書簡を記され、ベネズエラ国民の民主的権利を推進するための断固とした取り組みと、平和で平等な社会の実現に向けた決意が高く評価されたことを祝福され、書簡の中で次のように述べられた。

「民主主義の発展に献身する中で、貴女は他者への奉仕において揺るぎない勇気を示されました」

「貴女の模範的行動は、民主主義と自由を守るために、私たちは声を上げる必要があるということを思い起こさせてくださいます」

「共通の目的のために人々を結びつける活動において、貴女は平和で調和した状態を実現できるという希望を体現されています」

法王は、祝福の祈りを捧げて書簡を締め括られた。

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カンタベリー大主教に指名されたサラ・マラーリー氏への祝辞 https://www.dalailamajapanese.com/news/20251005 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20251005 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、現ロンドン主教であるデイム・サラ・マラーリー氏が次期カンタベリー大主教に指名されたことを受け、10月4日付で書簡を送られた。その中で心からの祝意を表して、次のように述べられた。

「今日、世界は多くの困難に直面しています。基本的な人間の価値が問われている時代です。宗教の指導者として、私たちには基本となる人間の価値に再び人々の関心が集まるようにするための、特別な責任があると確信しています。全ての伝統的宗教は、許し、忍耐、慈悲を説き、それらを育む方法を示しています。そのような実践的な良き徳性は、他者と実りある形で分かち合えるものです」

「貴女が英イングランド教会の初の女性指導者となられることを大変喜ばしく思います。ご存知かもしれませんが、科学的な証拠によれば思いやりという点で、女性は他者の感情に対してより敏感です。したがって、より多くの指導者が女性であれば、世界はより理解と平和に満ちた場所になるだろうと私は固く確信しています。あなたの任命は希望の光です」

このように述べると、法王は祝福の祈りを捧げて書簡を締め括られた。

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ダラムサラでの法話会 https://www.dalailamajapanese.com/news/20251004 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20251004 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今朝、澄んだ青空にダウラダ山が堂々と聳え立つ中、ダライ・ラマ法王はツクラカンの階下入り口へと車を走らせた。台湾からの1,300人を含む約5,800人の聴衆を前に、法王はそれぞれの顔をじっくりと時間をかけて眺めてから、微笑み、手を振られた。大勢の聴衆が法王に微笑みを返し、中には目に涙を浮かべる人々もいた。

ツクラカンに到着されたダライ・ラマ法王を見つめる台湾からの聴衆。2025年10月4日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王が着席されるとすぐに、台湾人僧侶の先導で『般若心経』が中国語で唱えられた。つづいて仏陀の身口意の象徴と曼陀羅供養が法王に捧げられた。

「私たちは皆平等です」と法王は語り始められた。「なぜなら、誰もが幸せを求め、苦しみを避けたいと思っているからです。そして、どうしたらその目的を実現できるのかを聴くために、今日皆さんはここに集っています。世界には多様な宗教の道がありますが、チベットではナーランダー僧院の伝統に従い、ナーガールジュナ(龍樹)やアサンガ(無著)、その弟子たちの著作を学びます」

「私に関して言えば、私はチベット、ドメ地方のクンブムに生まれました。ダライ・ラマの転生者と認定されてからはラサに移り住み、リン・リンポチェやティジャン・リンポチェといった家庭教師の方々から学びました。まずは主要五科の根本経典を暗記し、その後、それらを解説している偉大な注釈書を読み、また教えを受けました。仏教の教えの伝統は、理性と論理に従うという点に特徴があります。また、そこには心と感情に関する精緻な解説も含まれます。これが、私たちが純粋なままに守り伝えてきた伝統です。

「今日では、歴史的に仏法と縁のない西洋の人々も私たちの伝統に興味を示しています。その中には科学者もおり、彼らは特に心と感情に関する知識を得ることに熱心です。ここに集まった私たちは皆、仏陀とその教えをまとめた八万四千の法門の信奉者です。私はこれを宝物のように思っています。

「私は子供の頃に仏教を学び始めて以来、智慧の完成(般若波羅蜜)、中観哲学、論理学と認識論、倶舎論、戒律を学んできました。私は学び始めた初期の段階から、論理学入門で学んだ内容を基に、問答に取り組みしました。そうした精緻な検証と分析に基づく学習方法は、仏陀が説かれた内容を真に理解する上で非常に効果的です」

「密教には、心と感情の働きに関する詳細な解説に加え、意識に関するさらに深遠な解説があり、多様な心の状態における様々なレベルの心の微細さが提示されています」

ツクラカンで行われた法話会で聴衆に語りかけるダライ・ラマ法王。2025年10月4日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「仏教ではすべての有情への慈悲が説かれますが、私にとってチベット人は特別なつながりのある人々です。私はこれからも、チベット人に対してできる限りの奉仕をしていくつもりです。チベットでは今なお中国共産党が支配を続けていますが、仏教とナーランダーの伝統に興味を持つ中国人が増えてきています。中国は歴史的には仏教国でしたから、仏教が復興する可能性があるかもしれません。私はその可能性の実現に向けて後押しをしてきましたし、今後も残りの人生をかけて続けるつもりです」

法王は、菩提心の生起と、菩薩戒を授ける儀式を執り行うと述べられ、聴衆に、仏陀、その七人の後継者、文殊菩薩と弥勒菩薩、さらにインドとチベットの偉大な聖者方を眼前に思い描くように指示された。つづいて七支分の祈願が唱えられ、さらに法王は、ご自分に続いて三度唱えるよう弟子である聴衆に指示してから、帰依と菩提心の偈頌を唱えられた。


私は三宝に帰依いたします
すべての罪をそれぞれ懺悔いたします
有情のなした善行を随喜いたします
仏陀の悟りを心に維持いたします

仏陀・仏法・僧伽〔の三宝)に
悟りに至るまで私は帰依いたします
自他の利益をよく成就するために
菩提心を生起いたします

最勝なる菩提心を生起したならば
一切有情を私の客人として
最勝なる菩薩行を喜んで実践いたします
有情を利益するために仏陀となることができますように


法王は聴衆に、幼かった頃の自分は仏の教えにあまり熱心ではなかった、と語られた。しかし歳を重ねるにつれ、心を変容させる修行がいかに有益であるかがわかるようになった。有神論の伝統に従う人々は神に信頼を寄せるが、チベットや中国の仏教徒にとっては、仏陀・法・僧伽への帰依が最も重要である。法王は、チベットの僧院を訪れた際に非常に信仰心の深い修行者たちに出会い、彼らの敬虔さは法王ご自身に勝ると感じられた、と振り返られた。

ダライ・ラマ法王から菩薩戒を受ける聴衆たち。2025年10月4日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

仏教の伝統のもう一つの側面は、カルマについてであり、それは私たちが生み出すあらゆる種類の善悪の業と、意識の微細さの様々なレベルに関連している、と法王は述べられた。チベットに受け継がれてきた仏教の伝統は、非常に広大かつ深遠な、素晴らしい伝統であるとつづけられた。

「私たちは皆、自分が自分と他者を区別していることを知っています。また、自分たちの伝統は、他者の伝統とはどこか違うとも考えています。私たちがすべきことは、すべての宗教的伝統の価値を認めることです。他の伝統について分析した際に、自分たちの基準とは合わない面があったとしても、だからといって、それらの伝統に敵対する理由にはなりません」

「宗教を真摯に実践するには、心を律し、感情を制御する必要があります。そして、どの伝統も信者たちの心を鎮める力を秘めています。そうであれば、仏陀の信者は、他のすべての宗教的伝統を尊重するべきです。そのような理由から、他の伝統を敬うことが大切なのです」

「私が中国共産党の支配下で暮らしていた頃は、怒りを覚える状況が繰り返し起きました。私はその後1959年にチベットを逃れました。感情を制御し、心を変容させることのできる手段を与えてくれる仏教の伝統に、私は心からの感謝と信頼を抱いています」

「温かな心と菩提心を育み、それを身近な人々と共有できたなら、心がゆったりと安らいで、周囲の人たちも幸せになることでしょう」

「私は北京滞在中に、何度か毛沢東に会いました。ある時、彼は真剣な顔をして『宗教は毒だ』と私に言いました。私は何も言いませんでしたが、精神の修行がどれほど有益であるかを彼が知らないことを、気の毒に思いました」

ツクラカンでの法話会を終え、ゴルフカートで公邸へお帰りになるダライ・ラマ法王。2025年10月4日、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王は、仏陀・法・僧伽の三宝への帰依の偈頌を繰り返し唱えることに加え、真言も唱えることで心に善いインスピレーションを与えられる、と勧められた。そして、自分に続いて唱えるよう聴衆に指示してから、仏陀釈迦牟尼、ターラ尊、観音菩薩、文殊菩薩の真言を口伝された。

法王は、さらに薬師如来の真言を伝授なさった後、人は時として望みを成就する上で障害に直面することがあるが、そういう時は馬頭尊の真言を唱えるとよい、と勧められた。つづけてグル・パドマサンバヴァの真言をお唱えになり、最後に、本日の聴衆の大多数が自身をゲルク派だとみなしていることから、ツォンカパ大師への礼讃偈『ミクツェマ』の伝授をされた。


御身は、空性了解を伴う大悲の宝蔵、観自在
無垢なる智慧に自在なる文殊師利
あらゆる魔軍を砕破する秘密主(金剛手)
雪国(チベット)の智者の冠たるツォンカパ
ロプサン・タクパの御足に祈願いたします


最後に、経頭が『不滅の歌』と呼ばれる、法王の二人の家庭教師、リン・リンポチェとティジャン・リンポチェによって記されたダライ・ラマ法王のご長寿を願う祈願文を唱え、法話会を締めくくった。法王はツクラカンを出られ、エレベーターに向かう道すがら、法王と目を合わせたいと願いながら通路に並んでいた人々に微笑みかけたられた。中庭に着くと、法王はゴルフカートに乗り込み、公邸への帰路に就かれた。

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長寿祈願法要と文化伝統芸能式典 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250920 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250920 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今朝、ここ数日にわたり北インドを襲っていた豪雨は止み、太陽が顔を出した。ツクラカンの中庭には韓国と東南アジア10カ国から1,000人を超える人々が集まり、ダライ・ラマ法王の長寿を祈願して自国の文化伝統芸能を披露した。

長寿祈願法要と文化伝統芸能を披露する式典に出席するため、ツクラカンの中庭に到着されたダライ・ラマ法王。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

色とりどりの布で飾り付けられた中庭は、マリーゴールドの花輪が吊るされ、蘭の花がずらりと並び、床には絨毯が敷かれていた。法王が公邸の門に到着されると、主催グループの代表たちが法王を出迎えた。ツクラカン下のベランダに配された法座までの通路には、獅子舞の衣装をまとった踊り手たち、そして法王のために後で踊ることになるアーティストたちが並んでいた。法王はいつものように、喜びに満ちた表情で左右に集まった人々に手を振り、通路の先頭に座るパーリ語の伝統(テーラワーダ)の僧侶たちには立ち止まって挨拶された。

