インド国立警察学校訓練生へのご講演

2017年2月11日

インド、テランガーナ州 ハイデラバード

今朝ダライ・ラマ法王はヴィジャヤワーダからハイデラバードへ向かわれた。短く円滑なフライトの後、法王がハイデラバード空港に到着されると、サルダール・ヴァッラブバーイー・パテール国立警察学校の代表者たちが法王を出迎えた。その後法王は車で警察学校に移動され、ラジャスタン・バワン・ゲストハウスにおいて初の女性理事長アルナ・バフグナー警察長官の歓迎を受けられた。


サルダール・ヴァッラブバーイー・パテール国立警察学校で殉職者の記念碑に花輪を捧げられるダライ・ラマ法王。2017年2月11日、インド、テランガーナ州 ハイデラバード(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)
139人のインドの警察の訓練生、ブータン、モルジブ、ネパールからの15人の訓練生を含む約200人の聴衆が待つ中央ホールに到着されると、法王は檀上の席に着かれ、次のように述べられた。

「いつも講演では立ってお話しするようにしているのですが、今日は昨日のスケジュールの疲れがまだ少し残っています。ですから座ったままお話しすることをお許しいただけますでしょうか?」この法王の問いかけに対して、「イエス、サー!」というきびきびとした返事が一斉に戻ってきた。そこで法王は以下のように話し始められた。「私はいつも『兄弟姉妹の皆さん』、という参加者の方への呼びかけで講演を始めます。それは私たちが皆同じ人類だからです」

そして法王は、「人類はひとつの人間家族である」ということについての一般的なお話をされ、次のように続けられた。

「私は再びこの警察学校を訪問することができて、大変嬉しく思っています。インドの初代副首相であったサルダール・ヴァッラブバーイー・パテール氏は長い目で物事を捉える決断力のある方でしたので、私はパテール氏を賞賛しています。サルダール・ヴァッラブバーイー・パテール国立警察学校という名称は、パテール氏のお名前にちなんで名付けられたのです。私にリトリートセンターを思い起こさせるこのような心地よい環境で訓練を受けられる皆さんは、とても恵まれていると思います。私が先ほど警察長官とお話ししていた時、射撃場はどこにあるのかお尋ねしたところ、向こう側にあるとのことでした」


サルダール・ヴァッラブバーイー・パテール国立警察学校でお話をされるダライ・ラマ法王。2017年2月11日、インド、テランガーナ州 ハイデラバード(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)
「1956年に初めてインドを訪れた時、ボディーガードの一人が膨らんだジャケットを着用していることに気づきました。そこで私は、そこに何が入っているのかを尋ねてみました。すると彼は私に銃を見せながら、『これは罪を作る道具です』と答えました。しかし、私は人の行為が『罪』になるかどうかは、それを行なう動機と目的に大いに依っていることを明確にする必要があると思います。皆さんのようにインドの警察の職員であるならば、民主主義国家として最も人口の多いこの国の体制を安全に維持することが職務の一部です。様々な国を隣国に持つインドが、これほど安定して平和を保ち続けていることは特筆に値すると思います。ですから銃を持つこともやむを得ない時があるでしょう。しかしその目的はあくまで防衛の為であるべきです」

「この国では3千年以上に渡ってアヒンサー(不殺生・非暴力)の思想が定着していますが、アヒンサーとは本来、慈悲と結びついている理念です。しかし実際には、暴力を用いて誰かに襲いかかろうとする時に、それを抑制する手段としてアヒンサーが想い起こされているのが現状です。アヒンサーの理念を生かすためには、カルーナ、つまり慈悲を動機として持つことが必要です」

法王は、古代エジプト、中国、インダス文明のうちで、インダス文明は突出して多くの思想家と先進的な考えを持つ沢山の哲学学派を生み出したことに言及された。法王は、ナーガールジュナ(龍樹)、アーリヤデーヴァ(提婆)、チャンドラキールティ(月称)のような導師が説かれた教えは、今日にも通じる非常に有効的な考え方であると述べられた。そして、30年以上続いている科学者との対話を通して、科学者たちが古代インドの思想に大変関心を持つようになって来ていることを語られた。


サルダール・ヴァッラブバーイー・パテール国立警察学校で、ダライ・ラマ法王のお話に傾聴する訓練生たち。2017年2月11日、インド、テランガーナ州 ハイデラバード(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)
聴衆からの質問に対して法王は、儀軌を行なうことに頼るだけではなく、勉強することが大事であると繰り返された。現代社会においては、人間性を高めることよりもお金を増やすことが重要と考えられており、世俗の倫理や普遍的価値観を普通教育のカリキュラムに取り入れるための新たな取り組みが必要であると示唆された。また法王は、訓練中の警察官にとって何が必要とされるのかについて言及され、優しさ、誠実さ、正直であることが大切であるとアドバイスされた。そして次のように述べられた。「世界には警察官が怖れられている国もありますが、インドの警察官は民主主義を守る役割を担っています。ですから皆さんが実直な態度で臨まれるなら、皆さんの仕事は嘘いつわりのないものになり、配下にいる人たちはあなたを信頼するようになるでしょう。しかし、あなたの発言と行動が食い違っていれば、そこには信頼も友情も生まれることはありません。ですから警察官にとって、正直で誠実で嘘いつわりのないことが不可欠な要素です」

そして法王は次の言葉で講演を締め括られた。「ここにお招きいただき、私の考えを皆さんと分かち合えたことをうれしく思います。1959年にインドに亡命して以来、インドの警察が誠実に細心の警護をしてくださっていることに心から感謝したいと思います。どうもありがとうございます」

記念品の贈呈、写真撮影が行なわれた後、法王は宿泊先へと向かわれた。明日法王はハイテックス野外アリーナで一般講演会を行なわれる。
 

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