トゥプスン・ダルゲリン僧院で落慶式典、法話と観音菩薩の許可灌頂

2017年4月6日

インド、アルナーチャル・プラデーシュ州ディラン

今朝、トゥプスン・ダルゲリン僧院の新本堂では、『上師供養(グル・ヨーガ)』の偈頌を読誦する声で一日が始まった。ダライ・ラマ法王のディランご訪問を歓迎する為、近くの村の出身者である内務担当閣外大臣シュリ・キレン・リジジュ氏が本堂の落慶式典の前に法王に謁見した。リジジュ氏は国会の会期中で落慶式典には参加できないのである。


ダライ・ラマ法王の前で仏教哲学の問答を披露する在家信者たち。2017年4月6日、インド、アルナーチャル・プラデーシュ州ディラン(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)
落慶式典において、法王がアルナーチャル・プラデーシュ州知事パドマナバ・アチャリヤ氏と同首相ペマ・カンドゥ氏の間の席に着座されると、マンダラ供養を皮切りに式典がスタートした。続いて地元の男女の在家信者たちによる問答が披露された。

トゥプテン・リンポチェは、「アルナーチャル・プラデーシュ州にも人々がナーランダー僧院の伝統を学べる場所を作るべきである」とのダライ・ラマ法王のアドバイスに鼓舞され、この僧院が建てられたことを語った。ここでは僧俗を問わずナーランダー僧院の伝統に基づく学習と実践の指導が行なわれている。トゥプテン・リンポチェはこれまでの法王のご指導に感謝し、今後も見守って下さるようにとお願いした。

次にTN・トンドク州議会議長とシュリ・パドマナバ・アチャリヤ州知事がそれぞれスピーチを行った後で、法王は70億の人類が一つの家族である、というお話から講演を始められた。

そして、禍が福に転じ得ることを、ご自身の旅程の変更を例にとって話された。

「先日のグワハティからディブルガーへ向かうフライトは、大変な悪天候に見舞われました。あまりにも揺れたので、私の人生はこれで終わりなのではないかと思ったほどです。ですから私たちはヘリコプターでの移動を諦め、陸路タワンに向かうことに決めました。しかし、そのおかげで、私は空路で行くよりもはるかに多くの人々に会うことが出来たのです」


トゥプスン・ダルゲリン僧院新本堂の落慶式典でカメラを構える報道関係者たち。2017年4月6日、インド、アルナーチャル・プラデーシュ州ディラン(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)
法王は、エジプト、中国、インダスという古代の著名な文明のうち、偉大な思想家を最も多く生み出したのはインダス文明である、と述べられた。インダス文明の潮流に仏教、特にナーランダー僧院の伝統があり、この伝統がアジア全体に広まったと言える。そして法王は以下のように語られた。「すべての現象は相互依存により生じるのであって、本来的に実体を持って存在する現象は何もない、というナーランダー僧院の伝統思想の要旨は、私たちが悪しき感情(煩悩)に対処する為に有効な手段であり、それは私の経験に基づいて実証できるものです」

「釈尊は仏教の創始者であるばかりでなく、偉大な思想家であり、また、弟子たちにご自分の教えを鵜呑みにするのではなく、論理に照らして精査し、吟味するようにと述べられた科学者でもありました。そしてナーガールジュナ(龍樹)やブッダパーリタ(仏護)のような過去の哲学者たちも釈尊がおっしゃったことを実践されたのです」

「しかし現代のインドでは西洋化が進み、物質的な豊かさばかりに目が行くようになり、心の平和を顧みることがほとんどなくなってしまっています。そこで、心と感情に関する古代インドの智慧を現代社会の普通教育に組み込んで活かす必要があるのではないでしょうか」

法王はこの僧院の学習拠点としての役割について触れられ、今までの実績に対して称賛の言葉を述べられた。トゥプテン・リンポチェは法王と州知事、州の首相に釈迦牟尼仏像を献呈した。地元立法議会のプルパ・ツェリン氏が法王への謝辞を述べて落慶式典は閉幕し、来賓たちは昼食会場へと移動した。


2万人の聴衆に向かってお話をされるダライ・ラマ法王。2017年4月6日、インド、アルナーチャル・プラデーシュ州ディラン(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)
昼下がりになって法王は、野外に設けられた法話会場に下りて来られた。会場は2万人の聴衆で埋め尽くされていた。そこで法王は午後の予定について説明された。

「今日は、ゲシェ・ランリタンパの『心を訓練する八つの教え』(lojong tsikgyema)について解説し、その後、苦界にある者たちを苦しみから解放する観音菩薩の許可灌頂を授けます。その前に、まず『上師瑜伽(グル・ヨーガ)』(lama neljor)の口頭伝授を行います。上師とは観音菩薩そのものである精神的な導師のことです。ですから私が許可灌頂の準備をする間、『グル・ヨーガ』の偈頌を唱えていてください。

『グル・ヨーガ』の偈頌の読誦とそれに伴う供養法要の間、男性と同じように儀軌に参加する女性の信者たちが目を引いた。彼女たちは読誦に加わり、楽器を演奏し、法王に自ら供物を捧げた。

供養法要の後で、法王は次のようにお話を始められた。
「私たちがここに集まったのは、商売や娯楽の為ではありません。今日の世界において、人々は目や耳などの感覚器官で味わう快い体験を求める余り、心の幸せを築くことを忘れています。すべての伝統的宗教は心の平和を作り出す方法を教えていて、どの宗教においても信仰は不可欠な要素です。しかし、仏教における信仰は智慧を伴ったものでなければなりません。その為に仏教では知性を使うことが求められます。無知は不幸の源であり、現実を見抜く洞察力によって無知を取り除くことが出来るのです」

「仏教を心の科学と呼ぶ人がいるように、仏教は理解を通して心によき変容をもたらします。怒りや執着などの煩悩は無知に起因し、仏陀の教えは現実のありようを洞察力によって見抜くことに根差しています。科学者たちは、すべての現象は相互依存によって成り立っている、という仏教の見解を評価していますが、科学の世界においてもそれが実証できるのかと尋ねると、それはまだ出来ていない、と答えます」


ダライ・ラマ法王のお話を聴く2万人の聴衆。2017年4月6日、インド、アルナーチャル・プラデーシュ州ディラン(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)
法王は、聴衆に向かって、手元に配られた『心を訓練する八つの教え』のテキストを開いて読むようにと呼びかけられた。そして、このテキストは、感覚を通して得られる悦びに浸るのではなく、幸せを築くために心を訓練するべきことを説いている、と述べられた。

テキストの解説を終えられた法王は、苦界にある者たちを苦しみから解放する観音菩薩の許可灌頂の授与に移られた。この灌頂は、聖ターラー菩薩から直接加持を授かったことで知られるタクプ・ドルジェ・チャンの清らかなビジョンに由来する成就法である。法王は、この灌頂を授かる毎に悪趣への転生の扉が一つずつ閉じられていく、と説明する伝統があることを話された。灌頂の儀軌の中で、法王は聴衆を菩提心生起の儀式へと導かれ、最後に、自他ともに積んだ善行を喜び、一切有情の悟りの因として捧げる随喜の偈頌を唱えて締め括られた。

明日法王は、ディランを出発して4,170メートルのセラ峠を越え、陸路タワンに向かわれる予定である
 

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