シンガポールのチベット仏教センター会長のシスター・ウィニーは、法王、僧院の僧伽の方々、その他すべての来賓たちに敬意を表してから、ここに集う人々が法王の長寿とご健康、ずっと法輪を回し続けて(仏法を説き続けて)くださるように祈っていると述べた。そして、法王が世界に与えられてきた善行を称えて、“思いやりの年” を象徴するメダルを法王に捧げた。

本イベント共催者の一つで、タイのチェンライにあるライ・チューンタワン国際瞑想センター(Rai Cherntawan International Meditation Center)座主のプラメティワチロドム・V・ワチラメティ師が率いる約30名のテーラワーダの僧侶たちが、法王の長寿と世界平和を願う祈願文をパーリ語で唱える中、主催者代表の14名がマンダラと仏陀の身口意の象徴を捧げた。

ダライ・ラマ法王の長寿と世界平和を願う祈願文をパーリ語で唱える上座部仏教の僧侶たち。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

式典参加者全員を代表して、ベトナム仏教僧伽(Vietnam Buddhist Sangha)執行委員会副委員長であり、ベトナム中央委員会副委員長でもあるティク・ナット・トゥ師が共同声明を読み上げた。法王は、世界で最も著名で尊敬される仏教指導者であり、平和、普遍的責任、自己規制、そして宗教と社会の調和という理想を体現されているとし、法王がノーベル平和賞、米国議会名誉黄金勲章、テンプルトン賞など、数々の賞を受賞されたことを想起させた。

続けて、法王は生涯をかけて仏教の伝統を強化する一方、同時に異なる宗教間の対話を促してきたことが述べられ、揺るぎない非暴力や環境保護、チベット文化保全への法王の使命は、世代を超えて人々にインスピレーションを与えてきた。

参加者全員を代表して共同声明を述べるベトナム仏教僧伽執行委員会副委員長、ベトナム中央委員会副委員長のティク・ナット・トゥ師。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

ゆえに、アジアの仏教指導者と仏教徒たちはダライ・ラマ法王の90歳の誕生日を祝うためダラムサラに集い、法王は「仏教界の普遍的な仏法王」であると満場一致で宣言した。また、法王の崇高なビジョンと法王が体現されている限りない思いやりを実現し、真に調和のとれた平和な世界を築くことに精進することを再確認した。

次に、主催者代表の7名、僧伽代表の7名、その他の仏教指導者たちが、様々な贈り物を法王に捧げた。マンダラ供養に関連する礼賛偈が英語で唱えられ、観音菩薩を称える次の偈頌から始まった。


雪山に周りを囲まれたこの場所に
すべての利益と幸福の源である
観自在菩薩の化身テンジン・ギャツォ猊下の
御足の蓮華が輪廻の終わりまで健やかにとどまられますように


その祈願文は次のように締めくくられた。


仏陀の尊き教え、あらゆる仏教の伝統における顕教と密教の教えが
末永く受け継がれますように
私たちの尊き指導者、偉大なるダライ・ラマ法王の大慈悲の御業と
揺るぎない人生に倣い
世界のあらゆる精神的・物質的幸福が幾百劫にも渡って栄えますように


共同主催者として、シンガポールのチベット仏教センターのほか、以下の名が紹介された。韓国のラブスム・シェドゥプリン(Labsum Shedrup Ling)、マレーシアの道浄禅林(Persatuan Lamrim Buddhaksetra Retreat Centre)、マレーシアの金剛乗仏教徒協議会(Vajrayana Buddhist Council of Malaysia)、タイのライ・チューンタワン国際瞑想センター(Rai Cherntawan International Meditation Center)、インドネシアのカダム・チューリン(Kadam Choeling Indonesia)、インドネシアのタンゲラン・バンテン州立スリウィジャヤ仏教大学(Sriwijaya State Buddhist College of Tangerang Banten Indonesia)。

ダライ・ラマ法王に供物を捧げる東南アジア諸国および韓国の仏教徒たち。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

その一方で、主要な支援者14名からなる2番目のグループがマンダラ供養をし、150名の信者が法王に贈り物を捧げた。
この時、主催者を代表して本式典の議長が法王に聴衆へ話をしてくださるように依頼すると、法王は次のように話を始められた。

「おはようございます。私の人生における経験をいくつかお話ししたいと思います。私はチベット北東部のアムドに生まれました。まだ幼い頃に中央チベットのラサに移り、そこでしきの定義などを扱った論理学の入門書『仏教基礎学』から仏教の勉強を始めました。その後、論理学と認識論、中観哲学、戒律(ヴィナヤ)、論書(アビダルマ)を学びました。もっとも、この伝統における宇宙論の提示方法にはあまり興味がなかったのですが。般若波羅蜜についても学びました。仏教哲学を学ぶ中で、心理学や心の認知的側面、つまり私たちの心が対象とどのように関わっているのかについても探求しました」

「私は熱心に学び、智慧の仏である文殊菩薩に、この学びを支えてくださるよう祈りました。様々な古典論書を学んでいる間、家庭教師や問答の助手の方々には大変助けられました。学びに加えて、生活の一部として瞑想を通して菩提心(悟りを得たいという熱望)も育みました」

参加者に向け、話をされるダライ・ラマ法王。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「学び終えると試験を受けたのですが、中央チベット三大僧院であるセラ僧院、デプン僧院、ガンデン僧院への訪問も含まれており、多くの著名な学者と問答を行いました。それが終わると、ラサのジョカン寺で最終試験を受けました」

「アムドの人里離れた村の出身でありながら、全課程を履修し、最終試験を受られたことは幸運だと感じました。この期間、私の問答の助手たちには大変お世話になったのですが、助手の一人はあまり賢くなかったので、彼との問答ではその点を利用できることに気づきました」

「いずれにせよ、仏教の勉強を終えてゲシェ(仏教博士)の学位を取得できたことは、私にとって非常に重要なことでした。加えて、三つの実践修行(三学)、すなわち持戒、禅定、智慧(戒学かいがく定学じょうがく慧学えがく)の実践にも取り組みました」

「最終試験を終えて間もなく、当時起こっていた騒乱のため、チベットから逃れなければなりませんでした。夏の宮殿であったノルブリンカを去る前に、六臂マハーカーラ像のあるお堂へ行き、その前で祈りを捧げました。そして、悲しみつつも密かにノルブリンカを脱出し、祖国を離れる旅が始まりました。しかし同時に、自由な国インドへ向かうので自信も感じていました」

「1959年、インドに到着すると、ジャワハルラール・ネルー率いるインド政府から温かい歓迎を受けました。ネルーは私やその後に来た人々にとても親切で、多大な援助をしてくださいました」

式典でのツクラカン中庭の檀上の様子。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「亡命後、学ぶ過程で得られた知識や経験を、世界と共有する素晴らしい機会を得ました。物質だけでなく、心と感情についても学びました。テキストには、さまざまな心の状態や物質の状態の微妙な違いが著されています」

「とにかく生涯を通じて私の主な実践は、利他の心である菩提心を生起し、空の正しい見解を培うことでした」

「今日は、私の長寿祈願のために集まってくださり、ありがとうございます。特に僧侶の方々には、この法要のために来ていただき感謝申し上げます。私たちは娯楽のためではなく、精神的な理由で集いました。先ほど申し上げたように、私は日々菩提心と空の見解を育むことを心がけています。また、僧侶としての戒律を守り、堅持しています。さらに、長年学び続けてきた般若波羅蜜と中観哲学についても深く考えています」

「1954年に中国を訪れ、毛沢東主席にお会いしましたが、ある時、毛主席が宗教は毒だと言いました。そのとき、彼の無知に対して思いやりの感覚が生じました。亡命し、インドで自由を得て以来、仏教を学びたいと願う人々、特に心と感情の働きについて学びたいと願う人々に、私の知識、経験、そして仏法の実践について分かち合ってきました。チベットの伝統を学びたいと願う人々はますます増えています。私は彼らのために最善を尽くしてきたと感じています」

「先ほど申し上げたように、みなさんは精神的な理由と私の90歳の誕生日を祝うためにここに集まりました。私の長寿を願って祈願や供養をしてくださったこと、そして仏法の修行をし、他者、特に僧侶への奉仕に尽力してくださったことに、心より感謝申し上げます。私も仏法を通じて他者に奉仕すると決意しています。ダライ・ラマとして、人々の心が前向きな状態になる手助けができたことを幸運だと感じています」

「祈願法要、そして私の90歳の誕生日を祝ってくださり、ありがとうございます」

ダライ・ラマ法王に舞を披露するラオスのダンサーたち。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

次に、タイ、ベトナム、インドネシア、ラオス、ミャンマー、カンボジア、マレーシア、シンガポールの東南アジア8カ国から、優雅な文化伝統芸能が披露された。タイからは孔雀の舞、ベトナムからは歌による長寿祈願、インドネシアからは平和と調和を祈願する舞が演じられた。ラオスからは2名の女性が愛の花を表現する踊りを舞い、ミャンマーの男女のダンサーは古代の弓形ハープ「サウン」の伴奏に合わせて踊った。カンボジアからの3名の女性は、金色の冠と装飾品を身に着け、同じく金色の花を手に舞を披露した。

マレーシアの男女のダンサーたちは、団結と包摂性を表現するために、活気に満ちた動きで素早く回転しながら踊っていた。最後に、シンガポールから来た8人のダンサーチームが、軽快な太鼓の音に合わせて神話上の獅子に扮し、エネルギッシュなパフォーマンスを披露した。それぞれの獅子舞の衣装の中には、見事に息の合った2人のダンサーが入っていた。パフォーマンスの最中、1頭の獅子が法王の長寿を願う祈願文が書かれたものを掲げ、法王に捧げた。

踊りを披露するマレーシアのグループ。2025年9月20日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

素晴らしく楽しいパフォーマンスの数々に、観客からは温かい拍手が送られた。

シンガポールの代表より、収入額および支出額について簡潔な財務報告が行われ、残額はダライ・ラマ基金に寄付することが宣言された。主催者に感謝の意が表され、次の廻向文が述べられた。

「この法要による功徳がダライ・ラマ法王の長寿と真の世界平和の確立に役立ちますように」

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インド、モディ首相の誕生日を祝福 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250917 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250917 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、インドのナレンドラ・モディ首相の誕生日を祝して書簡を送られ、同氏の健康を祈念するとともに、次のように記された。

「インドに最も長く滞在している客人として、私はこの国が年月を重ねる中で成し遂げてきた目覚ましい発展と繁栄を、直接この目で見てきました。近年における自信と力強さの高まりに心より祝意を表します。インドの成功は世界全体の発展にも寄与しているのです」

「私は自らを、インドの誇り高き使者であると考えています。世界最多の人口を擁する、世界最大の民主主義国家であるインドの卓越した、そして深く根づいた宗教の多様性に対する敬意を、私は折に触れ語ってきました。インドは世界に調和と安定の模範を示す存在なのです」

「私たちチベット人にとって、インドは精神的伝統の源であるだけでなく、66年以上にわたる住まいであり、故郷です。この場をお借りして、インド政府と国民の皆さまの温かく寛大なお心遣いに対し、深い感謝の気持ちをお伝えしたいと思います」

法王は、祈りと祝福の言葉をもって書簡を締めくくられた。

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インド次期副大統領への祝辞 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250911 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250911 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、インドの次期副大統領にC.P.ラーダークリシュナン氏が選出されたことを祝して書簡を送り、その中で次のように述べられた。

「1959年にチベットを離れることを余儀なくされて以来、私を含む多くのチベット難民がインドで温かく受け入れられてきたことに深く感謝しています。インド政府にとって最も長きにわたる客人として、私は各地を巡り、あらゆる分野の人々と出会う機会に恵まれてきました」

「何千年にもわたり、インドは “慈悲(カルーナ)” と “非暴力(アヒンサー)” の理念を守り続けてきましたが、今日ではこれらの理念への理解が広く世界に浸透しています。それは個人の内なる平和のみならず、世界全体の平和を育む可能性を秘めています。加えて、インドは宗教的調和の地であり、多様なコミュニティが共に暮らしています」

「私はしばしば、自らを『インドの息子』と表現しますが、それは、私の思考のあり方すべてが、古代インド思想の一部である仏教の修練によって形づくられてきたからです。ご存じの通り、チベット仏教文化は、ナーランダー僧院の学僧たちによって培われた理論と分析の伝統に深く根ざしています」

ダライ・ラマ法王は、インドという偉大な国の人々の希望と願いを実現する歩みにおいて、次期副大統領が大いなる成功を収められるよう、祈りの言葉で書簡を締め括られた。

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ダラムサラでの長寿祈願法要 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250910 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250910 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

本日、ダラムサラのツクラカンにて、ダライ・ラマ法王の長寿祈願法要が執り行われた。ロカ文化福祉協会(Lhokha Cultural & Welfare Association)、ナムギャル仏教学研究所・イサカ(Namgyal Institute, Ithaca)および各国に暮らすチベット人青年たちによって捧げられたこの法要には、およそ4,000人が参列した。

背負った大太鼓を打ち鳴らしてダライ・ラマ法王を歓迎するゴンカル・チューデ僧院の僧侶たち。2025年9月10日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

若いチベット人たちにとって今日の法王の長寿祈願法要は、今後3日間にわたり開催されるチベット青年フェスティバルの幕開けとなった。フェスティバルでは若者たちが法王への信仰と敬意を新たにする場として、「誓約」「繋がり」「祝福」に焦点が当てられることになっている。

ダライ・ラマ法王が法王公邸の門に到着されると、主催団体の代表者たちが出迎えた。中庭ではゴンカル・チューデ僧院の僧侶たちが背負った大太鼓を打ち鳴らして歓迎し、チベット人の女性たちが歌で敬意を表した。法王は満面の笑みを浮かべ、人々に手を振ってその喜びを示された。

ツクラカンの入口では、ペンパ・ツェリン主席大臣が前に出て法王を出迎え、ナムカイ・ニンポ・リンポチェがカタ(儀礼用の絹のスカーフ)を捧げた。法王が着座されると、正面最前列には、法要を先導するサキャ派プンツォク宮のアヴィティタ・ヴァジュラ・リンポチェと、ロダク・カルチュ僧院のナムカイ・ニンポ・リンポチェが並んで座した。

法要はグル・リンポチェへの七句の祈願文と、5人のダーキニーの招請から始まった。続いて、持明者たちへの祈請が行われ、「時は至れり。どうか不死の成就を授けたまへ」という祈りの言葉が繰り返された。供物が捧げられ、法王の長寿への祈願を込めて、長いマンダラ供養が行われた。

供物を手に祈りを捧げる主催団体の代表者たち。2025年9月10日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

法王の長寿を願う人々が供物を携えて堂内を進む中、ナムカイ・ニンポ・リンポチェは、仏陀の身・口・意(お身体・お言葉・お心)を象徴する供物を献上した。法王が三世の諸仏を体現するラマとして観想され、長寿の壺、不死の甘露、長寿の丸薬、トルマ(チベット人の主食ツァンパで作られた儀式用のケーキ)、八吉祥宝、転輪聖王の七宝、八吉祥財が次々と捧げられた。

ジャムヤン・ケンツェ・チューキ・ロドゥ師によって作られた法王の長寿祈願文が唱えられ、続いて法王の二人の師による祈願文が読誦された。

「私たちにとって、これほど慈悲深い存在はほかにいません。テンジン・ギャツォ、ダライ・ラマ法王よ、どうか永遠にご健在でありますように。チベットにお戻りになり、祖国と世界に散らばるチベット人が再び一つとなれますように」、——チベット子ども村(TCV:Tibetan Children‘s Village)の学生たちが歌を捧げた。続いてロカ地方の大人たちも歌を披露し、両グループとも温かな拍手で迎えられた。

ダライ・ラマ法王に歌を捧げるチベット子ども村の学生たち。2025年9月10日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

ダライ・ラマ法王は、法要の参列者に向けて次のように述べられた。

「本日ここに集った私たちは、皆、深い献身と誠実な心をもって臨んでいます。私は幼少の頃から、ギャルワ・テンジン・ギャツォ、すなわちダライ・ラマとして認識され、タクダ・リンポチェ、リン・リンポチェ、そしてティジャン・リンポチェから教えを受けてきました。また、討論の助教たちの助けを得て哲学と論理を学び、仏教哲学の探求には大いなる熱意をもって取り組んできました」

「やがて私は亡命を余儀なくされましたが、ノルブリンカを離れる前に、六臂マハーカーラの尊像の前でお祈りを捧げました。彼を置いていかねばならない事が心残りでなりませんでしたが、そのお姿は今も鮮明に心に残っています」

「亡命して以来、私は世界のさまざまな国を訪れてきました。そして今日ここダラムサラで、皆さんは比類なき献身と勇気、そして深い敬意をもって、私の長寿のための祈りを捧げてくださいました」

「私はアムドに生まれ、後に中央チベットへ移り、般若学や中観哲学などの学びに励みました。ヴァスバンドゥ(世親)による『阿毘達磨倶舎論あびだつまくしゃろん』については、世界の成り立ちなどの記述に対して、私自身あまり熱意や信頼を持てませんでしたが、般若学、中観、論理については、学ぶことでその本質に触れることができたと思っています」

ツクラカンで行われた長寿祈願法要の参列者に向け、話をされるダライ・ラマ法王。2025年9月10日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「私はこれまで多くの浮き沈みを経験してきましたが、それによって健康や決意が損なわれることはありませんでした。また、中国が何を言おうとも、自らのカルマに従って歩むという決意が揺らぐこともありません。中国本土では仏教の伝統に関心を寄せる人々が増えています。私はすべての人々に尽くすことを固く決意しているので、常に広い視野を持ち、誰ひとり区別することなく、万人の役に立つよう物事を見ようと努めています」

「本日ここインドにおいて、私の長寿を願う法要が、世界各地に暮らす若いチベット人たち、ロカ文化福祉協会、そしてニューヨーク州イサカのナムギャル僧院仏教学研究所によって行われました。私たちは今、衰退の時代にあり、多くの変化が起きていますが、その一方で、ダライ・ラマという存在は世界で広く評価されるようになりました。私自身が過去に積んできたカルマと祈りの結果として、私と出会ったり、私の法話を聴くことが、皆さんの心に強く肯定的な印象を残し、来世においても観音菩薩によって導かれ、護られることを願っています。もちろん、皆さん自身もそのための祈りを捧げるべきです」

「私たちがしばし集い、やがて散っていくのはごく自然なことです。しかし、皆さんの信仰と敬意は揺らぐことなく来世へと続いていくでしょう。今日ここで、皆さんが私の長寿を願って祈りを捧げてくださったことに対し、私自身もまた、チベットの人々、私たちの精神的伝統、そして人類全体のために、責務を果たし続けられるよう祈りを捧げました」

「私の言葉に敬意を払ってくださるのは、仏教徒だけではありません。キリスト教徒、科学者、さらには特定の宗教を持たない方々もそうです。皆さんが表明してくださった願いによって、私は長く生きるでしょう。そして、仏教が中国で広まり、繁栄していく中で、ダライ・ラマと関わる多くの地域の人々の信仰と敬意が、揺るぎなく、深く、安定したものとなるよう祈っています」

「先日、私は大きな堂内で仏陀と共にいるヴィジョンを見ました。仏陀は私に手招きをされ、とても喜んでおられるように感じました。私は、仏陀とその教えに仕えてきた者なのだと深く感じ、これからもその歩みを続ける決意を新たにしました」

ダライ・ラマ法王のお話に耳を傾ける参列者たち。2025年9月10日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「世界には武力を用いて権力を行使する指導者がいます。しかし、ダライ・ラマは信仰と敬意によって人々を導きます。銃や刀ではなく、私はその方法でできる限り多くの人々のために尽くそうと思っています」

「中国では大きな変化が起きています。その一方で、私はインドに暮らし、私の名は世界各地で広く知られ、敬意をもって受け止められるようになりました。私は他者のために最善を尽くしています。皆さんも同じように歩んでください」

「私の長寿を願って捧げられた祈りによって、私はこれからも長く生きるでしょう。私は自らの身・口・意を、他者への奉仕に捧げています。朝目覚めるとすぐに、すべての有情の利益のために尽くすという誓いを新たにします。内に菩提心を育み、これらの目標を成就できるよう祈りを捧げるのです。ぜひ皆さんも同じように実践してください」

「私たちの善き願いが速やかに成就しますように」と、グル・リンポチェへの祈願文が唱えられ、感謝のマンダラが捧げられた後、仏法の興隆を願う祈願文の詠唱で長寿祈願法要は幕を閉じた。

法王が微笑みながら手を振って公邸へ戻られた後も、ツクラカンの中庭は佳き日の余韻で満ち、歌や踊りの披露が続いた。

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ヒマーチャル・プラデーシュ州のモンスーン豪雨被害に哀悼の意 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250909 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250909 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ダライ・ラマ法王は、ヒマーチャル・プラデーシュ州首相のスクウィンダー・シン・スクー氏に書簡を送り、今年の異常な豪雨により、同州の複数の地域で、尊い人命が失われ、前例のない規模の家屋の倒壊や、ライフラインの損傷が発生していることへの深い悲しみを表明され、書簡の中で次のように述べられた。

「この自然災害により愛する人を失くされたご遺族と、被災されたすべての方々に、お悔やみを申し上げ、祈りを捧げたいと思います」

「州政府ならびにすべての関係機関が、緊急の救援と復興活動に取り組まれていることを承知しております。私もヒマーチャル・プラデーシュ州の皆様との連帯の証として、ダライ・ラマ基金より救援と復興活動のための寄付を行うよう要請しました」

「ご存知の通り、ダラムサラは65年以上にわたり、私の故郷であり、私はしばしば、州首相を “私たちの首相” と呼んでいます。ヒマーチャル・プラデーシュ州のあらゆる分野の方々が、私とチベット人の同胞たちに長年にわたり示してくださっている友情と厚情に深く感謝しています」

法王は、祈りと願いの言葉で書簡を締め括られた。

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スピトゥクのアビ・スパン広場で昼食会 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250824 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250824 インド、ラダック地方レー

ダライ・ラマ法王は、ラダック仏教徒協会(LBA:Ladakh Buddhist Association)およびラダック僧院協会(LGA:Ladakh Gonpa Association)による招待を受け、アビ・スパン広場での昼食会にご臨席された。予期せぬ雨が降り続く中、法王は予定通り会場に到着され、ラダック僧院協会会長のドルジェ・スタンジン師が歓迎の挨拶を述べた。会長は法王に深い敬意を示すとともに、長年にわたるラダックの人々へのご厚情に感謝の意を表した。続けて、ティクセ・リンポチェをはじめとする来賓客を歓迎した。

法王に敬意を表し挨拶するラダック僧院協会会長ドルジェ・スタンジン師。2025年8月24日、インド、ラダック地方レー、スピトゥク(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

スピトゥク村の女性たちは晴れ着を身にまとい、三つの演目の初めに、伝統的な音楽に合わせ優雅に、そして楽しげに歌と踊りを披露した。続くソナムリン・チベット人居住区のグループは、大勢で雨にも負けないほど熱のこもった歌と踊りを見せた。参加者たちは傘をさして雨を凌ぎながら演目を楽しんだ。

続いて法王は以下のように述べられた。

「僧侶と在家信者の方々、そしてラダックとチベットの人々が、この祝典に向けて献身的に準備をしてくれました。今日この行事を開催してくださったことに、お礼を言いたいと思います」

「我々は、チベット人とは東はダルツェドからラダックに隣接する西のンガリ地方を含む三つの地域の人々だと言っていましたが、チベット人が国境を越える機会を得たことで、我々は宗教、文化、言語を共有するラダックの人々と非常によく似ていることを実感しました」

「先ほど私は雪の国チベットの三域について触れましたが、チベット政府は主にチベットの中央地域に関心を寄せ注力していました。しかし私がチベットについて語るとき、それは600万のチベット人が暮らすこの三域を意味します。私たちは同じ宗教、文化、言語を共有する雪の国の民なのです」

参加者に向け話をされるダライ・ラマ法王。2025年8月24日、インド、ラダック地方レー、スピトゥク(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「かつて私にはチベットのさまざまな地域を訪れる機会があり、その時 “我々はひとつの民族なのだ” と、とても強く感じました。私は中央チベットから程遠いアムドのシリン近郊で生まれましたが、そこでも共通の宗教的・文化的な遺産を共有しています。私がチベットの三域について語るとき、それは政治的な意味合いというよりも、“三域の人々は皆ひとつである” という実感からなのです」

「中国共産党政権によるチベット占領は政治的思惑に基づくものですが、すべてのチベット人は、三域からなる “雪の国” に属していると感じています。ドトゥー(カム)、ドメー(アムド)、ウツァン出身の600万のチベット人が、雪の国チベットという名のもと、チベット人としての意識を強く持っています。嬉しかろうと悲しかろうと私たちは皆、チベット人であるという共通の感覚があります」

「私はチベット各地を訪問した際、そこで話される異なる方言を耳にしてきましたが、どこに住む人々も皆、チベット人であるという同じ感覚を持ち合わせているのです。今、私たちはチベットに隣接した地に集い、チベット人として、ひとつの民族であるという強い一体感を持っています。この精神は私たちの中に強く明確に存在しており、それが伝わってきたことを大変嬉しく思っています」

「私たちには精神的な伝統を守ってきた僧院や尼僧院があります。中央チベットには主要な学問の拠点となる三つの大僧院が存在し、カムやアムドにも素晴らしい僧院があります。これらは私たちの文化的伝統の真髄を守り続けているのです」

昼食会での法王のお話に耳を傾ける参加者たち。2025年8月24日、インド、ラダック地方レー、スピトゥク(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「先ほども申し上げたように、同じ宗教、文化、言語をひとつの民族が有していることについて、チベットの三つの地域のあらゆる人々が強い信念を抱いており、この認識はとても重要です。これは政治的な主張などではありません。ソンツェン・ガンポ王の時代より、インドの宗教や文化をチベット語に訳した偉大なチベット人翻訳家たちがいました。彼らは仏説を翻訳したカンギュル(経典)、そして注釈書を翻訳したテンギュル(論書)を我々にもたらしてくれました。これらには仏陀の教えが込められています」

「チベット東部から中国との国境を経てラダックまで、私たちは同じ宗教、文化、言語を共有していますが、これらの伝統ある特徴に固執している訳ではなく、私たちが守り続けるこの文化というのは、カンギュルとテンギュルに込められた教えから派生したものです。これこそが私たちの守り抜いてきた学びと実践なのです」

「主要な僧院は仏陀の教えを保持する上で不可欠な学問の中心地です。近隣諸国もまた仏陀の伝統を守るために尽力してきましたが、我々は異なるアプローチの採用、つまり論理と理性に基づいた厳密な研究に取り組んできたのです」

法王を歓迎し、昼食会のプログラムで演舞するソナムリン・チベット人居住区のメンバーたち。2025年8月24日、インド、ラダック地方レー、スピトゥク(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「現在中国はチベットを統治する強大な国であるにも関わらず、チベットの文化的伝統はその中国に浸透しています。中国の人々はチベット仏教の伝統に強い関心と敬意を抱いており、それは彼らにとって有益な役割を果たしているのです。この貴重なチベットの宗教と文化は、チベットの国境地帯においても千年にわたり保持されてきました」

「私はドメーに生まれ、ダライ・ラマの玉座のあるラサに移りました。恩師たちのご厚意で、論理学から般若学、中観学、阿毘達磨学、そして戒律学に至るまで、仏教の主要なカリキュラムを学ぶことができました。阿毘達磨が宇宙をどう描写しているかにはあまり興味がありませんでしたが、他の科目の勉強は非常に役に立ちました」

「もしあなたが般若学、中観学、そして論理学と認識論についてある程度の理解があるのであれば、仏陀の教えをよく理解していると言えるでしょう。しかし、これらの分野に精通していないのであれば、たとえ阿毘達磨を暗唱できたとしても、必ずしも理解が深まるとは言えません」

「それからタントラがあります。伝統的にタントラには四つの階層があり、これは仏陀の教えを完成する伝承があることを意味しています。これらの教えの真髄は、わたしたちの心の感情と働き、そしてコントロールできない心を鍛えるために、どのように否定的な感情に対処するかを学ぶことです。このような学びと訓練を通して、私たちはあらゆる人々の利益のために仏陀となることを目指しています」

「他の伝統にはこれほどに広範な学問や修行は存在せず、我々の持つ仏教の深い知識のようなものは他に類を見ません。私たちは主に中観学と論理学に焦点を当てています。過去の学識者たちのお蔭で私たちは五大学問を学ぶことができています。これは素晴らしい伝統なのです。仏教の古典文献を学ぶ、つまりこのことが私たちの文化的伝統を構成していいるのです」

法王に謝辞を述べるラダック仏教徒協会会長チェリン・ドルジェ・ラクルク氏。2025年8月24日、インド、ラダック地方レー、スピトゥク(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「チベットと国境を接するここラダックにおいてもまた、共有する仏教の継承に非常に熱心で、それは大変喜ばしいことです。この仏教の伝統を守ろうとする皆さんの努力に貢献すべく、この地で教えを説くことができたことをとても嬉しく思っています。ありがとうございます」

ラクルク会長は、法王ならびにこの行事の運営に携わったスピトゥクの人々全員に向けて謝辞を述べた。そして村人たちによってショドル舞踊が披露され、昼食会は幕を閉じた。法王は昼食を召し上がった後、シワツェルの法王公邸へと戻られた。

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レーでの長寿祈願法要 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250817 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250817 インド、ラダック地方レー、シワツェル

本日、灼熱の太陽の下、シェワツェルの法王公邸に隣接したカーラチャクラ・グラウンドにおける法話会の2日目に、ダライ・ラマ法王の長寿を祈願するため約5万人の人々が集まった。伝統的なラダックの太鼓とホルンの奏者が歓迎の音を奏でる中、法王は公邸から会場の奥にある講堂にゴルフカートで向かわれた。この長寿祈願法要は、ラダック仏教徒協会(LBA:Ladakh Buddhist Association)とラダック僧院協会(LGA:Ladakh Gonpa Association)の主催で執り行われた。

法王公邸からカーラチャクラ・グラウンドの講堂へゴルフカートに乗って向かわれるダライ・ラマ法王。2025年8月17日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

講堂に到着された法王が、法座の背後にある釈迦牟尼像に礼拝すると、ティクセ・リンポチェが一歩前に進み出て法王をお迎えした。法王は壇の前方に歩み出ると、集まった聴衆を見渡し手を振られてから着座された。

法王の長寿祈願法要は『釈迦礼讃』の祈願文で幕を開け、お茶と儀式用の甘いご飯 “デシ” が配られ、仏陀と菩薩たちが招請されて沐浴の儀、マンダラ供養の偈頌の読誦へと続いた。

長寿祈願の儀式は、仏陀の教えの護持を誓った十六人の聖者である十六羅漢の祈請を中心に執り行われた。次に、礼拝、供養、懺悔をはじめとする七支供養が続き、供養法要が捧げられた。法王は供物の一部を口にされた。

ラダック仏教徒協会とラダック僧院協会の代表者が法王に敬意を表し、ティクセ・リンポチェがマンダラ供養を行った。仏陀の身・口・意の象徴と、僧衣、果物の入った托鉢用の鉢と錫杖しゃくじょうを法王に捧げると、法王はそれぞれを眉の辺りまで持ち上げて敬意を表さたれた。そして、八吉祥宝、転輪聖王の七宝、八吉祥財を載せたお盆が法王のご長寿を願って捧げられた。

ダライ・ラマ法王の長寿祈願法要のための伝統的な供物を掲げる僧侶たち。2025年8月17日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

供物を携えた地元の人々が列を成して次々に壇の前を通っていく中、『不滅の歌』と呼ばれる、法王の二人の家庭教師によって書かれた法王のご長寿を願う祈願文が唱えられた。この祈願文には以下の繰り返し部分が含まれる。


私たちは厚い信仰をもって祈願します
雪国(チベット)の守護者である御方、テンジン・ギャツォが
百劫ひゃっこうにわたって生きられますように
御方に祝福を注ぎ
長寿の願いが成就しますように


法王は参列者に向かって次のように述べられた。

「兄弟姉妹の皆さん、まず私が申し上げたいのは、地元ラダックの方々も他の地域から来られた方々、そして僧侶も在家信者も、私の長寿を祈るために揺るぎない信仰心をもってここに来られたということです。チベット仏教の伝統を護持するチベット人とヒマラヤ地域の人々が、私の長寿を祈願するというひとつの明確な目的でここに集ってくださっているのです」

「私自身について言えば、アムドのドメーで生まれ、中央チベットに移りました。チベットのすべての人々と護法尊は、強い信仰をもって私に信頼を寄せてくださいました。それゆえに、私はチベットの人々と神々に尽くす責任を担い、困難な状況下で人生を送り、多くの試練に直面してきました」

この時、供物を捧げる人々の最後尾に並んだ老人が祝福を授かろうと歩み出た。二つの帽子を重ねて被ったその老人の姿に、法王は思わず笑い出された。その後にチベットの旗を掲げたチベット人が続き、チベット旗を法王に捧げた。

長寿祈願法要で参列者に話をされるダライ・ラマ法王。2025年8月17日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「仏法応護を誓約したネチュン・チューギェルのようなチベットの守護尊は、私がチベット問題に対するなかで、常に私と共にいてくださいました。チベットの守護尊たちは、ネチュンの導きのもと衆生に寄り添って来られました。私がチベットにいたときは、主にポタラ宮殿と夏の離宮であるノルブリンカで暮らし、チベットの人々と伝統のため努め、チベットとチベット仏教に対する責任を真摯に担ってきました。また、長い年月にわたって、私は出世間の護法尊と世間の護法尊を招請して、チベット問題解決への助力を祈願し、護法尊たちもまた、お力を尽くしてくださいました」

「私自身は、幼少期から家庭教師のもとで仏教を学びました。仏教基礎学から始め、心と意識、論理学、般若学、中観の見解、高度な知識であるアビダルマ(論書)を学びました。私は一部の点については懐疑的ですが、いずれにしても、中観思想(マーディヤマカ)、論理学、認識論、智慧の本質といったチベット仏教の伝統の真髄を学びました」

「心の内なる科学、すなわち心と感情の働きを理解することに関して、今では現代の科学者たちでさえ、私たちの伝統から学ぶことに非常に熱心です」

「私はチベットで20年以上暮らし、多くの困難に直面しました。かつて北京で毛沢東主席と会い、私たちは異なるイデオロギーと哲学的観点を持っていることを知りました。その後、チベットで起きた混乱のため、私は故郷を離れざるを得なくなり、以来インドで亡命生活を送っています」

「私は仏陀の教えを守り広めることにある程度は貢献できたと思っています。これまで、世界中からの助言を求める人々に応え、精神的な指導者としての評価をいただくようになりました。宗教を信じるかどうかに関わらず、多くの人々が私がこれまで実践してきたことに対して敬意を示してくださっています」

長寿祈願法要でダライ・ラマ法王のお話に聴き入る参列者たち。2025年8月17日、インド、ラダック地方レー(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「私の生涯において、多くの人々が直接的または間接的に私に信頼を寄せてくださり、私はその人々のお役に立てるように祈ってきました。いま、ここで、皆さんにタシデレ(チベット語の挨拶)でご挨拶したいと思います」

「精神的な教えについて、また、世俗的な活動おいて、私が実践してきたことの如何を問わず、皆さんはここに集い、私の長寿を願って祈りを捧げてくださいました。私の長寿を皆さんが祈ってくださったように、私も皆さんの願いが叶うことを祈ります。皆さんの祈願と供物に感謝し、その願いが容易に成就されることを祈ります。ありがとうございます」

「注目すべき点は、世界でも最も人口の多い国の一つである中国本土で、仏教への関心が高まっていることです。過去には、私のことを反動分子だと言う人もいましたが、私は誰に対しても、決して恨みや悪意を抱いたりすることはありません」

「歴史的には、ソンツェン・ガンポ王の時代から、私たちは中国と強い絆を築いてきました。中国の人々が仏教への関心を持ち続ける限り、仏教は自然に広まっていくでしょう。私はこの広がりにできる限りの貢献をしたいと思います」

「私は菩提心生起の心を養うことを日々の修行の一部としています。この修行を深めるために、空の瞑想も実践しています。仏陀の深遠で広大なる教えが世界、特に中国に広まるにつれ、世界全体に平和と調和がもたらされることに期待を寄せています。また、ヒマラヤ地域の人々が安寧に暮らせ、インド・チベット国境に平和と平穏が訪れることを願っています。これは実現可能だと信じています」

「皆さんは、私の長寿祈願のために、信心と帰依の心で集ってくださいました。私もまた、堅固な決意を持って長く生きられるよう祈ります」と法王が述べられると、聴衆から拍手が湧き起こった。

長寿祈願法要で歌を披露するラダックのミュージシャンたち。2025年8月17日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

その後、法王の90歳の誕生日を祝福する歌をラダックのミュージシャンたちが歌い、次に地元のチベット子ども村(TCV:Tibetan Children’s Village)のグループが法王への感謝の印として温かい心を育むことを誓い、パフォーマンスを披露。法王のご長寿を祈願した。

法要の終わりに際して、十六人の聖者たちと四天王が再び招請され、法王のご長寿と仏法の繁栄を祈願する祈りが捧げられた。続いて、ガンデン僧院座主のジェツン・ロブサン・ドルジェ・リンポチェが、法王が長寿の願いを受け入れてくださったことへ感謝の意を込めて、感謝のマンダラを捧げた。そして、吉兆の祈願文がいくつか唱えられ、最後に法王のご長寿を願う偈頌で締めくくられた。


雪山に周りを囲まれたこの浄土には
すべての利益と幸福のすべてが生じる源である
観自在菩薩の化身テンジン・ギャツォ法王がおられる
法王の御足の蓮華が何百刧もの間健やかにとどまられますように

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『心を訓練する八つの教え』と『中観の四念住』 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250816 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250816 インド、ラダック地方レー

今朝、ダライ・ラマ法王は、シワツェルの法王公邸から法話会場奥のパビリオンまで車で向かわれた。法王は過去2回この会場でカーラチャクラ大灌頂を授けられている。会場は約5万人の聴衆で埋め尽くされ、法王到着時には、子供たちがステージ前方で問答を披露していた。

法話会場のカーラチャクラ・グラウンドへ移動されるダライ・ラマ法王。2025年8月16日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王が着席されると、全員で『釈迦礼讃』『般若心経』を唱え、つづけて「法話を聞くことで得られる功徳により、私が仏陀となって一切衆生を利益することができますように」という祈願文も唱えた。お茶と甘いご飯が配られ、短いマンダラ供養も行われた。

はじめに法王は、ご自身が祖国チベットを失い、インドに亡命した当時に思いを馳せられた。亡命後も心の故郷であるヒマラヤ地域に住み続けられている法王は、この地域の人々は観音菩薩と特別な縁があると述べたあと、亡命時の様子について語られた。
「ラサのノルブリンカ離宮を後にし、キチュ川を渡り、峡谷を抜ける峠道を登りました。故国を離れることは悲しかったが、誰も皆同じ人間であることを思い返していました。誰もが幸せを求め、苦しみを避けたいと願っているのだと。私は亡命するかもしれないが、それでも人々に教えを伝えることはできる、と感じていました」

「ヒマラヤ地域では、どこに行っても人々が信仰深く敬虔で、心の修行に励んでいます。チベット人は大きな困難に直面し続けており、中国の規制はますます厳しくなっていますが、ヒマラヤ地域の人々は常に我々の友人です」

「私は、観音菩薩の加持を受け、菩提心と正しい見解を育む修行をしたことで、菩提心という悟りの心と空性についての洞察を得ることができました。これは、誰にでもできることです。こうした修行に熱心に取り組むことは、誰でもできます。私からの主なアドバイスは、いつも心に菩提心と空の見解を留めておいてくださいということです。私自身、朝起きるとすぐ、この二つのテーマついてしばらく瞑想します。ここで言う “悟り” は、チベット語で ”チャン・チュプ” という二つの音節の言葉で表わされます。最初の ”チャン” はすべての過失や欠点を克服すること、”チュプ” は獲得可能なすべての善き特性に満たされることを意味します」

「世界中で人々が苦しんでいます。宗教を実践しているか否かに関わらず、人は幸せを望み、苦しみを避けたいと願っています。苦しみの根源は二つあります。一つは自己中心的で自己愛着的な態度をとること、もう一つは事物が他に依存せず自らの力だけで存在していると考える誤った見解を持つことです。私は朝起きると菩提心 ― 他者を利益するために自分自身が仏陀の境地を得ようという強い決意の心を起こします。そしてチャンドラキールティの『入中論』の一節を思い浮かべて空性を瞑想します。菩提心と空性という二つの原理は、仏陀の教えの核心です」

法話会で聴衆に語りかけるダライ・ラマ法王。2025年8月16日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「つい最近、私の前に仏陀のお姿が現れました。仏陀は顔を上げて私をご覧になると、手招きし、菩提心と空性を生起させる言葉を述べられました。私はとても幸せでした」

「仏陀の弟子である私たちは、菩提心と空性の見解を育むことを中心に据えて修行すべきです。敬虔な弟子として、毎日このことを思い返してください」

法王は、昨日がインドの独立記念日であったことに言及され、インドへの敬意を表されるとともに、この地に暮らす我々はここで享受している自由を喜ぶべきだと話された。我々は自分の人生を有意義にする機会を与えられている、と法王は述べ、それは他の生きとし生ける者を助けることによってである、と続けられた。インドの国には多くの宗教が栄え、調和が実現している。宗教の核心は、親切と非暴力、他者を傷つけないことの実践にある。だからこそインドは、世界の平和を確立するためにできる限りのことをすべきである、と法王は指摘された。

「今日は、大変多くの方々が集まってくださいました。訪れてくだった皆様、どうもありがとうございます」と法王は述べられた。
「私自身はチベット東北部のクンブム近郊に生まれ、のちにラサへ移り住みました。そこで家庭教師の先生方から仏教哲学を学んだことで、私は開眼しました。この世のすべての事物は幻のようなものであることを学びました。事物は、ある特定の姿や有り様で存在しているように見えますが、実際はそのようには存在していません。私は自分の人生を有意義なものにすることができたと感じています。私が話すことは、実体験に基づいています。どうか温かい心を持ち、他者を助けることの大切さを心に刻んでください」

ここで法王は『心を訓練する八つの教え』のテキストに目を向けられ、第4偈を読み上げられた。


悪い性質を持った有情たちが
悪行や辛苦に苛まれているのを見た時
貴重な宝を見つけたかのように
得がたいものとして大切に慈しむことができますように (第4偈)


著者のゲシェ・ランリタンパ師は、我々は他の生きとし生ける者達を慈しむべきであり、たとえ相手が悪い性質の者達であろうと、彼らが苦しむのを目にした時には彼らを慈しむべきである、と説いている。

法話会場で、聴衆に混ざってダライ・ラマ法王の話に耳を傾ける少年。2025年8月16日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)


誰かが私に嫉妬して
罵倒し、侮辱するなどひどい目にあわせても
負けは自分が引き受けて
勝利を他者に譲ることができますように (第5偈)

私が助けてあげて
大きな期待を寄せていた人が
理不尽にも私をひどい目にあわせたとしても
その人を聖なる導師とみなすことができますように (第6偈)


他人から批判された時は、彼らに対して怒るのではなく、その批判が理に叶った指摘であるかどうかを検証すべきである。自分に何らかの過失がないか見返してみるべきであり、もし自分に過失があると気づいたならば、その点を指摘してくれた相手に感謝すべきである。


要約すると、直接的にも間接的にも
母なるすべて〔の有情たち〕に利益と幸せを捧げ
母〔なるすべての有情たち〕の被害と苦しみをみな
ひそかに私が引き受けられますように (第7偈)

これらのすべて〔の修行〕が
世俗の八つの思惑に汚されることなく
すべての現象は幻のごときものと知って
執着を離れ、束縛から解放されますように (第8偈)


我々が人生で遭遇する苦しみは、誤った認識から生じる、と法王は説明された。しかし、あらゆる事物は幻のようなものであると理解すれば、我々の思い違いや煩悩は空へ溶けて消え去ると想像できるだろう。

続いて法王は、『中観の四念住』を読み上げられた。四念住とは四つの注意深い考察、すなわち、師に関する注意深い考察、無上の悟りへと至る利他心に関する注意深い考察、聖なる身体としての身体に関する注意深い考察、空の見解に関する注意深い考察、であると法王は列挙された。

法王は、二番目の念住に関連して、我々が苦しみに直面する原因は、自分の心が制御できておらず、その乱れた心から煩悩が生じるせいである、と知るべきだと述べられた。我々を慈しみ守ってくれた父母を思い出すと心が安らぐが、彼らもまた苦しみの中にあり幸せを得ていない。


欲望と憎しみを断ち、愛と慈しみを瞑想しなさい
心を野放しにせず、慈悲の中に安住させなさい


法王は、ご自身もこの偈頌のアドバイスを実践していると明かされた。

ステージ上から法話会場を眺めた風景。2025年8月16日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

四番目の念住 ― 空性の見解に関する深い考察 ― に関して、我々には事物が自らの力で独立して存在しているように見えるが、実際はそのようには存在していないと理解する必要がある、と法王は指摘された。

次に法王は、「チベットでは、顕教の修行と密教を融合させています」と語り始められた。
「密教においては本尊瑜伽、すなわち自身の身体を本尊の身体に変容させる観想をします。我々はまた、様々なレベルの微細な心についても学びます。通常の知覚感覚の基盤となる粗い意識レベルを超え、より微細な意識に到達し、その微細な意識を強めていきます。この澄み切った微細な意識は光明と呼ばれます。この光明の心こそが、空を体験することのできる心なのです」と述べられた。

「我々がチベットで守り伝えてきた仏教の伝統は、心理学の観点から見ても比類のないものです。無上瑜伽タントラにおいては、自身の微細な意識を認識し、その微細な意識を使って修行をします。他の伝統では、修行に関するこうした具体的な実践法は説かれていません。我々も他の伝統同様、悟りの心と空性の見解を育みます。しかし、光明と呼ばれる微細で内在的な心を育み、それを悟りへの道へと変容させることができるのは密教だけです」

「そのようにできるならば、粗いレベルの心は静まり、空を実体験できる微細な心を活用できるようになります。これは非常に深遠なことです」

「私はチベットのアムドで生まれ、ラサへ移り、そこで先生方から教えを受けました。教えについて勉強するだけでなく、それについて瞑想もしましたので、教わった内容を実際に体験することができました」

「今回、ヒマラヤ地域のこの地を訪れる機会を得ることができ、チベットと同じ伝統を受け継ぐ皆さんに教えを伝えることができました。今日に至るまで、チベットには素晴らしい聖者方が大勢いらっしゃり、傑出した大成就者もいらっしゃいました。皆さんも修行に励めば、彼らのようになれるかもしれません」

法王の後につづいて菩提心生起の偈頌を唱える聴衆たち。2025年8月16日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「菩提心をおこす機会は今ここにあります。菩提心を起こすのは善なることです。広大な世界のすべての衆生を利益するために自分が仏陀になろう、と考えてください。私に続いて次の偈頌を唱えてください」


私は三宝に帰依いたします
すべての罪をそれぞれ懺悔いたします
有情のなした善行を随喜いたします
仏陀の悟りを心に維持いたします

仏陀・仏法・僧伽〔の三宝〕に
悟りに至るまで私は帰依いたします
自他の利益をよく成就するために
菩提心を生起いたします

最勝なる菩提心を生起したならば
一切有情を私の客人として
最勝なる菩薩行を喜んで実践いたします
有情を利益するために仏陀となることができますように


法王は、自身が伝授を受けている二つの経典の教えを説き、歴代上師方から加持を受けた菩提心生起の儀式も行うことができた、と述べられた。続けて法王は、仏陀釈迦牟尼、ターラー尊、薬師如来、文殊菩薩、グル・リンポチェ、ツォンカパ大師の各真言とミクツェマの礼賛偈の口伝を授けられた。

法話会の最後にあたり、法王に感謝の意を表すマンダラ供養が捧げられ、『真実の言葉』の祈願文と『普賢行願讃』が唱えられた。

法王は、聴衆に向けて微笑みながら手を振られ、ご自身の公邸へと帰路につかれた。

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『修行道の三要素』法話会 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250725 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250725 インド、ラダック地方ザンスカール、カルシャ僧院ポタン

今日、早朝の太陽がザンスカール川の谷間を照らしていた。ダライ・ラマ法王の法座はカルシャ僧院のポタン(高僧の住居)のベランダに設けられ、カルシャ僧院に面していた。法王の説法を聞くために集まった推定2万1千の人々のうち、僧侶たちは寺院内で法王の後方に座り、在家の人々は法王の前方の地面に日傘を差して座っていた。法王が到着されると、学校の子どもたち、僧侶や尼僧たちの複数のグループが問答に打ち込んでいた。法王は人々を見渡すと微笑みながら手を振って、着座された。

カルシャ僧院ポタンの法話会に集まった約2万1千人の聴衆を見渡されるダライ・ラマ法王。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

チベット語で『般若心経』が読誦された後、『現観荘厳論』の偈頌が唱えられた。続いて宇宙全体を象徴するマンダラが捧げられ、次の偈頌が唱えられた。


大いなる仏法の太鼓が鳴り響き
有情の苦しみが取り除かれますように
あなたが何阿僧祇劫も留まり続け
仏法を説き続けてくださいますように


法王は、説法を始める前に地元の人々の一員であるかのようにザンスカールのラマの帽子を被られ、人々を喜ばせた。

法話を始める前に、ザンスカールの僧帽を被られるダライ・ラマ法王。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王は、次のように話し始められた。
「今日、私たちはインドのこの地に法話のために集いました。仏陀の教えをみなさんに知ってもらうことが私の目標です。雪山に囲まれた地、チベットで仏教は広まりましたが、今は国を失ってしまいました。しかし、チベットで維持されてきた仏陀の教えは、今、ヒマラヤ地域に息づいています。仏陀の教えは、これからも長く栄え続けるでしょう。一方、科学的な考え方を持つ西洋で、私たちの伝統に多くの人が興味を抱いています」

「心を変容することは私たちにとって目新しいことではありませんが、世界の他の地域では仏陀の教えに新たな関心が集まっているのです」

「“私は仏陀に帰依します…” と言うとき、私たちは仏陀という言葉が何を意味するのかを知るべきです。チベット語の “サンギェ(Sang-gyé)” の最初の音節は、粗いレベルの煩悩だけでなく、煩悩の習気じっけ(残り香)というより微細なレベルの汚れ(所知障)まで、すべての汚れを克服した人を指します。2番目の音節は、二つの真理(二諦)など知るべきものをすべて明確に知っていることを意味します。したがって、仏陀とは、すべての捨てるべきものを捨て、すべての知るべきものについて完全かつ明確な智慧を得た人なのです」

チベット語で「ダルマ(法)」を意味する「チュー」とは、あなたを守護するものを意味する。何から守ってくれるのか、それを私たちは学び、そして見出すべきである。

「釈尊はまず四つの聖なる真理(四聖諦)を説き、最終的に涅槃に入られましたが、その間に広範な教えを説かれました。やがて、ナーガールジュナ(龍樹)のような導師たちが、論理に照らしてこれらの教えを解説されました」

「仏教はソンツェン・ガンポ王とティソン・デツェン王の治世にチベットにもたらされました。ティソン・デツェン王はシャーンタラクシタ(寂護)、カマラシーラ(蓮華戒)、そしてグル・パドマサンバヴァ(蓮華生)をチベットに招聘し、スートラ(顕教)とタントラ(密教)の経典および実践に基づく教えを紹介し、確立されました」

法話会で、大画面に映し出されたダライ・ラマ法王を見る人々。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「仏法とは心の訓練をすることです。寺院や仏塔を建てることではなく、心を変容することです。例えば、忍耐を培うことができれば、問題や困難に直面しても落胆することなく対処できるようになります。仏陀が歩み、教えた道に従う勇気を持つことでしょう」

「苦しみとは何か、なぜ苦しみが生じるのかを理解する必要があります。先ほど申し上げたように、この教えは困難に立ち向かう勇気を与えてくれます。私の場合、先生方の優しさのおかげで幼い頃から仏陀の教えを学んできました。最初は教えの目的を理解していなかかったものの、成長するにつれて教えが人生においていかに実践的で役立つものかを理解するようになりました。様々な困難に直面した時、私の精神的な理解に大きな違いをもたらしてくれました。教えを理解することで、心が穏やかでいられるのです」

「私の修行は、主に菩提心と空の見解の2つを培うことです。空を理解するために分析を駆使していますが、これは本当に役立っていると感じています」

「仏陀の教えには何があるのでしょうか?それは、煩悩に圧倒されることなく、心を変容する機会を与えてくれます。大切なのは、教えを学び、理解し、実践することです」

法王は、カルシャ僧院の下にある巨大な新しい仏像を指し示しながら、仏像を見るときに仏陀の教えを思い起こすべきであると説明された。
「私は遠くアムドで生まれ、ラサに来ました。ラサで教えを聞き、考え、そして実践しました。仏陀の教えを実践することで、私たちは自分の心を変容するだけでなく、社会の調和にも貢献できると信じています」

「私たちはここザンスカールに、政治的な動機ではなく、信仰と過去の祈りのおかげで集まりました。私たちは教えを学び、考察し、その味を体得する必要があります。外見的な魅力ではなく、穏やかで平和な心と内なる強さを育むことが大切なのです。心の平和を保ち、意義深い人生を送ることが私たちの目標です。学べば、教えに対する確信が得られます。論理に基づいて洞察を得ることができれば、心を変容し、内なる平和を達成することができます」

ダライ・ラマ法王の説法に耳を傾ける聴衆。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「本日は、『修行道の三要素』という短いテキストについて話すように依頼されました。このテキストは、まず師への敬意を表してから、このように続きます。“勝利者(仏陀)のすべての教えの真髄を 聖なる勝利者の息子(菩薩)たちが讃える修行の道を 解脱を望む恵まれた者たちが入るべき門戸を 私ができる限り説くことにしよう”

「第3偈には、“純粋な出離の心がなければ 輪廻の海で快楽の果を求める心を鎮める手段はない 輪廻への愛着により、有情たちは完全に束縛されているのだから はじめに出離の心を求めなさい” とあります。そして第4偈に、こう続きます。“有暇と幸運を得ることは難しく 人生には無駄に費やす時間はない これに心を慣らしていけば、今世への執着は色褪せていく 因果の法に偽りはないことや輪廻のさまざまな苦しみを何度も考えてみるならば 来世への執着も色褪せていく”

「世界を見渡すと様々な人がこの世の喜びに執着していますが、それが苦しみの源になっているのではありませんか?真摯な出離の心があれば、心は穏やかになり、他者を傷つけようとはしなくなります。キリスト教やイスラム教など、世界の様々な宗教において、信者たちが真摯にその教えを実践すればそこに平和が訪れます」

「人間の生には18の特別な資質(有暇具足うかぐそく)があります。教えを学び、意義ある人生を送るいい機会です。教えは理解しなければ、自分と他者がより大きな幸福を達成する助けにはなりません」

「第3偈にあるように、“純粋な出離の心がなければ 輪廻の海で快楽の果を求める心を鎮める手段はない はじめに出離の心を求めなさい”

「私は子どもの頃、利他の心という感覚はほんのわずかしかありませんでした。しかし、師であるリン・リンポチェとティジャン・リンポチェから教えていただき、深く考えるうちに、他者への思いやりが育まれ、大きくなっていきました。その結果、今、人生を振り返ると、とても有意義な人生だったと感じています」

集まった人々に説法をされるダライ・ラマ法王。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「私は様々な困難に直面してきましたが、出離心、菩提心、そして正しい空の見解に支えられ、仏陀の教えに従うという揺るぎない決意を貫いてきました。世の中の争いを目にするたび、他者を助けたいという勇気と願いが強くなります。それは、落ち込むのではなく内なる強さを育み、自己中心的な縛りを緩めるのに役立ちます」

「輪廻においては、苦しみは様々な原因と条件の結果として、あらゆる場所で生じます。苦しみを目にすると、出離心が促されます。人は幸せになりたいと思いながら、ほとんどの場合、現世の快楽に心を奪われているように思います。自分の人生について考えてみると、このような執着がないことがいかに良いことかと気づきます。むしろ私は、他者のために働くことに重点を置いています」

「憎しみや執着に心を振り回されていると、苦しみと困難に直面するだけです。利他的な菩提心をある程度育めば、今生と来世に自信を持てるようになります」

「けして自慢ではありませんが、私は毎朝目覚めるとすぐに菩提心について深く考えます。そうすることで、他者の幸福のために働く自信を育むのです」

「第6偈には、“出離の心もまた 純粋な発菩提心に伴われていないと 無上のさとりという卓越した幸せの因とはならないので 智慧ある者たちは最もすぐれた菩提心を起こしなさい” とあります。第7偈と第8偈には、そのような心がどのように生じるかが概説されています。“〔欲望、執着、邪見、無知など煩悩の〕四つの激流に押し流されて 絶ちがたい業にきつく束縛され 我執という鉄の檻に閉じ込められて 無明の厚い暗闇に覆い尽くされている” “限りない輪廻の生を繰り返し 三つの苦しみに絶え間なく苛まれている このような母〔なる有情〕たちのありようを思い 最もすぐれた〔菩提〕心を起こしなさい”

「自分と同じように、他の誰もが苦しみたくない、幸せになりたいと願っています。しかし苦しみの原因と幸せの原因を理解していないため、貪欲、怒り、そして無知という三毒に圧倒されてしまいます。菩提心を心に馴染ませて他者の苦しみを目にするなら、悟りを得て他者のために尽くしたいと思うのです」

ダライ・ラマ法王の法話会が行われているカルシャ僧院ポタン。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「これは第8偈に反映されています。“三つの苦しみに絶え間なく苛まれている このような母〔なる有情〕たちのありようを思い 最もすぐれた〔菩提〕心を起こしなさい”

「すでに述べたように、誰もが幸せになりたい、苦しみたくないと願っていますが、苦しみは私たちに降りかかり、幸せは遠く離れているように思えます。ですから、苦しむ母である他者のために尽くすことを考えなければなりません」

「正しい見解を培う理由は、第9偈に明確に述べられています。“〔すべてのものの〕ありようを正しく理解する智慧がなければ 出離の心や菩提心を育んでいても 輪廻の源を絶ち切ることはできない それ故、縁起(依存関係によって生じること)を正しく理解するための努力をしなさい”

「縁起の “縁(因縁)” とは、何であれ、外的なものでも内的なものでも仏陀の最高の徳に至るまで、縁は〔それを観察することによって〕空性の理解を妨げないことを意味しています。“起(生起)” とは、原因と条件においてあらゆる事物がどのように存在するかを指します」

「幸せを目指し、幸せの原因を作り、苦しみの原因を克服することは、非常に良いことです。私がするように、目覚めたらすぐ菩提心と空性の見解について深く考えるならば、本当に実践的な恩恵がもたらされることが分かるでしょう。ここにいる誰もがみな、苦しみを望まず、幸せになりたいと思っています。苦しみは、私たちの自己中心的な考え方から生じます。これらに対抗するには、できる限り他者を大切にし、自己中心的な考え方を弱めるように努めなくてはなりません」

「この利他的な考え方を育んで心を変容させる方法は、本当に役立つと思います。他者を大切にすることについてよく考え、心に馴染ませると、内なる変容が明らかにもたらされます。ぜひ、これをできる限り実践してみてください」

ダライ・ラマ法王の説法に耳を傾ける経頭とその補佐たち。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「先ほど言ったように、私は幼い頃から心の訓練をしてきましたが、年を追うごとに自分の心が変化してきたことに気づきました。ですから、法友のみなさん、ぜひ菩提心を育んでください。これらの要点に親しむとごく自然に心に変化がもたらされます。無始以来、私たちは執着と憎しみに馴染んできました。もしこれらの煩悩への解毒剤を育むことができれば、自己中心的な考えと現実のありように対する誤った認識を減らすことによって、徐々に自分の心を変容できるようになるでしょう」

「第10、11、12偈では、このように説かれています。“輪廻と涅槃の一切の現象が 因果の法を決して偽らないことを知り 認識対象に〔自性があるという〕誤った考えをすべて断滅した者は 仏陀の喜ぶ修行の道に入る” “あらわれとは誤りなく縁起するものであり 空とは〔自性を〕受け入れないことである この二つの理解が別々にあらわれている限りは まだ成就者〔仏陀〕の真意を正しく理解していない” “〔この二つの理解が〕いつの日か交互でなく、同時にあらわれ 縁起に偽りがないことを見ただけで 認識対象には〔実体があるという誤った〕とらえかたをすべて滅したならば その時こそ〔空の〕見解の分析は完全なものとなる”

「内なる自己変容への修行道の三要素は、出離心、菩提心、正しい見解です。私はこれらを培うよう努めてきましたが、本当に役に立つと実感しています。仏陀の教えに関心を持つ人が増えています。私たちも仏教徒であり、世界の幸福のため、知っていることを伝えるために最善を尽くさなければなりません。利他的な考え方を心に馴染ませると、自己中心的な考え方は弱まっていくでしょう」

次に法王は、菩提心生起の短い儀式を執り行うと告げられた。まず法王は、出席者全員に、功徳を積んで浄化を願う七支供養を唱えるように、そして次の偈頌を自分の後に続いて唱えるようにと促された。


私は三宝に帰依いたします
すべての罪をそれぞれ懺悔いたします
有情のなした善行を随喜いたします
仏陀の悟りを心に維持いたします


仏陀・仏法・僧伽〔の三宝〕に
悟りに至るまで私は帰依いたします
自他の利益をよく成就するために
菩提心を生起いたします


最勝なる菩提心を生起したならば
一切有情を私の客人として
最勝なる菩薩行を喜んで実践いたします
有情を利益するために仏陀となることができますように


法王は、釈迦如来、観自在菩薩、文殊菩薩、ターラー、薬師如来、グル・リンポチェの真言、そして最後にツォンカパ大師の祈願偈の口頭伝授を授け、再び聴衆に自分の後に続いて唱えるように求められた。

ダライ・ラマ法王による法話会が終わり、会場を後にする人々。2025年7月25日、インド、ラダック地方ザンスカール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王は、最後に『修行道の三要素』こそが真の仏教徒になるための究極の道であると述べられた。

感謝のマンダラが供養され、続いて法王の長寿を祈願する『真実の言葉』、チベットの護法尊への祈願文、そして吉祥の偈頌が唱えられた。

法王は、この行事の開催に携わったすべての人々と、出席者全員に感謝の意を表された。

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ザンスカールの人々による長寿祈願法要 https://www.dalailamajapanese.com/news/20250723 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250723 インド、ラダック地方ザンスカール、パダム

晴れ渡る青空のもと、ダライ・ラマ法王はカルシャ僧院のポタン(高僧の住居)を後にし、ドゥジン・ポタンへと車で向かわれた。ここは、1988年7月にカーラチャクラ灌頂が行われた聖地として知られている。門前では太鼓の音が響き、沿道には絹のスカーフや花束、新鮮な杏を手にした人々の姿が見られた。法王の通過に際して、多くの人々が深く一礼し、敬意を表した。

ザンスカール・モンラム・チョルテン(仏塔)の礎石を据えるダライ・ラマ法王。インド、ラダック地方ザンスカール、パダム(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

ダライ・ラマ法王の車がカーラチャクラ法話会場に差し掛かると、僧たちが法螺貝、太鼓、シンバルを奏でて歓迎した。最初に法王が向かわれたのは、ザンスカール・モンラム・チョルテン(仏塔)の建設予定地である。そこでは、インド様式の半球型仏塔模型をご覧になった。説明ポスターには、図書館、美術館、ギャラリー、事務局、講堂、手工芸センターなどを備えた施設となる予定であることが記されていた。法王はプロジェクトを紹介する銅板を除幕されたのち、石工の鏝を使って礎石を据えられた。黄金の傘の陰に立たれた法王は、祝福の言葉を唱え、計画の成功を願って穀物を空に向かって撒かれた。

その後、法王はカーラチャクラ法話会場へと向かわれた。道中では、二つのグループが活発な問答を交わしていた。一方には学校の子どもたち、もう一方には民族衣装をまとったザンスカール出身の女性たちの姿があった。

法王は玉座の前に着座された。その右手には、シャルパ・チュージェ・リンポチェ、ナムギャル僧院長タムトク・リンポチェ、ガンデン僧院シャルツェ学堂僧院長とラギャル・ヤンシー・リンポチェが並んでいた。

続いて、ザンスカール仏教協会(Zanskar Buddhist Association)、ザンスカール僧院協会(Zanskar Gompa Association)、そして夏季大問答会の主催者によって組織された、地元の人々によるダライ・ラマ法王の長寿祈願法要が始まった。法要は三宝への帰依を唱える偈頌で幕を開け、法王の長寿を諸仏に願い、マンダラ供養が行われた。経頭たちによる十六羅漢の祈請が法要の中心となり、「我らの師の命が安泰でありますように」という祈願の句が繰り返された。

パダムのカーラチャクラ法話会場に到着されたダライ・ラマ法王。2025年7月23日、インド、ラダック地方ザンスカール、パダム(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

十六羅漢とは、仏陀の教えを護持することを誓った聖者たちである。最初に祈請されたのは、カイラス山に住むとされるアンガラだった。

「私たちの師が長寿であり続け、法を説き続けられるよう、この供養を捧げます」と偈頌が唱えられる中、ダライ・ラマ法王には、精緻なマンダラ供養と僧衣、錫杖しゃくじょう、果物などの伝統的供物に加え、八吉祥宝、転輪聖王てんりんじょうおうの七宝、八吉祥財が捧げられた。

地元の要人や支援者たちは、法王に敬意を表し、祝福を受けるために進み出た。様々な供物を携えた地元の人々の行列がお堂の前を通り、周囲を巡った。その最後尾には、チベットの旗を高々と掲げた一人の老翁の姿があった。

祈願は続いた。「世界の平和を導く偉大な舵取りよ、百劫の寿命を保たれよ。観音菩薩の化身、偉大なる慈悲の体現者たる御方よ、六道すべての衆生のために、どうか久しくご在世を。世界の平和の灯火よ、どうかご長寿を。信仰深き者たちは心の奥底からあなたに祈りを捧げています。どうか我らの師の命が安らかであり、仏法が繁栄し広まらんことを」

長寿祈願法要にて、ダライ・ラマ法王に供物を捧げる地元の人々。2025年7月23日、インド、ラダック地方ザンスカール、パダム(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

十六羅漢および四方の守護尊が、再び招請された。アンガラに加え、ピンドーラバーラドヴァージャ、カナカヴァッツァ、カナカ、スビンダ、バクラ、バドラ、カーリカ、ヴァジュラプトラ、シュヴァパーカ、パンタカ、ラーフラ、ナーガセーナ、ヴァナヴァーシン、アジタ、チューラパンタカが列席している。

「我らの師の命が安泰でありますように 仏法が繁栄し、広まりますように」聖者の山の前方にある水晶の森に住まい、百羅漢に囲まれて静かに坐す長老アジタのもとへ祈願が捧げられた。続いて、長老カーリカとヴァナヴァーシンが招請され、「願わくは我らの師が長寿を保ち、仏法が栄え、広まりゆかんことを。偉大なる尊者方の吉祥が満ちあふれんことを」と祈りが続いた。

回向の祈願が唱えられた後、『真実の言葉』の祈願が続けて唱えられた。

次に、ダライ・ラマ法王が参列者に向けて語られた。
「今日、この吉祥なる地で、皆さんは私に盛大な長寿供養を捧げてくださいました。私は、衆生と仏陀の教えのために長く生き続けるでしょう。これまで、私がチベットにいた時も、中国やモンゴル、ヒマラヤ山脈を越えた地域や他の多くの場所を訪れた時も、人々は揺るぎない信仰と深い敬意をもって、私を『勝者テンジン・ギャツォ、ダライ・ラマ』と呼んでくれました。こうした多くの方々が、私の長寿を祈ってくれています」

カーラチャクラ法話会場にて行われたラダックの人々による長寿祈願法要で、参列者に語りかけられるダライ・ラマ法王。2025年7月23日、インド、ラダック地方ザンスカール、パダム(撮影:テンジン・チョジョル / 法王庁)

「今生において、私はチベット人として生まれ、チベットで育ちました。自分自身が満足できるようなことは、あまり成し遂げられていないかもしれませんが、このヒマラヤ山脈を越えた地域では、老若男女、出家在家を問わず、すべての人々が心の底から私を信頼してくれています。そしてまた、仏陀の教えが繁栄するよう、祈りを捧げてくれています」

「ここでもまた、私の長寿を願う儀式を行ってくださいました。チベットの周辺に暮らすヒマラヤ山脈以北の人々は、私に対して揺るぎない信仰を抱いてくれています。しかし、それはこの地に限ったことではありません。仏教が伝統的に根付いていない西洋においても、仏陀の教えを深く理解したうえで信仰する人々がいます。そうした進歩的な知識人の多くが、ダライ・ラマである私を敬愛してくれています。これは特別なことであり、とても珍しいことです」

「チベットの伝統では、ラマたちは高い玉座に座り、人々はその足元にひれ伏して敬意を表します。しかし西洋では、人々は科学的な思考を持っています。彼らの敬意は、単なる信仰に基づくものではなく、仏陀の教えを理解したうえでのものです。彼らは『これは私のラマだ、ラマがこう言っているから従おう』というように、ただ盲目に従うことはありません」

「私自身について言えば、私は常に誠実であろうと努めてきました。仏教全体の教えや、私たちの多様な精神的伝統、そして全ての衆生の利益のために尽くしてきました。その結果として、私の言葉を心から受け止め、信頼を寄せてくれる人々がいます」

「この吉祥なる地においても、多くの信心深い人々が集まり、私の長寿を願う祈りを捧げてくれました。皆さんの心からの信仰の力によって、私の長寿の祈願が成就しますように」

「ザンスカールの皆さんと私は、長年にわたって深い繋がりを持ってきました。私はダライ・ラマという称号を持っていますが、子どもの頃から論理学や認識論(プラマーナ)を学んできました。また、般若学や中観思想(マーディヤマカ)、その他の学問も学び、最終的には、ラサで大祈願祭(モンラム・チェンモ)の期間中にゲシェ・ララムの学位を取得しました。それ以来、私は仏教の教えと一切有情のために、心から尽力してきました」

カーラチャクラ法話会場で行われたラダックの人々による長寿祈願法要にて、伝統衣装を身にまとい、ダライ・ラマ法王のお言葉に耳を傾ける地域住民たち。2025年7月23日、インド、ラダック地方ザンスカール、パダム(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「1954年に中国を訪れた時、私は毛沢東とかなり親しくなりました。ある時、彼は私に『宗教は毒だ』と言いましたが、私は心の中で、それは愚かな考えだと思いました。私たちが実践している仏教の伝統、すなわちスートラ(顕教)とタントラ(密教)を融合したものは、非常に科学的なアプローチを取っています。だからこそ、科学者たちが私のもとを訪れ、感情や心についての議論を交わすのです。仏教には理性と論理によって証明できる知的な側面があります」

「私は子どもの頃からこの伝統のもとで学んできました。そして、身(身体)・口(言葉)・意(心)のあり方において、師たちが示してくれた美徳を思い起こすたびに、深い感謝の念が湧いてきます」

「私たちが守り続けているこの仏教の伝統は、理性に基づいたものです。ここに多くの皆さんが集い、揺るぎない信仰と誠実な思いで、私の長寿を祈ってくださいました。私自身としても、まだ長く生きるだろうと感じています。私の寿命については予言もありますし、夢の中にもその兆しが現れています」

「これまで私は、仏法と衆生のために最善を尽くしてきました。また、世界の平和と非暴力のためにも働きかけてきました。これは、人類の幸福のために私が一心に実践してきたことです。そしてどうやら、土地の精霊や護法尊たちも、私の行いを喜んでくださっているようです」

「皆さんは私がさらに何十年も生きられるよう、心の奥底から祈りを捧げてくださいました。私はこれまで仏陀の教えを広めること、そして世界全体への貢献にもなかなか良い働きをしてこられたと思っています。私自身の科学的な見解を通して、仏陀の教えを現代の科学者たちとも分かち合ってきました。彼らは私が話すことに敬意を示してくれます」

「仏陀は私たちに大いなる慈悲を注いでくださいました。その教えは、ナーガールジュナ(龍樹)やアサンガ(無著)などの偉大な師たち、そしてチベットにおけるさまざまな伝統の比類なき師たちによって説かれてきました。私たちは、このスートラ(顕教)とタントラ(密教)を兼ね備えた完全なる仏陀の教えが末永く在続し、世界の衆生の助けとなるよう祈っています。皆さん、本当にありがとうございました」

ダライ・ラマ法王は近くにあるパダム人民宮殿(パダム・ミマン・ポタン)まで徒歩で向かわれ、昼食をとられた後、カルシャ僧院のポタンへと車で戻られた。

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ダライ・ラマ法王からのお礼のメッセージ https://www.dalailamajapanese.com/news/20250711 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250711 親愛なる兄弟姉妹の皆様へ

私の90歳の誕生日に寄せて温かなお祝いの言葉をいただき、心より感謝申し上げます。皆さんのお心遣いに私は深く感銘を受けています。

90歳の誕生日は人生において重要な節目とされています。私はこれまで、思いやりと優しさを広めることに専念してきました。それこそが、この世界における平和と幸福の土台であると信じており、これからもその歩みを続けていくつもりです。

私が日頃から友人や支援者の方々にお伝えしているように、皆さんにもぜひこの取り組みに加わっていただきたいと願っています。思いやりの心で他者を助ける意味ある人生を歩んでください。それこそが、私にとって最高の誕生日プレゼントとなるでしょう。

私の人生が世界中の人々に少しでも役立ってきたのであれば、それは何よりの喜びです。残りの人生も私は他者のために尽くしていくつもりです。

感謝とともに、皆様の幸せを心よりお祈りしています。


ダライ・ラマ
2025年7月10日

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満九十歳を迎えるにあたって https://www.dalailamajapanese.com/news/20250706 Don Eisenberg https://www.dalailamajapanese.com/news/20250706 このたび満九十歳を迎えるにあたり、チベット人コミュニティをはじめとする様々な場所で、支援者の皆さん、友人の皆さんが祝賀のためにご参集くださっているものと思います。多くの方がこの機会を活用され、思いやり、やさしい心、そして利他の心の大切さを率先して見つめ直そうとされていることに、心から感謝したいと思います。

私自身は一人の仏教僧に過ぎず、普通は誕生日を祝うこともありません。しかし、皆さんが私の誕生日に際して様々な行事を催して下さっていますので、私も皆さんといくつかの考えを共有できればと思います。

物質的な発展のために努力するのは重要なことですが、同時に、心の平安を重視することが大切です。親しい人だけでなく、すべての人に対して思いやりを持ち、善い心を育む。そうすることで、皆さんはこの世界をより良い場所とすることに貢献できるでしょう。

私自身のことについて述べるならば、私は引き続きこれまでの使命に取り組んでいきたいと考えています。それは、人間的価値を高めること、異なる宗教間の調和を促進すること、心や感情のはたらきを説く古代インド哲学の智慧にさらに脚光を与え、チベット文化とその遺産をより多くの皆さんに知って頂くことです。チベットの文化遺産は、世界に貢献できる可能性を大いに秘めているのですから。

私は、釈尊やシャーンティデーヴァ(寂天)のようなインドの学匠たちの教えを通して、日々の生活における決意や勇気を育んでいます。


この虚空が存在する限り
有情が存在する限り
私も存在し続けて
有情の苦しみを取り除くことが出来ますように
シャーンティデーヴァ『入菩薩行論』第10章55偈


心の平和と慈悲の心を育むため、私の誕生日という機会をご活用いただき、深く感謝申し上げます。ありがとうございました。タシデレ。祈りをこめて。


ダライ・ラマ
2025年7月5日

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